ベスト読者サービス:巻頭言

巻頭言

昇任試験受験生必読!!

月刊誌ベストの巻頭言は、一般的な雑誌の巻頭言とは異なります。

日本公法代表取締役社長であり、元中国管区警察局長、元警察庁教養課長、元警察大学校教官教養部専門講師と歴任されてきた大貫啓行がその経験を生かして「昇任試験」にフォーカスを当てたコラムであり、意外に知られていない昇任試験の真髄について語ります。また、読者の皆様のアンケートにも誌面上にて出来る限り回答しますので、疑問・質問のある方は是非ご利用ください。毎月、月初めにホームページ上に掲載いたしますので、試験直前にまとめて読む際にご参照ください。

2017/9/1 ベスト9月号 巻頭言

時代の世相を最終的に映し
だす治安
〜現実主義と理想主義など多角的な発想への理解~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

意見対立を生む発想法は、時代背景を受けて揺れる。目の前の利益を
追い求める現実主義と将来のあるべき姿を追い求める理想主義は、典型
的な意見対立の例だ。現実主義と理想主義の違いを簡単に言えば、現実
と未来の、どちらにより目を向けるのかということの違いだ。経済的に
満足度が高ければ、他人のことをおもんばかるゆとりが生じる。理想主
義はそのようなゆとりの時代には影響力を増す。逆に、不景気の時代に
は、現実主義のトゲトゲした感情が支配することになる。
現在、世界各国は不景気に呻しん吟ぎんしている。どの国も一国では生きてい
けないほど、世界経済が一体化しているから、どこかだけ不況から免れ
るというわけにはいかないのだ。こういう状況を「国際化が進んでい
る」という。現在は、文字どおり国際化した社会ということ。その結果、
いずれの政府も四苦八苦状態。
アメリカでのトランプ大統領、イギリスのEU 離脱は、国民の不満を
解決できない既成政治へしびれを切らした国民の怒りの結果だった。失
業や昇給減速などの経済困難が生ずると、えてして困難の原因を外部に
求め、権力を握る政治家への批判的な主張が受け入れられる素地が拡大
する。批判は絶えず激しい感情的な言葉で展開され、国民はその激しい
主張に賭ける気持ちになる。「アメリカ第一主義」「EU からの解放」「イ
ギリスの主権回復」などという激しい主張を掲げた指導者の出現となる。
理想主義が支持されるには、前提として、ゆとりが欠かせない。恒産
あっての恒心ということ。どこでも不況時の政権運営は難しい。経済困
難な時代は、ギスギスした世相になる。一般的には犯罪も増える。政治
は、自国優先の保護主義色が強まる。自国優先の民族主義政党が支持を
増しがちだ。
現在はまさに、そうした困難で危険な時代なのだ。頭では理解してい
るのだが、自分の利益を叫ばざるを得ない心境なのだ。その中、フラン
ス大統領選でEU 支持のマクロン大統領が当選したのは、フランス人の
見識だった。果たして世界の基調が変われるのかどうか。経済回復が前
提と言えよう。
治安は、社会の風潮の中で様々な影響を受ける。各国が自国優先のナ
ショナリズム・実利主義に走ることになれば、当然、治安の基調は大き
く揺さぶられる。テロ・ゲリラはそうした中での典型的な鬼子。民族主
義は差別感情を生む。ヘイトスピーチなどはその顕著な現れといえる。
窃盗などの発生傾向も社会の経済状況と密接に絡んでいる。
警察官には、こうした時代背景に関しての基本的な理解が不可欠とな
る。為替動向も景気の好不況も、全て治安にとっての重要な基調となる
ものだ。関心を持って、テレビやネットのニュースを見聞きしなければ
ならない。特に、新聞はまとまった解説を掲載しているので、利用しな
い手はない。
世界情勢についての認識が、治安にとって欠かせない要素だという感
覚が肝要だ。時代背景が治安の基盤なのだという認識が重要なのだ。治
安とは人間の営みの集大成であり、基盤でもあるということだ。
警察官は担う責任の重さを自覚し、責任の重さを誇りにして、踏ん張っ
ていただきたい。

2017/8/1 ベスト8月号 巻頭言

挑んだから得られる悦び
〜自分を信じること~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

頑張らないと得られないものがある。

楽々、手に入るのでは、手にしたところで大した感動はない。何事でも様々な苦労を重ねて到達したからこそ、その達成感が大きい。本誌読者の皆さんにとっての狙いは、昇任試験での合格だ。合格は、誰にとっても生易しいものではない。

今回は、様々な挑戦で困難を乗り越えるに当たっての心構えを考察してみよう。

結論を先に言えば、昇任試験準備への解釈を変えること。言い換えれば、大所高所から自分を見て、プラス思考で臨むことだ。目の前の受験準備という困難を見るのではなく、合格した自分を心に思い描くのだ。合格を喜んでくれている家族の姿をも。何よりも昇任したら何をしたいのかを考えることだ。そのための準備において多少の苦労なんか、どうということもないと考えることだ。

中曽根元総理は初めて国会議員になった時から、総理になったらやりたいことをノートに書いていたそうだ。何十年もの歳月を経、様々な経験を積み重ねることで、ノートは増え、内容も充実し、実際総理になってからの政策はそれらの準備をしてきたものの実現だったと本人から聞いた。中曽根元総理は今の警察庁に当たる内務省の先輩。終戦後の混乱を目にし、国会議員への転身を図った。最初はリヤカーを引いての選挙戦だった。並みの政治家とは、最初から志が違う。

皆さんも、目指すものが手に入った時、何をしたいのか・・・と、しっかり考えるのがいい。その実現のためだから頑張れる。合格する。したいことを実現するために・・・。そのためには、今の努力は当然ではないか・・・と。冷静に考えれば、全ての達成感は挑戦することが前提。困難や苦労が大きい程、達成感も大きくなる。

また、全て考え方次第でどうにでもなるのが不思議なところ。重い荷物も、鍛錬の負荷に変わるというもの。両手の買い物袋も格好のバーベルに変身だ。苦痛と喜びは受け止め方(解釈)次第なことになる。トレーニングとしては、重い袋も軽く感じるというものだ。坂道も、さあ~チャンス。階段も二段飛び。休日、終日ゴロゴロして、いい休息と受け取るか、損したと腐るのかも、受け止め方(解釈)の問題だ。

昇任試験も半ば習慣化し、義務のように受けるのと、ヤルぞ!と前向きにチャレンジするのとでは、雲泥の差がある。最終段階が肝要だ。例えば、直前2週間など、徹底した集中で臨むことだ。やる以上は絶対合格するという強い気持ちが欠かせない。強い意志で臨んでこそ手にする果実。合格した姿を抱いて試験に臨むことだ。

本誌読者の皆さんに勝る準備をした人はいない。自信を持ってほしい。合格を信じた者が合格することになるのだから。

2017/7/1 ベスト7月号 巻頭言

失って改めて知る健康の大切さ
~一日一生~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

私事だが、今年は、年初からいきなり大病を患い、2 か月ほどの長期入院を余儀なくされた。そうでなくとも70 代半ばの私にとっては、友人知人の訃報に接することも次第に多くなり、人の命に限りの在ることが、身近な感覚になっている。
月並みな感想だが健康の大切さに改めて気づかされた。何とか体力回復に努め、与えられた人生を充実させていきたい。今回はどうにか退院でき次第に日常生活も再開しつつある。第一線で勤務する後輩の皆さんも参考にしてもらえればと、長期入院を体験しての最近の心境の一端を
披歴してみたい。

第一、これからの人生、一日一生という気持ちで生きたい。
いきなり「人生」といった大きく抽象的な言葉が出てきて、「一日一生」と言われても、どういうものか、なかなか実感しにくいだろう。それは、ほとんどの人が、いつものように、朝がきて、職場に向かい、仕事をし、夕方、家に帰り、夜になれば寝る。・・・といった日常の繰り返し、時に、飲み会などがあり、旅行などの非日常的なイベントもある。しかし、考えてみれば、それらの積み重ねが、その人の人生となる。
要するに、一日一日の積み重ねがそれぞれの人生となる。一日一日の充実なしに、人生云々はないということ。だから、今日という一日をいかに充実させて生きるのかということにもっと真剣にならなければならないということ。まして、いつまで生きられるかはわかったものではない。となれば、今日という一日こそが確実なものであり、その一日を充実させ、大切に生きることなしに、我が一生などという抽象的なものに期待したり、逃げ込んだりしてはいられない。今日という一日が人生最後の一日となっても悔いのないように、今日一日をしっかり生ききりたいも
の・・・という思いが強くなった。

第二、2倍速という物差し。
具体的には、例えば、今日という一日を2倍に充実させたいと思っている。
今日という一日を充実させるぞ・・・と、意識して取り組むのと、漫然と過ごすのとでは、全然違った結果になるだろう。一日一日の積み重ねが一生なのだから、結果としての一生も大きな違いが出ることは必至。そこで、今日という一日、例えば、2倍充実させるぞ・・・などと、意識して取り組むようにしたい。
人の寿命は勝手に伸ばすことはできない。しかし、その生き方次第で2倍に充実させることなら可能だろう。毎日を2倍に充実させさせれば、結果として2倍の人生となるというもの。例えば、50歳から、頭の中で誕生日を一年に二回にしたらどうだろう。半年ごとに1歳増えることになる。75歳で100 歳となる勘定だ。半年ごとに人生計画を建てる。夢の100歳も手にすることが可能になるだろう。2倍速の意識で頑張って過ごせば、それはそれで面白い人生になるだろう。特に、退職を控えている人のこれからの人生設計を建てる際に、こうした2倍速という発想は面白いのではないだろうか。
ちなみに、私もその物差しの年齢ではほぼ100 歳。ずいぶん長生きしたもんだと感じられる。そして、だから一日一日を最後となっても悔いのないように充実させていきたいものと思っている次第。不思議なもので、気持ちの中にゆとりみたいなものまで生じている部分がある。年
齢は気持ちの部分が大きいようだ。

第三、感謝の気持ち。
今日を健康で迎えられたことに感謝の気持ちを持ちたいものだ。一日一日を感謝の気持ちで迎えることで、相手の気持ちを思いやることができるようになる。相手の気持ちを思いやることができれば、気持ちにゆとりもできる。感謝の気持ちを持つことで、人間関係がよくなる。まわりまわって充実した人生になるだろう。

病院には、けがや病気で健康を損ねた人であふれている。病院で知り合った多くの人が、思いもしなかった・・・という思いを語っていた。健康は当然のように思われがちだが、そうではない。健康で一日を迎えるということは、それ自体が大変恵まれたことということを忘れてはならない。
健康な時には、自分の体への感謝の気持ちを忘れないで、一層、健康維持に努めてください。皆さんが思っているほどスーパーマンではないのだから。

2017/6/1 ベスト6月号 巻頭言

仕事を通じて専門分野を育てる心掛け
〜毎日の仕事への向かい方~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

毎日の仕事へ向かい合い際のちょっとした心掛け次第で、長い人生を振り返れば大きく差異ができる。そんな思いをもとに、その「ちょっとした心掛け」について考察してみたい。

多くの人にとって現在の仕事は、希望したというよりは、人事によって、割り振られたもの……という思いが大多数ではないだろうか。必ずしもその仕事に満足している人ばかりとも限らない。本当はほかの仕事につきたかったという人も少なからずいるだろう。
私の経験から、結論を先に言えば、それでも、現在の仕事に全力投球していくことが大切だということだ。不満タラタラ、あるいは手抜き状態で毎日を送ることは実にもったいない。人生はそんな無駄を許容するほど長くもない。そうすれば、「ちょっとした心掛け」次第で大きな財産になっていくのではないか。その心掛けについての考察だ。日常の仕事に追われる中で、どうしたら自分の価値を高める得意分野や専門といえる得意技(能力)を育てることができるのだろうか。
全力投球してみれば、担当する仕事に関して、興味を感じる分野が発見できるのではないか。あるいは、従前から興味を覚えることのできるテーマ(分野)と関連のあることはないだろうか。いずれにしろ心躍る興味を大切にしながら、毎日の仕事に全力で臨むことだ。人生ではこの心の躍動感が大切だ。
仕事が変わっても自分の興味のあることは、大切にし続けることが大切だ。不本意な転勤だと否定的に受け止めるのではいけない。新たな仕事に全力投球することだ。そこで新たな興味のあることが見つかることもある。大事なことは、それまでの興味のあることを新たな仕事に移ってからも追求し続けることだ。少し角度を変えたりしてみれば、案外、関連のあることが見つかるのではないだろうか。
人生無駄なことはない。どんなことでも全力投球しさえすれば、いろいろなことがつながりを持ってくるものだ。大切なことは自分が興味惹かれるテーマを追求し続けることだ。その継続期間が長くなればなるほど、それ自体が自分の知識経験を育ててくれる。そうした自分にとって興味の惹かれるテーマを時間かけて育てていくことが大切なのだ。

私にとっては、興味の惹かれたテーマの1つは「中国」だった。大学で第二外国語としてたまたま縁のできた「中国語」。その縁で、台湾で1年間留学生活を経験し、外事警察で中国を担当するポストを得た。その後は様々なポストに就いたが、どこにいても中国への関心は持ち続けた。例えば、長崎県警本部長時代は、関係職員と長崎華僑の歴史をまとめるなど、長崎の文化と中国のつながりなどを学んだ。次第にどのポストにあっても、中国へのつながりを勉強してみるようになった。こうして、中国への関心は私の生涯を通じたテーマとなっていった。例えば、ソ連(ロシア)を担当していても、個人的興味から中国に関心があった。しかし、それがソ連を多面的に理解する上で欠かせない視点でもあったのは幸いだった。振り返ってみれば、台北、北京に外交官などとして駐在、その後も中国出張を重ねるなど、中国研究の多くの人との知遇・関係ができた。大学教授に転職してから、中国に関する研究・出版もいくつか手掛けた。
ほかにもいくつかの興味を惹かれたテーマがある。その1つは、「政治・外交」。特に、我が国と中国、ソ連(ロシア)、朝鮮半島との関係に関心が強かった。その延長線として「国際関係」には終始目が離せないようになった。ワシントンに半年ほど駐在し米国の情報分野各機関との交流を持ったことは私の宝となった。また、防衛庁(当時)で調査第一課長(英語の職名はdirector,military intelligence dev.“軍情報部長”)を経験したことで、これら情報機関関係者との関係が深まった。
警察時代に外事警察各部署に長く勤務させてもらったほか、外交官などとして北京、台北、ワシントンを踏み、田中角栄総理の警護や警察庁国際部長としてサミット公式随員やICPO 等国連関連会議へ日本政府代表として出席できたのも併せて、国際関係を研究し発言する際の何らかの重みになった。
大学に転じてから、国際関係での研究・出版をする際に、外事警察、内閣情報調査室、防衛庁、外務省(中国課)などの経験の重さに改めて気付かされた。

その時は気付かないのだが、過ぎてみれば、全て関連のある貴重な経験だったことに気付かされる。それらを結び付けているのは、自分の興味であることにも。それも全て、全力投球することが前提だ。そのうえで、自分の興味あるテーマを大切に育て上げていくことだ。私にとって、中国も国際関係論も、たまたま人事の積み重ねの中で経験させてもらったことを積み重ねた結果だった。皆さんにとって今従事している目の前の仕事の中から、宝物を発見・出会っていってほしい。「ちょっとした心掛け」がそのキーになると信じる。

2017/5/1 ベスト5月号 巻頭言

階級の在り方について
〜待遇面から警察改革を考える~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

警察には様々な分野での改革が求められている。紙幅の関係で端的に階級問題と給与・待遇に関して考え方を述べてみたい。

まず階級から取り上げよう。昨今、階級に絡む問題点が目立つ。よく耳にするのは、昇任試験を受けるメリットがない、という声だ。士気を鼓舞しない昇任制度は組織にとっては有害だ。少なくとも役立ってはいない。当然改革すべきだ。
階級は集団での規律を保ち効率を上げるために存在している。OJTや自己研さんによって、より上級の職務に必要な能力を身に付けてもらい、それを確認するために昇任試験を実施している。さらに、昇任時に研修を実施するなどして、組織の管理能力などを身に付けさせようとしている。
全員が昇任試験を受けるべく不断に自己研さんに励み、昇任試験に合格した者が、喜びを覚え、張り切って昇任時研修を受け、上級の職務がよりよく務まるようになる。こうしたサイクルが前向きに回ることで組織の士気向上となるのが理想だ。残念なことに、現在の警察における昇任のサイクルは理想から見れば問題が多いようだ。だから、昇任試験のインセンティブが上がらない。

最大の原因は、上級階級への昇任の魅力が足りないことだ。早い話、上級階級に昇任すれば目に見えて待遇がよくなるような制度でなければならない。現在でも多少は昇給するが、昇任に伴っての昇給をもっとはっきりと示すようにすべきだ。昇任するメリットがはっきりと分からなけ
ればならないということ。
基本給を抜本的に変える検討をするよう提案したい。年功序列色の強い制度から職能給色の強いものへの変更だ。巡査、巡査部長、警部補、警部、警視という階級に基本給が連動するものに組み替えるべきだ。しかも目に見える形での昇給にする(例えば5万円の昇給)。かつ、同一階級での昇給は一定の期間だけ(例えば10 年間)とし、その後は昇給停止とする。こうして昇任するインセンティブを分かりやすくするのだ。
基本給に加えて各種職務給を設ける。職務給のイメージは刑事など専務手当。階級で拾いきれない専門分野の士気向上を目指している。それ相当の額を工夫する。基本給と職務給を合わせたうえで、上級階級によるメリットがあるような設計でなければならない。
さらに管理職にはそれぞれの職務に伴う経費を設けるべきだ。現行の管理職手当を基に再検討して、実質的に管理職にある者の持ち出しをなくすべきだ。警察学校の教官は学生との懇親会費などについて、一定の範囲で公費負担にする等。
署長などの交際費については実態に合わせた額にする方向で再検討したい。本部長などが警察署に置かれた捜査本部へ激励に行くに際して、警察の実態から見て、まったくの手ぶらというわけにはいかないだろう。必要なものはちゃんと予算要求すべきだ。

現役の皆さんには、現代の実情に沿った様々な意見があるだろう。それらを吸収して士気の上がる昇任制度や給与制度となるようにタブーをなくした議論をしてもらいたい。

もちろん、あくまで試験である以上、相対的に上位に立った者が合格し、上位に立つかどうかは学習努力に比例する。人間として生きていくうえで、学習が不要になる場面は一切ない。他に言い訳を求めて学習を怠ることのないように。弊社もスタッフ一丸となって、読者の皆さんの学習へのモチベーションが少しでも上がるよう、試行錯誤を繰り返していきたい。

2017/4/1 ベスト4月号 巻頭言

合格の報告電話をかけよう
〜知らせを待っている多くの人の存在を忘れるな~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

今年も喜びに弾んだ電話を受けた。大学での教え子で警視庁警察官からのうれしい知らせだ。教壇に立った者にとっては至福の知らせだ。老教授にとって最大の喜びと言っていい知らせなのだ。

集団をなして暮らす人間は、一人で生きているのではない。怪しい屁理屈気味の強がりよりも、素直に集団で暮らす喜びを受け止めることだ。両親兄弟はもちろん、学校の教師など、あなたからの知らせに至福の喜びを抱く人は、あなたが感じるより多くいる。あなたがお世話になった、そうした多くの人々の存在を決して忘れてはならない。
長い人生を送るうえで、その存在を意識できることが大切だ。あなたの合格の知らせに至福のひと時を抱いてくれる存在。あなたの人生にとってそうした存在がいかに大切かを忘れてはならない。そうしたデリカシーに満ちた心が人生を豊かにしてくれるものと思う。「面白きこともなき世を面白く織りなすものは心なりけり」(明治維新の志士・高杉晋作辞世の句といわれる。)。
繰り返される変哲もない日常生活の中で、ついついこうしたことを忘れがちだ。病気になったり大きな試練に出会ったりした時などに、各自にとって本当に大切な人の存在を思い出されるものなのだろうか。

今年、合格できなかった人にとっては、来年の合格・捲土重来を期した早めの挑戦のスタートが肝要だ。その時、あなたからの合格の知らせを心待ちにしている多くの人の存在に思いを馳せることだ。来年こそ合格の報告をするぞと……。
確かに、昇任試験合格自体は、何も究極の目標ではないかもしれない。しかし、そんな逃げの口実探しよりも、嬉しい知らせを待ってくれている人々への感謝の気持ちを忘れないことだ。素直な感覚を大切にしようではないか。
また、心の中で、昇任しても責任が重くなるだけでさしていいこともない……などといったささやきも聞こえてくるだろう。それらは弱い心そのもののなせるところだ。勉強するといった努力から逃れようとの悪魔のささやきと言い換えてもいい。悪魔のささやきは警察の職場の処々に聞こえるのも現実だろう。ちょっと探せば、そうした声はどこにでも存在する。怠惰な心は、実は、自分の心の中にも巣食っている。その悪魔のささやきになびこうという心の中の弱さに負けてはならない。

あなたからの知らせを待っている多くの人々の存在は、実はあなたにとっての宝なのだ。その真理を思い出すことが大切だ。合格した人はさらなる大きな目標に向かってほしい。来年を期す人にとっては、うれしい知らせを待っている老教授の存在も忘れないで欲しい。人生はそうし
た思いを励みに共鳴しあって積み重ねていくものではないだろうか。一人で生きているのではない……あなたからの知らせを待っている人の存在を忘れないことだ。
ここに内容を入力してください。

2017/3/1 ベスト3月号 巻頭言

退職後の生きがいとしての生活設計
〜第二のステージへの準備は早めに~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

今回は閑話休題。

気が付けば、私も73歳、ボケを実感することも増えている。名前が浮かばない。会合の約束を忘れる。帽子や携帯電話を忘れる。可能な予防手段として、例えば、手帳へのメモをこまめにとることなどを心掛けている次第。年を取ることは自然なこととて、それもいいかなと達観してはいるのだが、趣味の散策や山歩きなどで以前は平気だった行程がしんどくなった際などには、ちょっと寂しくないではないといったところ。

最近は、たまたま周囲を見渡してみて、自分が最年長であるといった機会も増えた。最年長であることは悪いことではない。誇らしくもある。第二の職場が二十歳前後の若者のあふれる大学だったので最年長である環境に早めに慣れたようだ。
昨今、警察時代の後輩や教え子が次々に退職するようになり、退職者の先輩としてアドバイスを求められる機会が増えた。ここでは、その際のアドバイスの一端を披露したい。

現役時代頑張っている人ほど、仕事ロス症状が激しくなりがちだ。上級幹部ほど、失う地位への未練が大きいことも。各自自分自身を観察、そういう前提で、対処方法を早めに準備する方がいい。
退職後は、「教養と教育」が最も重要だ。ここで言う教養とは、今(・)日やるべき用(・)事。教育とは今(・)日行く(・・)べきところがあること。人間の生活は多くはルーティーンで大体決まっている。朝起きて何も考えずに毎日同じようにスケジュールをこなしている。それが退職で突然、行くべき所も、
やるべきことも失うのが退職だ。やりたかったゴルフも3か月もすれば飽きる。仕事ロスで毎日ボ~っとしてしまう……という人が少なくない。
退職後、何らかの第二の職場に就くことがとりあえずの対策になる。どんな仕事でも積極的に引き受けた方がいい。社会とつながっていること自体が最も簡単な生活のリズム管理となる。無意識に生活リズムが保てることがいいのだ。

町内会デビューも現職のうちにやっておくべきだ。50歳になったら機会を見つけて町内会の活動に顔を出したらいい。警察官としての経験は町内会でも得難い特殊技能とみなされることは請け合いだ。日々の防犯や消防、地震対策などの仕事は町内会でも主要な活動となる。一目置かれる現役段階から町内会デビューしておくと実際退職して時間が取れるようになったら主要な幹部として活動することが期待されるというものだ。同窓会や県人会などもできるだけ早めに関係を持っておきたいものだ。それらは退職後の「教養・教育」の予定表を埋めてくれることになる。

若い時からやりたいと思っていたことがあったら、前広に現職のうちから再開した方がいい。絵を描くなどの趣味から園芸など。退職してからサァ今日からやるぞというよりも、現役時代から少しずつ始めておいた方がスムーズに入って行けるようだ。肩に力を入れすぎないで、助走
を開始することをお勧めする。

警察官としての経験は皆さんの考えているより世間の評価が高い。現職時代は様々なかかわりは時には厄介なことにもなりかねないとして、世間との付き合いを控える傾向も無きにしも非ず……だった。こうした習慣が退職後の交際の幅を狭くしがちになっている。退職後は過度に自
己規制せずに、求められればアドバイスするということでいいのだ。
各種防犯知識やトラブル防止に際しての判断力は経営者にとっては得難い特殊才能とも言えるのだ。自信を持って接していい。
特に暴力団関係の判断などは警察官の期待されるところだ。犯罪捜査がどのような手順で進むか。世間では警察官OB のアドバイスを待っている。私はNPO を作って多くの経営者のサロンを持っているが、多くの経営者が警察官OBの助言を求めていることを実感している。
退職後の生活設計の最善の対策は、見習うべき先輩をみつけることだ。そしてその先輩に倣うのだ。私の経験では警察官時代の上下関係を退職後に持ち込んでいる人は、概して、評判が悪い。肩書を外して、裸の人間関係を築いていくことだ。退職後の時間は長い。80 歳代でも元気に
活動する人があふれる時代なのだ。

さて、最後にコマーシャル。勉強が好きで、昇任試験問題に関心のある方は弊社に声をかけてもらいたい。後輩の勉強に寄り添うという第二のステージもあるということだ。

2017/2/1 ベスト2月号 巻頭言

新年のご挨拶
〜どういう年にするのかは自分次第~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

新たな年を、ご家族おそろいで、お元気にお迎えのことと思います。皆さんが新年の初めに本誌に向かい合われた初日の今日、この場をお借りして、遅まきながら、新年のご挨拶を申し上げます。

昨年も、熊本地震や相次いだ台風上陸に伴う北海道や岩手県などを中心とする災害対応や、伊勢志摩サミット警備、沖縄警備、参院選挙から都知事選挙などといった大きな事案が続き、阿蘇山の噴火や鳥取県の地震など今後が懸念される事案もありました。現職警察官の皆さんにとっ
て極めて忙しく、あわただしかったかと思います。あっという間に、1年が過ぎてしまったという感がしている人も少なくないのではないでしょうか。

70歳代の私にとっては、それこそ、もう1年が過ぎたのかと、驚いている次第なのです。齢とともに、だんだん時間の過ぎるのが早く感じられるというのは本当のようです。新年から、よほどしっかりしてかからないと、2017年という新たな年もあっという間に過ぎてしまう恐れがあります。受け身ではなりません。自分流にコントロールしていきたいものです。
時間に立ち向かうには、新たな目標を立て、計画的に立ち向かう必要があります。そういう意味で新たな年の初めは新たな決意にふさわしい節ということです。新年の計は元旦にあり……という言葉がありますが、こうした道理を教えるものなのでしょう。新たな年という真っ新なキャ
ンバスに向かって、どういう絵を描くか。一人ひとり、すべてが皆さん自身次第ということです。

だからと言って、どうしたら?と考えすぎるのもいかがでしょうか。私は、とにかく今日から始めることをお勧めします。ああだ、こうだと百の考えより、第一歩を踏み出すことがいい。その積み重ねが大切。「歩一歩高う(ホ・イッポ・タコウ)して、万景拓く(バンケイヒラ
ク)」高校生に進学したときに触れた言葉が耳の底にはっきりと残っています。山登りで、頑張って、一歩の歩みを踏み出すイメージ。一歩歩み、また一歩歩む。そうして気が付けば、眼下にすばらしい景色が開ける高みへと誘う。足元は、一歩の歩み。自分がすべきは今日一日の努力
ということ。その一歩が積み重なって目標が達成される。まず頑張るべきは、今日一日の勉強ということです。月一回、故郷の山野をリュックサックを背負って歩き回るクラブの誓いの言葉の一部が「歩一歩高うして万景拓く」だった。それから60 年の歳月があっという間に経過した
感があります。齢を重ねると、ついつい説教じみてくる。本欄での務めということと相まって、ご寛容願いたいと思います。

それにしても、警察における昇任試験はちょっとした心掛け次第なことが腑に落ちるように分かる。そうであるだけに、後輩の皆さんにはそれぞれの目標をかなえてもらいたい。目標を達成した人とできなかった人との満足度の違いも手に取るように分かる。だからこそ、ますます背
中に鞭打ってでも応援したくなる心境です。
本年も、本誌スタッフ挙げて、みなさんの頑張りに寄り添いたいと願っています。皆さんから期待されるよう一層精進していきたい。新たなこの一年が、皆さんとご家族にとって幸せに満ちたものであるよう願っています。

2017/1/1 ベスト1月号 巻頭言

手の中にある幸せへの感謝を
〜新年を迎えるに当たり~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

新年あけましておめでとうございます。

本誌を手にしている読者の皆さん、昨年一年間、本当にご苦労様でした。

昨年は、国際的には数々の激動が生じた年でした。BREXITという新語が飛び交って驚かせたイギリスでのEU離脱国民投票の結果が最大かと思っていたら、アメリカではトランプ新大統領の選出が事前の大方の予想と異なり、その衝撃に勝る規模のものでした。これらの衝撃的選択
結果の背景は、それぞれの国での、既得権益層・既成秩序に対する底辺労働者の怒りだとの解釈がなされました。あるいは中間層の崩壊といった指摘も聞かれました。
とにかく大きな時代の変わり目にあることを予感させられます。欧米の外交関係研究者には、国際情勢はこれから数十年にわたって、混乱と混迷が続くとの悲観論が多いようです。そこには、先進国での年金不安・格差拡大が、中近東・北アフリカ諸国での若者を中心とした失業者の爆発的増加が、背景にあると指摘されています。難民・不法移民の流出が止まらず、欧米での移民排斥感情が高まっています。
となると、各国で緊張が高まり、いずれにせよ、各国での安全安心の劣化が避けられない情勢なのです。こうした国際情勢の基調の下、我が国の治安も、ますます多くの課題に直面することを避けられないものと思います。

昨年は、皆さんの努力・奮闘で、サミットなどの重要警備も大過なくやり遂げられました。相次いだ台風の襲来や熊本地震や鳥取県での地震などの自然災害もあって、関係都道府県でのご苦労も多大なものがあったことと思います。
今日、とにかく、どうにか新年を迎えることができますのも、現役の皆さんのおかげと感謝しています。新年には「感謝」という言葉が一番ふさわしいものと思います。そこで、この感謝ということに少し注目してみたいのです。

世の中、あるいは生きているすべての個々人の周辺には様々なことが起きます。悲しいことや大変なことも避けられません。それらは、まさに「禍福常なし」です。それらに対処して生きていく、最大の心構えは、感謝ではないでしょうか。感謝こそ、すべてを包み込む鍵なのです。感謝する心は、あらゆる困難を乗り越え包み込み、心の“のどやか”さ……をもたらしてくれます。春のごとき、海のごときおおらかな気持ちにさせてくれます。
新年を迎えるに当たり、心の底から感謝したいものです。まずは、ご自身とご家族の皆さんが、今日という日を、健康で迎えられたことに感謝。安全と安心の為に昨年一年間、精一杯、働けたことに感謝。
そして本誌を手にして、新たな目標に向かって、前向きな気持ちで、今日を迎えられたことに感謝。
本誌関係者は、皆さんとの本誌を通じた出会いが持てたことに心から感謝いたします。皆さん、どうぞ良い新年をお迎えください。そして来年こそ皆さんの夢が正夢となりますことをお祈りいたしております。

2016/12/1 ベスト12月号 巻頭言

社会の向かっている方向
〜大局的とらえ方~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

今日の社会では、日常生活の中にいるだけで、実に様々な情報に取り巻かれて、何が何だかよく分からないままに周囲の常識なるものに支配されてしまっている。よほどしっかりと考えなくては、そうした常識なるものの中でおぼれてしまう。
昇任試験においても、法学・実務の知識をただ闇雲に頭に入れるのではなく、それがどのように外の世界と関連しているのか、そこまで理解していないと採点官には見透かされてしまうだろう。

テレビに映し出される映像は有無を言わせぬ力で視る者の判断を支配する。スマホは世の中のすべての情報を提供しているとの錯覚を抱かせる。あえて難しく考えなくても何の支障もない。情報はこれで十分だ、……といった錯覚にも陥りやすい。果たしてそうなのだろうか。
時には、腰を落ち着けて、自分の物差しで考えてみることなしには、何もかも流されてしまうだけなのだ。気を付けなければならないのは、この現代社会には、自分が考えたりして入り込むようなすきがない、という錯覚を与え続けられていることではないか?

ここで少し、自分で考える手始めを試みてみたい。
例えば、国際情勢の向かい処……といった大局的な論題で考察をしてみようではないか。なぜなら、大局的な趨勢(すうせい)であれば、目まぐるしい日常の動向や枝葉末節と見えるような事象とは異なり、冷静に落ち着いて考えやすい側面があるからだ。そのうえで日常の様々な動きを考えてみるという手法を身につけるという試みだ。
最初に、世界の人口の近未来の趨勢を取り上げて見よう。結論は、アジアは急速に老い、アフリカは相対的に若い人々に満ちた活動の中心になるということだ。現在は、中国が最も人口の多い国だが、もうあと20年もすればインドが中国を上回ることは確実だ。しかも、21世紀後半にはアフリカ大陸が世界人口の中心となる。その時、中国を含めアジアの国々は老人であふれかえり、おそらくは、活力を失っているだろう。
中国では、「未富先老」という言葉が流行している。ひたひたと迫る高齢社会を前に、欧米や日本のような豊かさを手に入れる前に老人のあふれる社会になるという意味で、急速に警戒感が高まっているのだ。

さらに、情報技術の発展の影響が持つ意味を考えてみよう。独裁的・強権的で、国家や支配者が情報を独占しコントロールしている国々では、急速に、その統制が効きにくくなるということだ。国民大衆に情報端末が普及し、国家や支配者による情報独占が崩れることは必至なのだ。
独裁制や強権制にとっては、情報革命はますます厄介な存在となる。一時的に、情報コントロールが強化されるような動きもあろうが、時代の趨勢は、そうした統制の限界を示している。独裁制の国々がやがて変化していかざるを得ないという時代の趨勢を踏まえた発想が欠かせないということだ。
我が国の周辺には中国、北朝鮮など、独裁制の国々が存在しているが、それらの国々での情報コントロールなどでの変革期が迫っていることに留意してかかるべきだ。

アジアにあっては発展の中心がインドを中心とした南アジアに移り、やがてアフリカに移っていく。世界は、今しばらく、中東、北アフリカを中心としたテロなどの混乱が続くけれども、その先に、アフリカを中心にした展開という視野を持ってかかるべきなのだ。そして、こうした大局的な思考は、国際情勢のみならず国内情勢を考えるうえでも、当然必須といえる。読者の皆さんも、是非、自分の物差しで思考をする癖をつけてみて欲しい。

2016/11/1 ベスト11月号 巻頭言

挑戦しなければ得られないものがある
〜挑戦して習得できる警察官としての“地力”~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

昇任試験の根底にあるものへの理解を。

自然界や人生には、挑戦してこそ手にできるということがあるが、実のところ、多くのものが挑戦することを前提にして手に入れることができるのだ。警察官は誰しもがなれるものではない。警察官を志し、採用試験に合格した者だけがその門をくぐることができる。採用試験に合格したからといって、その後の精進を怠っては警察官としての務めが果たせない。警察官も様々な挑戦を経てこそ、初めて一人前の警察官になり得るのだ。警察官であることはそれ自体が容易なことではない。

挑戦というからには、意を決することが前提だ。集団生活を送る人間社会では、その構成員である個々の人間は、人生のどこかの段階で選別される。多くの人が望むものは、誰かが手にすると同時に、誰かがそれを手にできないことを意味する。自然に差が生ずることになる。進学がそれであり、就職もまたしかりだ。スポーツでは、県大会レベルから全国大会レベル、オリンピックといった世界レベルでの、それぞれの勝者と敗者が生まれる。何のことはない、それが自然の摂理というもの。競争を罪悪視し、競争を避けることがよい……とする考え方には無理がある。運動会で全員が手をつないでゴールし、ゴールした全員が一番というような行為がもてはやされた。しかし、それでは進歩しないことが分かった。勝とうとチャレンジすることを否定しては高みにたどり着くことはできない。

警察官という仕事に精通するには厳しさが欠かせない。警察官を志したからには、一人前の警察官になるべく精進が求められる。かつ、警察官であり続けるにも精進が欠かせない。警察官としての仕事をするためには実力を身につけなければならない。この警察官としての実力とは、言い換えれば、警察官の執行力に関する「地力」を習得するということなのだ。警察官という仕事を完遂するのは生易しいことではない。真の意味で弱者を助け正義を実現するのが警察官の仕事だから当然であろう。そうした難しい任務を完遂すべく精進するからこそ、多くの人々の評価を受けることができる。

気力・体力の養成がすべての前提。警察官であるからには自らの気力・体力の維持向上が欠かせない。階段上りや通勤での一駅ウォーキングなどの生活の中の体力維持はぜひとも心掛けたい。肥満防止なども当然の要請だ。法執行官であるためには、目まぐるしく変わる法律に関する勉強が求められる。法律の解釈や現場での執行に関する各種実務能力の習得も求められる。その為には、常に勉強し続けることが欠かせない。昇任試験はその結果の確認ということなのだ。これらを当たり前のこととする職場の空気が大切だ。
特に幹部は率先して範を示すとともに、部下を挑戦させる指揮官でなくてはならない。とかくこうした風潮と真逆な空気が吹きがちな側面があることも現実だが、それをあるべき姿にもっていくのが幹部の底力として求められる。
警察官であることの地力とは、このように挑戦し続けることが前提になる。幹部昇任試験では、こうした本音を理解し、自ら率先して範を示す人であることを見極めようとしているのだ。

2016/10/1 ベスト10月号 巻頭言

総合的安全安心社会構築のために
〜ニースでのトラック暴走事件、秋葉原事件
再発防止に向けたソフトターゲット防衛~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

今年7月14日フランス革命記念日の夜、仏南部リゾート地ニースで、トラックが花火見物の人混みの中を2キロにもわたって暴走し多くの死傷者を生んだ。フランスは、折からテロ警戒の非常事態宣言下だったこともあり、新たなテロ手口を防ぐことの困難さとして世界中の注目を集めた。我が国にあっても、道路上の人という究極のソフトターゲットを狙ったテロ事件として深刻な受け止めが肝要だ。
形態から、我が国の秋葉原での暴走事件と重なる部分もある。その最大の重なる点は、いずれも警察として防止することが極めて難しいということだ。それでいて被害が大きい。残念ながら、模倣犯を生みやすい要素を持っているとみるしかない。そのほかの共通点を見てみよう。
いずれも社会とのつながりを欠いた容疑者の姿が注目される。近所付き合いのない目立たない存在。事件後に近所の人々は、驚き、せいぜい変わり者だったとしている。それだけでは警察的には注意人物として把握しにくい。しかも、そんな人物なら、どこの社会にも大勢いる……という現実なのだ。格差拡大の中、いずれも社会の底辺にいて、ひそかに不満を強めている人物像だ。警察として把握するには一番難しい対象といえる。「警察だけで安全安心をお任せください」とはいかないという現実を認識してかかる必要がある。

「治安はその背景に経済問題が横たわっている」ということは、どの国でも共通している。社会の変化が激しく、景気も悪い現在、世界中どこにもこうした犯人像の人物があふれている。こうした時代におけるテロ防止対策は、あらゆる人々の総合的な協力で安全安心社会を作っていくという原点に立ち返るしかない。警察は可能な限り情報を公開し、各界各層の人々との協力を図ることが一層重要になるゆえんだ。

道路の形態自体の工夫も求められよう。安全安心という目的実現を根本哲学とした発想の転換が求められる。例えば、ニースのようにトラックが歩道を暴走する危険性を想定して、歩道に自動車が侵入しにくいように歩道入口や途中随所に走行しにくくする大型の植木鉢などを設置するような対応が必要になる。これらは自治体担当部局の仕事になる。道路設置者にあっては、繁華街や住宅街の道路は、できるだけスピードの出やすい直線を避け、路面を凸凹にするなどして、スピードを抑えるような構造にするなど、設計当初から検討すべきではないか。

“利便性優先から安全安心優先に”
様々な分野で再検討すべきことは多そうだ。レストランなどでは、出口は複数ある方が逃げやすい。戦前の警察署は道路から数段上って入るという構造だった。現在はフラットになっているが……。その長短も考えてみていいかもしれない。

最後に……、テロとは恐怖心に訴える抵抗者の手法といえる。過剰反応はしないことだ。テロによる犠牲者も冷静に考えてみれば限定的だ。もちろん、犠牲者にとってそんな冷ややかな言いぶりは非情ではあるが……。例えば、交通事故の犠牲者数に比べれば、テロによる犠牲者は、はるかに少ない。冷静に、しかし、最大の知恵を結集して、安全安心社会を構築するために全員、全力投球を誓おうではないか。

2016/9/1 ベスト9月号 巻頭言

人間のやることに完璧はない
〜なのに完璧を期す難しさ~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

警察の仕事は人間にとって最も難しいことへの挑戦という側面を持っている。というのは、例えば、警備で守る人命は、「そこそこやればそれでいい」というわけにはいかないのだ。絶対に守り通さなければならない。しかし、残念ながら、人間のやることに絶対はない。絶対にないことを絶対に成し遂げることを目指す。警察の任務にはそうした神業的な困難さが伴っている。

<人間にはミスが避けられない>
完璧な人間は存在しない。格言やことわざを引くまでもないが……人間のミスとの必然的な関係は明らかだ。弘法も筆の誤り。猿も木から落ちる。だから愛すべきだとも思う。

<いかにしてミスを少なくするか。そして最終的にミスをなくすためにどうすべきか>
警察官としての心得は、いかにして、ミスを少なくするのか。ミスがあっても、どのように補うのか。……ということになる。営々として努力を積み重ねてきたのはこの一点だ。

警察の、様々な知恵は、人間はミスを犯す(ことを免れない)という前提に立ったうえでの、対応の在り方の追求ということなのだ。この前提に立って、具体的に、いくつかのポイントを検討してみよう。

<報告・連絡・相談の励行>
異なる人の目を通じて、誤りを見つけ、修正する知恵だ。人間には思い込みが生じがちだ。それを他人の目を通じて、気付き、修正する。「復唱の励行」も同じ。「報告の励行」も同じことだ。防犯で、相談することの奨励も同じ意味だ。思い込みに走りがちだから、他人に相談することで、被害を免れる。「オレオレ詐欺」は、私は大丈夫と思っている人が危ない。とにかく、人に相談することが思い込みを脱する近道だ。

<検討会>が大切なのは、複数の目が入ることで、思い込みから脱するきっかけになることだ。大げさな相談会ではなくても、職場で、話し合い、上司とのコミュニケーションが奨励されるのも、複数の目による思い込みの克服という意味がある。

<複数勤務>も、ミスを防止する知恵でもある。複数だからといって気を抜くことなく、1+1は3にもなるように心掛けたいものだ。

<めくら判>は、してはならない。判には意味がある。複数の目を経ることでミスをなくそうというのだ。めくら判で痛い目に合うことがままあることはだれしも知るところ。判の重みを知るべきだ。

<キリリとした立番>にも重要な意味がある。<見せる警備>にも通じる。例えば、潜在的なテロリストなどが「これはダメだ……」と犯行を思いとどまるほどに、威力を秘めた勤務をしなければ意味がない。

警察官の<挨拶や声かけ>にも重要な意味がある。警察官に声をかけられた時にどのような反応をするか観察することだ。「声なきに聴き、姿なきに見る」という心眼を磨いてほしい。

<プロとしての修養>
警察官は、治安を守る専門職だ。まさに安全安心のプロフェッショナルだ。誇りをもって自らの選んだ道に精進していただきたい。勤務は日々の修養だ。

2016/8/1 ベスト8月号 巻頭言

危機管理常識の発信役を期待
〜日々、他山の石の精神で~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

はじめに
情報関連技術の進歩で以前の常識が通用しなくなっている面が多々ある。従来の知恵に、新たな事例を加味して、現在に通用する危機管理能力をつけさせなければならない。
最近、新たな事件などを見聞きするたびに、子供たちの教育面での新たなリスクが感じられることが多い。そうした視点から感想を記してみたい。

1 個人情報は漏えいすることが前提
今日、個人情報は多かれ少なかれ漏えいすることはやむを得ないことのようだ。どんなに気を付けてもどこかで漏えいするということだ。攻撃された場合は第三者の知恵を借りて対処すること。軽々に抗議したり反論したりすることはかえって火に油を注ぐ結果になることが多い。私の経験では、無視することがお勧めだ。相手も飽きてくるから……。

2 守る努力が欠かせない
それでもガードを固めているのといないのとでは大違いだ。自ら進
んでネット上に発信した情報は拡散することが前提。特別な友人だけ
にそうしたつもりでも、後に、リベンジポルノのように悪意で拡散さ
れることがある。プライベート写真などは軽々にデジタル空間に上ら
せないことだ。写真を載せる場合は、拡散しても支障のない範囲でと
いうこと。子供や孫などの写真を安易にさらすことは極めて危ないこ
とだという意識が肝要だ。

3 個人情報のガードは”他山の石”ということ
事件・事故は教訓(宝)の山だということ。あらゆる事例を我が事と引き寄せて考える繰り返し。危機管理万般に通じる最大の心得は”他山の石” の精神だ。危機管理は難しい理論でもなく、万能の策などもない。ひたすら細かい教訓に学び続けること。
例えば、埼玉県朝霞市での少女誘拐監禁事件(16 年4月逮捕)からは、児童の所持品の氏名は安易に見えない場所に書くこと。自分だけ見えればいいのだ。そこから派生して……表札に家族全員の氏名を書くことはやめるべきだ。児童の1人での登下校は避けたい。やむを得ない場合は、できるだけ走ることだ。公衆電話のかけ方は教えておくべきだ……などとなる。

4 体力づくり
大声を出す。全力で逃げる。いずれも体力しだいということ。室内でゲームをやっているだけではいざという場合の対応はできない。週末は親子そろって野外に出ることなどが、危機対応能力の涵養(かんよう)につながる。

5 子供に考えさせる
危機対応での注意点は、覚えさせるのではなく、考えさせることだ。登下校ルートを親子で実地にチェックすること。そこで肝要なのは、ここでどういうことを注意したらいいの?と、問いかけることだ。知識ではなく知恵。生活の実際の場で子供に考えさせることだ。

6 性善説でなく性悪説
危機管理は性悪説が前提だ。子供に人間の良い面だけを見せたがる。しかし、それでは危機管理はできない。悪い人がいることが前提だ。赤頭巾ちゃんでもイソップでも悪い人の存在が前提。具体的な事例を教えて考えさせることが肝要だ。

終わりに ~ 新たな時代のたくましい危機管理教育を
警察の第一線の皆さんは新たな視点での生きた危機管理を考える先生だ。自信を持って皆さんの知見を発信していただきたい。

2016/7/1 ベスト7月号 巻頭言

合格「論文」の書き方
〜3割アップにするコツ~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

昇任試験の合否の関門「論文」の書き方では、意外に「見栄え」が大きな要素をなしている。ずばり言えば、“ 見てくれ” が大切なのだ。「え、見てくれですか!?」という声が聞こえてきそうだが……、実は、ここが肝要。答案の見てくれは、“ あなた自身” の見てくれということなのだから。

字を書いて、提出するということは、どういう意味を持っているのか。その本質は、その文章で書いた人、その人自身が評価されるということだ。まずは、このことをしっかり認識してかかることが肝要だ。だから、とにかく丁寧に読みやすさを意識して書くことが欠かせない。

簡潔明瞭な書き方を心掛けるべきだ。回りくどい、ごちゃごちゃした書き方は避ける(一文は50字程度が好ましい)。字が汚い人は、損だ。日ごろから、できるだけきれいな字を書くように練習すべきだ。しかし、短期間で字が上達することは無理だろうから、今回はとにかく丁寧に書くことだ。

論文の勉強の仕方は、ひな形をまねることが手っ取り早い。「形・型から入る」ことだ。中身より、「結論、事例検討、判例、……」「始めに、具体的方策、留意点、終わりに」などといった「型」を頭にインプットする。「1⑴⑵⑶ 2⑴⑵ 3⑴⑵……」などといった「型」をしっかり覚える。

直前の準備では、典型的な過去問を厳選して繰り返し解答を書くことをお勧めする。その際に「型」を意識して書く練習をすることだ。試験本番を意識して、そのつもりで書くことだ。論文試験は、とにかく書き切ること。途中でやめたものはだめだ。多少観点が違っていても、持論を書いて、少なくとも形だけは完成品にしなければならない。短すぎるもの、未完・余白のあるものは、試合放棄とみなされる。採点以前の門前払いにされるのが落ちだ。

法律論文では、根拠法律条文の「キーワード」を意識して書くこと。「絶対無制限に保障したものではない」「公共の福祉のため」「必要最小限」「令状主義の例外としての現行犯逮捕」「準現行犯」「緊急逮捕」……など。これらのキーワードの決まりきった「定義」を押さえて勉強しておく。普段の勉強に際しても、赤線を引くなど、何が「キーワード」なのかを意識してかかることがお勧めだ。

こうした絶対的に減点されない陣地を広げておくようにするのが有効な勉強の仕方といえる。試験準備というのは、心掛け次第で大きく効果が異なってくるものだ。弊社の問題集もそうしたコツ・ツボを身につけてもらうことを目指している。

実務、管理論文では、直近の通達、各種会議での挨拶、訓示、指示などの「キーワード」を、ちりばめることだ。「ちゃんと聞いていますよ」と、上司の指示に感度の良いことを、指示を踏まえて熱心に取り組む姿勢をアピールしたい。

なお、不祥事の再発防止策・決意などは、とにかく「部下から絶対に起こさせない」「部下の不祥事は自分の責任」といったようなポイントと、何ほどかの自分の経験、身近なエピソードなどを踏まえたオリジナルさを工夫できれば、好印象になる。

2016/6/1 ベスト6月号 巻頭言

地震列島に暮らす覚悟を
〜警察官は防災の担い手~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

熊本地震で改めて我が国が地震列島であることを思い知らされた。犠牲になられた方々やご遺族の皆さんには心からのお見舞いを申し上げたい。また、現地で救助活動などに従事した現役の皆さんには感謝申し上げたい。
今回の震災を受け、今後の防災や警察活動などの教訓とすべきことにつき触れておきたい。

1 我が国に絶対安心というところは存在しない。
我が国は文字どおり地震大国ということ。いつでも、どこでも突然襲いかかってくる震災への備えが欠かせない。改めて覚悟しておく必要を感じたはずである。

2 まずは我が家の備えを
家具の転倒防止をはじめ、3日分以上の備蓄など基本的な備えをしておくべきだ。
家族の連絡方法なども日ごろから話し合っておく必要がある。
先の東日本大震災のときの経験からも揺れに対して机の下などに身を移し、落下物が頭を直撃しないようにするといった対応がなかなか徹底しないものと感じた。テレビの地震報道映像を見ても記者諸氏はまず机の下などにもぐりこむといったことは見られない。家具などの転倒防止に押さえるなどの対応がほとんどではないか。とっさに頭など致命傷になる部位を守るなど、家族全員、直後の対応を確認しておくべきだ。子供でも自らの命は自らが守るしかないという事態があるということだ。子供への教育も重要だ。どんな小さな子供であっても……。

3 断層の連鎖・複合ずれ……専門家にも分からないことが多い。
今回の震災では複数の断層がずれるということで、先の活動に関して「分からない」とする専門家の発言が多く聞かれた印象だった。私は長崎県で雲仙普賢岳噴火災害を経験した。普賢岳に関して専門の地震学者は数多くいるのだが……これからどうなるのかということに関しては、頼りにならないというのが実感だった。
人間の力量は自然現象の前では微々たるもの。分からないことが多く存在するという謙虚さが肝要だ。専門家の意見は聞くべきだ。しかし、判断を専門家に任せては危険だ。自分と家族の安全は自分自身が守るという覚悟が欠かせない。

4 安全地帯という妄信
自分の住んでいる土地は安全だと思いたいのが人情だ。しかし、それが備えのすきを生じさせる。九州は地震が少ない土地だ……との思い込みがあった。熊本県で家屋倒壊などが多かったのも耐震化の遅れが原因のひとつだったろう。重い瓦ぶきの家屋が倒壊している映像を見て耐震化の遅れを確信した次第である。
人間の記憶は案外短時間で薄れ・消えるようだ。大震災の記憶もせいぜい1~2世代のもの、50年余りのものではないだろうか。災害伝承の大切さ。その大きな担い手は警察官ではないだろうか。

5 南海トラフ、首都直下型地震への備えを
過去の大震災の間隔などから見て、南海トラフや首都圏での大震災はいつ襲ってきても不思議ではないという。それぞれの立場で最善の備えを心掛けたいものだ。できることを積み重ねるということの重要性をお互い留意したい。

2016/5/1 ベスト5月号 巻頭言

安全安心という価値
〜現役の皆さんの“ 矜持” に期待~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

始めに
安全安心は人間が生存するための根底にかかわる価値だ。安全安心がなければ人間のすべての活動が成り立たない……というほど重みのある必須な要素ということだ。したがって、安全安心は国家が国民に保障しなければならない最大の義務といってよい。
この安全安心を専門的に担うのが警察組織。警察の存在意義の根底にある、この安全安心について改めて考えてみたい。

1 警察官だけでは担い切れない……求められる謙虚さ
警察官は、第一に、社会のあらゆる方面の人々との協働が大切だということを理解している必要がある。
安全安心は、広い意味で、経済面をも含む側面を持っている。社会のあらゆる仕事がすべて安全安心にかかわっているといえる。狭い意味の安全安心に限っても、警察官だけで担えるものではない。社会の全構成員の協力で初めて実現できるものだ。警察官には、常に、各方面の人々との協力で安全安心を実現していくということに留意することが求められる。警察官に求められる前提として、謙虚さという要請があることを肝に銘じてかかることが肝要だ。

2 信頼関係構築が基本中の基本
したがって、警察活動の基本中の基本として、関係する機関や人間との間に信頼関係を築くという配意が欠かせない。関係機関はもちろん、一見関係の薄いと思われるところであっても、ひいては国民全体に対しても、警察活動に関する情報を公開して、理解を求めることが重要だ。広報の重要性は強調しすぎることはない。国民全体からの信頼は広報から始まるからだ。
また、個々の警察官にとって日常的に接している方々への言葉遣いや態度に相手の立場を重んじる配意が欠かせない。警察官一人ひとりが接する人々こそ、まさに国民なのだから。その積み重ねが国民の警察に対する信頼感をはぐくむことになる。
こういう認識を全警察官に理解してもらうことが管理者の最大の任務ということだ。
昇任試験でもあらゆる場面でこの理解が問われることになる。上級幹部試験の最大のポイントだ。

3 不祥事の意味
不祥事は信頼を損ねる最大の問題だ。不祥事防止は警察官の“ いろはの「い」” と位置付けられる。特に、不祥事を隠すことはあってはならない。不祥事対応ではここが重要だ。膿(うみ)は出し切るという姿勢が求められる。権力機関であるからこそ、内輪の不祥事を隠すということは、国民の指弾を受けることになる。同僚の不祥事を知ったときは、即時に組織で対応することが求められる。即刻、上司に報告するということだ。かばい合いは、相手に対しても組織に対しても最大の裏切り行為だ。

4 国民と共に
警察活動はすべて国民(都民、県民、道民、府民、市民)と一緒にという精神が欠かせない。そのためには、適時適切な情報公開が肝要だ。住民と接するあらゆる機会を活用して、警察活動について理解を求める努力をしてもらいたい。地域住民の立場に立った情報提供が大切だ。究極的には住民に防犯活動などに参加してもらうことだ。情報公開は“ してやる” というサービスではなく、警察業務の根本にある必須事項なのだ。この点の認識が重要だ。

5 目の前の国民から見ると一人ひとりの警察官が警察権力ということ
繰り返しになるが、要するに、あなたが全警察を代表しているということだ。そうした心得が肝要だ。交番での立番、夜間の警ら……すべての勤務が、国民からみれば、あなたが警察代表ということになる。ささいなことも、決して、おろそかにはできないゆえんだ。

6 日本の宝は第一に治安の良いこと
これは内閣府の世論調査で長年裏付けられている日本人の評価だ。危険があふれる世界にあって、我が国を訪れる外国人の評価は極めて高い。その結果もあって、我が国への観光客が激増している。観光立国を支える根底の条件として安全安心社会であることが必要だ。また、警察官は地域住民の模範で有りたい。交番周辺の美化・清掃などを含め、あらゆる面での現役の皆さんの矜持ある勤務を期待している。

7 警察官の誇り
警察官は安全安心を担うという重要な任務に従事していることへの誇りを持ってもらいたい。その任務が困難であればあるほど、誇りは高まるというものだ。それにはやはり謙虚さが肝要だ。誇りが高いほど謙虚さはより増すというものだ。矜持の根底にあるのは謙虚さだ。

2016/4/1 ベスト4月号 巻頭言

何事も “ 真っ向勝負 ” という生き方
〜あなただけの不思議な人生の道~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

日々の仕事に関して、だれにだって、文句の1つや2つはあるものだ。その文句のある仕事に、日々、どのように対処するのかによって、人間の評価が大きく違ってくることになる。
不満を高じさせて、手抜きで対応する人が存外多いだろうか。のらりくらりと、ちゃらんぽらんにということだ。しかし、それでは、いかにももったいない。のらりくらりであっても、時は過ぎていくのだから。
たとえどんなに不満であっても、現在の仕事に対して全力で臨んでみたらどうなるか。どうしたって、その一定の期間はその仕事で費やされるのだから。全力投球してみれば、暗に相違して、存外、面白いかもしれない。
私のささやかな経験はそうした連続だった。私は、与えられた仕事に全力投球するようにしてきた。そうしないと、その時間がもったいないという思いだったからである。振り返ってみると、そうした経験から、一定の学びが得られたように思う。
人生にはあらかじめ完成されたシナリオはない。たとえ何がしかの、願いや思惑、漠然としたシナリオといったものがあったとしても、大抵は思いもよらないような違った道に迷い込んでしまうものだ。
しかし、各人の歩んだ人生には、振り返ってみれば、すべて因縁・因果でつむがれた一冊の本ができあがっている。なんとも不思議なものだ。予定された、あらかじめの道はないが、ちゃんとした道ができていくのだから。
人生は思った様にはいかないことが多い。思った通りにいかないから味があるということだ。現在のポストや立場、仕事などに不満を覚えるのはいいとして、それだからと言って、腐っていてはもったいない。その貴重な時間は戻っては来ないのだから。
気持ちを切り替えて全力投球することだ。だれかがちゃんと見ているものだ。たとえだれも見ていなくても、自分自身が納得できるということが大切だ。いま振り返ってみて、そのように思っている。
その時にはなかなかそうは思えないのも分かる。そういうものだ。そういう時には、ちょっと立ち止まって、振り返ってみるのも悪くない。休憩ということだ。
自分の課題があればそれを追求するのもいい。現在の仕事の中にも、そうした課題に関連したものがないだろうか。あったらそうした切り口・視点から全力投球できる。私の場合は、「中国」が課題だった。どの仕事にも、どの任地にも「中国」関連のものがあったのは幸いだった。各地に華僑の足跡を訪ね、中国関連の問題点などを掘り下げてみた。そこに思わぬ鉱脈を発見したこともしばしばだった。
警察という仕事は、生身の人間と切っても切れない関係にある。人間追求という課題なら警察官という職業に勝る実験場はないのではないか。幸い私は、人間探求という課題にも魅せられていた。
全力投球の真っ向勝負のできる課題を見つけることをお薦めしたい。そして、どんな仕事へも真っ向勝負を挑んで欲しい。人生は思ったより短い。今という時間を空費するのはもったいない。
過ぎてみればすべてがあなただけの物語になっていくということなのだから。今年度も、そして今日も、真っ向勝負で臨んで欲しい。

2016/3/1 ベスト3月号 巻頭言

情報漏えいとスマホの関係
〜強靭(きょうじん)な警察組織にするために~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

皮肉な話だが、情報技術の革命的な進歩で、かえって情報漏えいの防止が難しくなっている。
情報の漏えいとスマホ使用の制限の問題は厄介だ。情報は瞬時に拡散していく。その際の有力な要因はスマホだ。

警察官は様々な秘密を扱う。しかも、重要な情報ばかりで、その漏えいは多大の影響を及ぼす。警察情報の漏えいはなんとしても避けなければならない課題だ。警察官にとって情報漏えい防止は一丁目一番地といえる。さりとて、警察官のスマホ使用を制限してみても、しょせんは気休めかアリバイ作り程度にすぎないだろう。使用を制限しています、持ち込みを禁止しています……などは時代錯誤の発想かもしれない。

若い警察官にとって、スマホはなくてはならない存在になっている。体の一部といってもいい存在であり、その使用を制限してみても長い目で見れば何の効果もない無駄な抵抗の類にすぎないだろう。

そこで、根本的な問題として、情報保秘の意義を理解させることの重要性を再確認したい。どうして秘密を漏えいしてはらないのか?
組織運営は、組織の内と外とを厳密に分けるところから始まる。内は情報を共有し、外に対処する団結心が大切だ。集団は秘密を共有する集団とも言える。警察組織の強靭化は、情報漏えいをいかに防止するかにかかっているといっても過言ではない。
警察の扱っている情報は大部分が重要な個人情報に該当する。自分の取り扱ったことをだれかに話すとすれば、大部分は個人情報の漏えいになってしまう。自分の勤務予定も大部分が捜査情報の漏えいに当たる。こうした漏えいは警察への信頼を大きく損ねる。結果、警察の情報収集が難しくなる。信頼は警察活動の根底を支える問題だ。警察が情報漏えい防止に努めるのは、まさにその点を重要視しているからだ。そこを理解させるためには、幹部としての部下への総合的な教育力や感化力が要になる。幹部たるにふさわしい人物かどうか……などと抽象的に表現される点の要は、部下との関係をいかに築くかというところに帰着する。その人の人間そのものの力量が問われるということだ。

その点を理解して、どのように勉強しているか。精進しているか。そうした点を昇任試験担当・試験官は見ている。昇任試験では、こうした、警察としての情報漏えい防止の本質的な重要性をしっかりと押さえた記述や面接試験での受け答えができることが肝要だ。そこが合否の判定で実質的にキーポイントになるということだ。

2016/2/1 ベスト2月号 巻頭言

我が国を取り巻くテロ情勢
は深刻だ
〜日常勤務が勝負~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

新年明けましておめでとうございます。

その華やかな気分をいきなり覚ますような、厳しいテロ情勢にあることを同時に確認しなければならないのは残念だが事実なのだ。昨年11月のパリでの同時多発テロは、ソフトターゲットを標的にした新たなテロの時代の到来を確信させるに十分だった。

世界は長期間のテロとの戦いを覚悟しなければならない。警察官ばかりでなく全国民がその覚悟を問われる情勢にあるのだ。

昨年秋(9月初旬)からロシアがシリアに本格的な軍事介入を始めている。ウクライナ問題で欧米の経済制裁下にあるロシアは、イランとともに弱体のシリア・アサド政権の崩壊を阻止する覚悟を決めたということだ。欧米はもちろん、イランの影響力拡大を恐れるサウジや湾岸諸国
がシリアの反政府勢力を支援拡大させることは間違いない。結果、シリアは各勢力が入り乱れ、さらなる混乱状況が長期間にわたって続くことになる。難民はあふれ出し、欧州を中心に我が国を含む国際社会の安定を揺さぶり続けるようになることも避けられない。サハラ以南の混乱も
増大し、新たな難民が流出することになる。
多くの国際問題専門家が指摘するように、アメリカという世界の警察官役の国が衰退し、秩序の大元が揺らいでしまった。ロシアのウクライナ、クリミア半島への武力行使による国境変更を留め得ないことに象徴されている。

アジアでは、隣国中国が2010 年に我が国をGDP で追い抜き、2015年中には我が国の2倍超、17 年には3倍超にもなる。10 年ほどでアメリカをも追い抜き世界一の経済大国にならんとしている。中国は海洋権益の拡張を狙い、東シナ海や南シナ海で現状変更を狙っている。我が国
を取り巻く国際情勢は楽観できない危うさを秘めている。

我が国は今年のサミット、続く2020 年の東京オリンピックと、国際的に注目されるイベントが続く。国際的な注目を浴びたいテロリストにとって格好のターゲットとなることは言うまでもない。欧米をはじめ世界各国での、大掛かりなテロは最も警戒を要することになる。まさに世
界はテロとの戦いの時代ということだ。

警察活動にあっては、警察官一人ひとりに、こうした国際社会の大きなうねりの中で、しっかりと自らの任務を認識し着実な備えを怠らないことが求められる。
警察官にとって最も基本になる心得は「情報」に関する感度を上げることだ。川路大警視が言った「声なきに聞き、形なきに見る」という心得は、研ぎ澄ました注意力を傾けて“ 聞き” かつ“ 見る” ということだ。警察官は任務にあっては、そうした注意力を傾けて観察することが欠か
せない。それには、どういうことが重要な情報なのかという判断ができるよう、常日ごろの準備が重要になることは言うまでもない。

我が国は、幸い島国で出入国の管理が比較的容易だ。その利点を最大限に生かして、あらゆる手段で出入国に関連した情報収集の力量を磨くことが求められる。
広義の国境管理ということ。とりわけ、銃器の持込みをさせないことだ。日常の警察活動で、あらゆる手を使って、銃器の流通をさせないという取組が最大の心得だ。暴力団関連の銃器に関する情報への感度を高めることをはじめ、マニアックな銃器収集まで、蟻の一穴を許さない心
得が肝要だ。麻薬や薬物事犯は治安の根底に関わる問題という視点が肝要だ。これくらいはいいだろうという意識が大きな災いを招来することになる。
警察官はそうした心配症でいいのだと思う。日常の警ら活動、交番の前を通り過ぎる人々……こうしたことすべてが情報の対象になる。常在戦場の厳しい警戒を怠るまい。

正月早々から注文となってしまった。こうした情勢認識が今年の昇任試験のベースになるということだ。今年も後輩の警察官の皆さんに心からのエールを贈り続ける覚悟だ。

今年もよろしくお願いします。

2016/1/1 ベスト1月号 巻頭言

克服しなければならない“ 魔”
〜不祥事問題を考える~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

ここで言う魔は「魔が差す」の“魔”だ。
人間は煩悩の塊だから、誘惑に惑わされるという点に関して、まったく心配のない完全な人間など居ない。だれだって多少のズルをしているということだ。それはそれで人間の営みとして包容して良いだろう。実生活において、要は、これはやってはいけないことという一線の存在を認識し、それをしないという判断力を持っていることが肝要だということだ。誘惑はだれの心の中にも存在している。それに負けるかどうか、やってはいけないことをやらないというケジメをつけることが肝要だ。「魔が差す」とは、このケジメがつけられないということだ。

相変わらず、警察官の不祥事が続き、大きな注目を浴びている。警察官だからといって、聖人君子になれるわけはない……不祥事もあって不思議ではない。警察官への期待が大きい分だけ、警察官の不祥事は大きく報じられることになる。組織としては、不祥事を発生させないためのさらなる取組が求められることも必定。

昇任試験において、不祥事をなくすための対策、監督者としての心得などが繰り返し問われることも必定だ。昇任試験を受ける諸氏は、それに万全の答案を用意しないでおくことは許されない。

そこで、私なりの考察を披瀝し、後輩・現役の皆さんの参考に供したい。

不祥事を起こし警察官を辞めた人を、少なからず見てきた。どなたも惨めな人生を送っているという結論だ。再就職も容易ではない。それぞれの人の行く末を案じて、様々な形で再就職を見届けてきたが、皆、容易ではない。そればかりではなく、警察官としての不祥事が生涯付きま
とうことになる。社会的な信用が失われるということだ。
文字にするのは適切ではないかもしれないが、現実には、子や孫にまで様々な影響を与えることになる。就職、結婚に支障があった事例を多数見てきた。だれしも、口に出して、はっきりとは言わないが……。

言いたいことは、単なる「魔が差す」というレベルではない重大な意味を持つのが警察官の不祥事ということなのだ。「悪魔の所業」とでも言うレベルだ。多くの人が感じている以上に重大な破壊力・影響力を持っている。そうした人生の重大な汚点となる不祥事を部下同僚にさせて
はならない。そこに気付かせることが、不祥事をなくすことの原点だ。

やっかいなことに、先に触れたように人間は不完全な存在だ。心の中に大小の悪魔が存在しているということだ。そのうえに立って、いかに悪魔をコントロールするかの方法を考える。重要なポイントなので、繰り返すが……まずは、自分の弱さを自覚することだ。そのうえで、悪魔
をいかに制御するかを考えるということだ。

悪魔の声に寛容な友人を持たないこと。人間は寛容な甘いささやきには共鳴しがちなものだから、そんな人には近づかないことが大切だ。お互いに注意しあって悪魔をコントロールすることだ。自分の弱さを自覚し、環境改善に努めるのだ。

私は、現在72歳。省みれば、約50年も警察周辺で様々な経験をしてきた。不祥事にも様々な形で関わってきた。そこで思うのは、不祥事ほど割に合わないことはないということだ。そこに気付かない人が少なくないことを残念に思う。警察官という、人に奉仕する職を得ている後輩諸氏に、不祥事という“魔者”の甘言に惑わされることのないようにしてもらいたい。

不祥事撲滅対策は、一人ひとりの部下同僚への“思いやり”が最大の方法だと信じている。

2015/12/1 ベスト12月号 巻頭言

他人の欠点は話さない、黙って補うのが良い
〜心のデリカシーさを学ぼう~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

人間、心だけは、いつも、できるだけデリケートでいたいものだ。デリケートとは、相手の心を観察したうえで、自らの行動をとる(様に心掛ける)ということだ。

人間の癖はなくて七癖という。得手もあれば、不得手もある、というのが私たち人間とも言える。そういう意味では、だれにだって欠点がある……ということだ。
ところが、その他人の欠点を厳しく追及する人も居る。周囲の人にその欠点を暴露して、言葉や態度で攻撃をかけるといったような……。こうした行為は、場合によってはひどく相手を傷つけるばかりか、人間関係を修復不能なまでに悪化させてしまうことだってある。皆さんの周囲
にも似たようなことが、案外起きているのではないだろうか。

本人は何気なく、あるいは、大して悪気もないままにそうしたことをしてしまっていることがほとんどだろう。自分のしたことで相手がどんなに傷ついているのか、それに気付かないというのも、その人の一種の欠点といえるかもしれない。これらは、すべて、デリカシーの無さが原
因だ。
だれかの欠点に気付いたとしよう。例えば、仕事は丁寧だが遅いという同僚を手伝ってやった。本人とすればよほど感謝されていいとの認識になっているかもしれない。しかし、手伝いはしたものの、ついつい、残業で帰りが遅くなったことに腹を立てて、同僚の仕事の遅さに不平不
満を言ったとしたら、せっかくの好意が生かされることはありえないのではないか。反対に怒りを買うことになってしまうかもしれない。
相手を手伝うような場合には、手伝うことができたことに感謝するくらいの“ 心のゆとり ”を持ちたいものだ。手伝うことができたのは自らにとっては絶好の成長の糧を得たということなのだから。手伝えることに感謝して、喜んで手伝ったとしたら、それだけで大きな徳として蓄積
されるというものだ。

時と場合をわきまえるということも大切だ。飲酒が相手の健康に悪いからといって、宴席で飲酒を批判したのでは、その相手はもちろん居合わせた人までが皆不愉快な思いをすることになる。それは目の前で飲酒している人への思いやりに欠けるということになる。周囲の人々への配意というのは大切な思いやりだ。周囲の人々の感じ方を理解しようとの心構えが大切……ということ。
時には、遠慮して食べないでいることが、その場の皆が食べられないということになっていることもある。周囲の人々の思いを観察して自分の行動を律すべきだ。遠慮しないで箸を付けるほうがいいという場合もある。自分が着座しなくては周囲の人が座りにくいという場合もあるのだ。その場の状況を良く考えるということだ。
人間との関係では、できるだけ、相手の立場、特に相手の気持ちを慮(おもんばか)ること。そのデリカシーが人間関係の基本になる。「俺が、俺が」の「我」を、できるだけ抑えて、相手を立てる。そうした心掛けで人に接すれば人間関係はスムーズになるというものだ。
相手への観察を心掛けると、様々なことに気付く。その気付きの中でも、特に、小さなことを大切にしたい。大きなことは小さなことに気付くことの延長線上にあるものだから。何事も前兆が有る。前兆に気付くことがすべての始めとなる。

デリケートな心で観察し、小さなことに気付く。そこからすべてが始まる。

2015/11/1 ベスト11月号 巻頭言

根拠を考える習慣
〜やがて自信の源に~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

始めに
人間に個性があるように、各人の勉強の仕方も千差万別だ。自分に合った勉強方法であれば絶対的な優劣などはない。したがって、各自は自分に合った勉強の方法を見つけたら良いのだ。あなたに合った勉強方法とはどんなものだろうか。今回はそのヒントとして1つの方法を披露し
てみたい。寝転がって気軽に読んでもらいたい。実は私自身の日常的な勉強方法とでもいえるものの1つなのだが……。

1 警察官の執行には根拠があるという感覚
法治主義の我が国の根幹から派生する原理原則だ。皆さんの扱うどんな執務にもそれぞれ立派に根拠がある。まずは、そうした感覚を持つことが大切なのだ。
そして、その根拠に実際に当たってみることだ。フムフム……これが根拠かと……。

2 調べること(辞書をひくこと)はおもしろいという感覚
知らなかったことが分かるのだから。何でも……字でも、ことばの意味でも、花の名前でも……疑問に思ったことは調べる、辞書を引く、というようにしたいものだ。そして、辞書とは、携帯やネットであってもいい。
そうしている内に疑問が湧いたら、それをそのまま放って置くことが嫌になる。何かむずむずするという感覚。そうした感覚が生じたらシメたものだ。その感覚こそが貴重なのだ。
こうして調べることが癖になると、知らず知らずに博識になろうというもの。そうした習慣が大切な財産となる。

3 次々に疑問が湧くように
疑問は疑問を呼びがちだ。それを次々と追いかけていく。追いかけなくてはスッキリしない。そうした感覚になったらシメたものだ。そうなるまで是非頑張ってみてもらいたい。
何事も最初はちょっとした努力が要る。そこを乗り越えたら後は比較的容易なのだが……。

4 法律や規則、要綱などが可愛くなる
どれも堅苦しくとっつきにくいものだろう。しかし、根拠はそこにある。根拠にたどり着けた快感を思い切り味わってみてもらいたい。
堅苦しいものが、少しでも可愛くなったら……それもシメたものだ。根拠にたどり着いた時に思い切り快かい哉さいを叫んでみる感覚をお薦めしたい。

5 警務要鑑を座右に
警視庁警察官にあっては、警務要鑑に始まって、警務要鑑に終わる。とにかく根拠の宝庫なのだから。
見つけた根拠には、赤線を引いたら良い。引けば引くほど味が出る。そうなったらシメたものだ。

6 仲間作り
根拠を探す仲間を見つけられたら素晴らしい。同僚・先輩・上司……何とか捜し当てたいものだ。疑問が生じたら、とことん聞いてみたら良い。
当社はそうした皆さんの応援団となりたい。疑問が生じたら。壁にぶつかったら。遠慮せずに聞いてもらいたい。疑問を疑問で終わらせないことが大切なのだ。

7 習慣は作るもの
習慣とか癖といっても、最初から身に付いていたのではない。最初は何ほどかの努力が欠かせない。習慣にしてしまえば、後は大変な宝物にもなるというもの。
最初の努力が踏ん張り所ということ。

終わりに
どんな勉強方法が良いか。それはあなたに合った方法ということに尽きる。今回は何事も根拠をたどってみるという習慣を紹介してみた。学びも結局は習慣の問題ということ。当社は、常に、学ぶ皆さんの応援団でありたいと念じている。
皆さんの声を寄せてください。皆で効果のある学びをしようではありませんか。

2015/10/1 ベスト10月号 巻頭言

黄金の土地
〜先人の教えに学ぶ~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

金言、格言、昔話には人間の知恵が詰まっている。それらの内容を味わってみることは有意義だ。私の記憶に染みついた言葉で現職時代にしばしば引用したものを紹介してみたい。活用のコツを感じ取っていただきたい。

昔、インドのお百姓さんが、毎日朝から晩まで田畑で泥にまみれて働いていたが、どんなに頑張っても、生涯大した金持ちにはなれないと、嫌気がさした。持っていた土地をすべて売り払い、黄金の出る土地を探す旅に出た。長いことインド各地を尋ね歩いたが、黄金の出る土地は見
つからず、有り金も底を突いて、ボロボロになって故郷に帰ってきた。後になって、かつて自分が所有していた土地から黄金が出た。
青い鳥の話と同じこと。幸せは足下にあるのに気付かない……ということだ。どこにでもある訓話だ。どこにでもあるということは、人類共通の陥りやすい弱点ということだ。一獲千金を夢見て、コツコツ努力を積み重ねる日々の営みが馬鹿らしく思えてしまいがちなものなのだ。

相撲界で言われる「土俵には何でも埋まっている」という教えに通じるところがある。汗を流しどんどんけいこすることで強くなり昇進すれば、地位や名誉やお金も手にいれることができる……ということである。

「回れ回れぐるぐる回れ、己がくびきの導くままに」という言葉もある。石臼の周りを首のくびきに導かれてぐるぐる回っている牛。ぐるぐる回るのはいわば牛にとっての務め。だれしも自分の務めを負っている。その務めを黙々とこなしていく。その営みの大切さを表現している。ま
たその積み重ねの重さも。

気持ちの持ち方で全然違った様相を帯びるものだ。自分という素材をよくよく観察してみたい。一生の付き合いなのだから。そして、どうしたらその素材を最大に生かすことができるのか……と、考えるのだ。その際、先人の知恵の詰まった言葉は、足下を照らす頼もしいよりどころとなる。自分の癖をよくよく知り尽くして、上手に付き合おうではないか。そういう心境になるべきなのだ。多少の遊び心を伴ってだが……。

昇任試験だって、直前に“ちょこっと”やったら合格できるといったコツなど存在する訳はない。そんな魔法のようなすべはないのだ。しかし、そんな話は耳に入りやすいもの。また、楽をして果実だけを手にしたいという怠け心もないわけではない。そこで、幻影の入り込む素地となる。しかし、自分を客観視してみれば、コントロールも可能になるというもの。先人の知恵はそこでの援軍ということだ。

皆さんの宝の埋まっているのは足下の日々の職場ということ。警察の職務を全力でこなすことが最善である。昇任試験の勉強もその一環だ。毎日の仕事に全力で立ち向かう以上の近道はない。回れ回れぐるぐる回れ……自分の職務に全力投入だ。そこで突き当たったことの根拠を確認する。考える職務遂行ということだ。そうした積み重ねを大切にしている人にとっては輝く黄金の祝福を獲得する日は近い。

勉強していて疑問がわいたら、すかさず聞くことだ。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」。聞けば印象に残りやすい。当社のスタッフは皆さんからの質問の電話を心待ちに楽しみにしている。
是非、活用して欲しい。

2015/9/1 ベスト9月号 巻頭言

我が国の誇る最大の宝物は
国民と共に守るべきもの
〜治安の良さの価値~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

我が国が誇る最大の宝物は治安の良さだと確信している。しかし、多くの人は治安の良さは認識しつつも、余りに当然のことといった感じで、その価値を十分には自覚していない。外国旅行に出かけてみて初めて、我が国の治安の良さがいかに貴重なものであるかが分かる。まして、これからの国際情勢では、治安の良さの価値が一層貴重になることは間違いない。容易でない国際情勢が予想されるということだ。

中央アジアから北アフリカが最初の混乱の震源地になるだろう。そこでは、現在の国境は大きく変更されるような大動乱の可能性が高い。例えば、イラクのクルドは事実上の国家となる。それが、イランやトルコのクルドに大きな影響を及ぼすことも容易に想像される。シリアやサウジもいつまで現状を維持できるか疑問だ。北アフリカも、リビアをはじめ現在の国境が大きく塗り替えられる可能性が高い。まずは、リビアは3か国ぐらいに分かれる可能性が高い。国境が変更になるということは、その過程で高い確率で大混乱の内戦が発生するだろう。部族対立をはじめ、宗教宗派対立などが内戦の様相を残忍悲壮なものにするだろうことも容易に想像される。

中東、アフリカの大動乱は欧米各国の治安を悪化させることも避けられない。治安維持の役割が現在以上に大きな課題となる。欧米にとどまらない、隣国中国でも様々な要因から治安維持が大きな課題となるだろう。

我が国は、治安の良さをもって世界のうらやむ憧れの地になる可能性が高い。我が国を旅行し、我が国で働き、我が国に住みたいという人が増えるだろう。治安の良さを維持すれば、我が国の少子高齢化などと騒ぎ立てて、将来を過度に悲観的にとらえることはない。世界の人々の憧れる国は安泰ということだから。

その第一の前提条件は治安の良さということだ。
その条件を確実にするために、我が国の警察官は、精進しなければならない。警察官に課された期待は大きい。治安を守るのは警察官だが、その前提として、「国民と共に」ということが求められる。治安の維持は警察官だけで実現できるほど容易ではないからだ。国民の積極的な参
加があって初めて治安の良さを実現できるというものだ。国民との深い絆、相互理解が重要な前提となる。警察官は国民から理解を得るべくどういう心得で勤務すべきか。絶えず、そういう発想が肝要だ。
何事にも増して、国民の理解を得ること。国民へ協力を呼びかけること。どう表現しようと構わないが、国民を第一に考えるということだ。国民を念頭に置いた発想。これこそ警察官が最も大切にしなければならない心得だ。

警察官という職業の大切さは、我が国の最大の宝物を託されているということから始まる。現役の警察官、及び、警察官を目指す若者には、どうぞ警察官の仕事に誇りを抱いて、一層、精進していただきたい。

2015/8/1 ベスト8月号 巻頭言

求められる多角的な視点
〜国際化時代に求められる複眼思考の勧め~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

<始めに>
物事をどのように考えるのか。特に国際化時代に欠かせない“目の付け所”、考え方、発想法などについて考察してみよう。警察官としての物事の考え方は、従来から、独特の保守的な傾向があった。また、とかくワンパターン化しがちという弱点もあった。公務員として政治的中立性を強く求められ、逮捕権を筆頭に強力な権限を付与されているゆえの、様々な制約が、無難な枠にはまった発想に安住する傾向を生んできたものだ。しかし、国際化時代には従来の発想では通用しにくくなる可能性がある。
様々な分野で変化の激しい時代を生きている警察官として、こうした制約の中での、考え方や発想法について、留意点を考察してみることは有益と考える。
以下、警察官に欠かせない発想法について、いくつかのポイントを簡潔に列記してみたい。こうした視点での議論の高まることを期待したい。

1 鳥の目、虫の目
物事をどのように見るのか。様々なポイントがある中、最も大切なのは、発想法によって異なって見えるということだ。例えば、鳥のように上空から広く見渡し、まず全体像をとらえてみようというのが「鳥の目」だ。全体を広く見ることから、鳥瞰図を頭の中で構築する要領で見ることになる。発想法が異なれば見方も留意点も異なってくる。例えば、少年非行を考えるときに、親の収入における格差の状況から、我が国の経済全体の問題点、あるいは教育の置かれている環境、不登校やいじめなど、様々な問題を広く考えるということになる。
これに対して「虫の目」とは、今扱っている、その子の犯した非行事案にどう対処するのかという、個別具体的な対象から考えてみることになる。
発想法として、両者を使い分けることが肝要だ。そのいずれからも考えることが欠かせない。どちらかを封印してしまうべきではない。発想法で、扱う問題が異なる様相を帯びることをしっかり理解して取りかかることだ。
虫の目で個別具体的な対象を扱う際に大切なことは、その人の抱える悩み、心のひだまで感じようとするデリケートさだ。警察官は目の前で扱う個別の案件の対象者の心を感じようとすることが肝要だ。他方、鳥の目発想では、問題解決での多角的な発想。例えば、警察の力だけで何事も完結するのではないということに留意することだ。関係機関、関係者との情報共有、理解の深め合いなど連携を大切にしたい。

2 価値観の多様性が前提~広報の大切さ
広報は警察への理解者を増やすうえで極めて有益だ。
発想という視点では、情報の共有はあらゆる意味で、出発点になる。人間、分かっているようで、本当は他人の立場はなかなか分からない部分が多い。分からないから批判もすれば、無視もするということを踏まえる必要がある。分かってもらう、少なくとも、警察の意図を理解してもらうことは欠かせない。われわれ日本人は、以心伝心、分かってくれる人は分かってくれる……と思いがちだ。江戸時代までの状況を考えてみれば、変化が少なく、多くの場合、何事もだいたい推測できた。今は、まったく違う。あらゆる変化は激しく、多様な価値観を持った様々な集団や人々が混在している。これからは、来日外国人もますます増えるだろう。警察が相手にする人々の多様性は避けられない。
黙って、理解してくれる人だけに理解してもらえば良い……という時代は終わっている。むしろ警察を誤解している人を前提に、警察の考え方を説明するのが当然だと認識することが求められる。

3 各国のバイアスにも留意を
様々な問題にはその問題を考える立場によって異なるバイアスがあるものだ。
分かりやすい事例をあげれば、歴史の見方はそれぞれの国でバイアスがある。歴史上の事件や事故でも、それぞれの国で全く異なるイメージになっているのが通常だ。第2次世界大戦は、我が国では原爆投下や焼夷(しょうい)弾による都市炎上のイメージが先立つ。国際社会ではイメージ自体が全く異なる。
アメリカでは、真珠湾への我が国の奇襲(闇討ちとなる)、激戦の硫黄島すり鉢山の星条旗(ワシントンの米議会議事堂前のモニュメント)といった具合だ。これが中国になると南京大虐殺など生物化学兵器開発の石井部隊(731部隊)となる。我が国では731部隊を知る人は少ない。
左様に、物事は置かれた立場で大きく異なって見えるということを心に留めることは有益だ。我が国ではアメリカのことは毎日のニュースで触れられるが、欧米で我が国が報じられることはほとんどないということも知っておくべきだ。我が国が外国で報じられるのは、津波や火山の噴火などの自然災害や大事故ぐらいだといっても過言ではない。

4 異なる価値観が前提
国際社会は多様な価値観に満ちていることが前提だ。だから、自分の考えを説明することが始めの一歩になる。
国際化する次代を担う警察官には、様々な場面で積極的に発信することが当然の前提になる。言わなければ分かってもらえない……ということが前提なのだ。警察の立場ももっと積極的に発信していく必要があるだろう。

<終わりに>
物事を考える発想法などの多様性について、留意しておくことが肝要であるということである。
ここに内容を入力してください。

2015/7/1 ベスト7月号 巻頭言

効率の良い勉強方法
〜骨折り損のくたびれもうけになっていませんか~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

何事にもいえることだが、勉強にもコツがある。昇任試験勉強でも、当然のことながら、要領の良し悪しが結果に大きく影響することになる。
勉強の仕方、特に、警察官昇任試験準備の勉強のコツを紹介してみたい。なお、弊社のHP、まだ見ていない人は、ぜひ見てもらいたい。

1 情報収集
毎年定期的に実施されるわけだから、まず過去問をみることから始めることだ。かつて受験勉強し、合格した先輩の話を聞くことも欠かせない。

2 自分の実力を知る
自分の実力、特に得手不得手をできるだけ客観的に知ることだ。警察学校以来、様々な試験を経験しているわけで、それらの結果は有力な情報になる。過去に受験しているなら、それらの経験も有益だ。さらに、自己評価(できたら採点を含め)など、自分にしっかりと向き合うことだ。

3 計画を立てる
目指す試験までの期間に応じて、勉強の計画(スケジュール)を立てることになる。大切なのは、自分に合った、納得できるものにすることだ。特に、短期集中型なのか、(長期)コツコツ型なのかなど、自分の性格にもよって異なる。また、受験まで1か月しか残っていないなど、直前の場合には、その期間に合わせた、特別追い込み作戦などを組むことも有益だ。

4 自己採点
試験終了後、自己採点をすることは有益だ。正誤の確認。誤答した問題は、周辺を含め、よく勉強すれば、深い理解につながることは間違いない。公研(警視庁版月刊誌THE BESTの付録)では、どこよりも早い解答速報を出すよう心掛けている。

5 取り扱った事案の周辺を調べる
理解を深めるためには、実際取り扱った事案に関して、関連事項をその根拠規定、通達などとともに確認するという勉強の仕方が効率的だ。実際取り扱ったものではないが、疑問に思ったことも同様に、納得するまで勉強してみることが有益だ。日常の勤務で、根拠法規などまでさか
のぼって確認する習慣を身に付ければ鬼に金棒である。

6 専門のコーチ
特別例外的な人を除いて、普通は勉強が続かないものだ。そういう、普通の人は、専門のコーチが必要になる。ズバリ、本誌の「ベスト会員」となることをすすめる。専門のコーチとして最もふさわしい。少々コマーシャルを加えたい。会員になれば、書店で購入するよりずっとお得だ。余計な付録は付けないようにしている。昇任試験に絞り、昇任試験に関するもの以外は付けていない。

付記1 月刊誌THE BEST の警視庁版で全国の警察官の受験勉強は十分に通用する。
弊社は、主として、警視庁の昇任試験を視野に置いている。それは、警視庁の出題が、全国の警察の出題の模範となっているからだ。十分な出題体制のとり難い多くの道府県警では、警視庁の出題を見て、出題しているのが実態だ。知る人は知っていることだが、こうしたことから、全国警察官は、安心して、弊社の警視庁版で勉強してもらいたい。

付記2 自慢の出題分析
弊社の復元問題集を見てもらいたい。とにかく分析に力を入れている。徹底した分析は、受験対策としては命だと確信している。自慢は、分析がすべて次の試験での出題予想に直結していることだ。したがって、ぜひ毎年ご購入願いたい。古いものは、それだけアップデートに遅れてい
る。弊社の出版物を手にしてもらえば分かるように、毎年、ブラッシュアップされている。漫然と過去のものにあぐらをかいているのでないことを、よく見てもらいたい。

付記3 弊社HPの利用法
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2015/6/1 ベスト6月号 巻頭言

ますます高まる警察官への期待
〜安全安心がすべての前提~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

今日の国際社会はどこもここもテロへの恐怖に満ちている状態だ。イスラム過激派武装勢力ISの衝撃的な有様は、これから世界に拡散し、長く暗いテロとの対決の時代の招来を予感させている。残念ながら、そうした予感を否定する材料は少ない。

地球儀を見渡せば、中近東から北アフリカ地域をはじめ、不安定な地域が多い。これから様々な形の紛争が増えることは確実で、それらを解決する力の劣化が激しい。国際社会はさらなる分裂混迷を深めることは避けられない。実に大変な国際情勢なのだ。

日本も一人、混迷の外にいることはできない。警察をはじめ関係機関、いや国民こぞって、我が国の安全安心の確保・向上に最善の奮闘をしなければならない。

我が国の諸条件は国際社会では際立って恵まれている。島国であることは、出入国管理がやりやすい。言語的な孤立性も治安維持のうえからはメリットになる。

安全安心は我が国の最大の売りになる。観光をはじめ我が国に住みたいという外国人が増えることが期待できる。食や文化、自然や歴史、何よりもそれらの多様性が大きな魅力として見直されつつある。

国際社会の安全安心のリスクの高まりは、我が国にとっては、大きなチャンスなのだ。

警察官として、安全安心を国際的な視野で見た場合の、欠かせない視点を以下、簡潔に列記しておく。論文や口述での参考にしてもらいたい。特に、幹部昇任試験では、大きな視野が求められる。幹部昇任試験にあっては、正解を求めることに留まらず、いかに考えるかの見識といった
レベルが合否の分かれ目になることに留意すべきだ。多様な考え方への理解、しかし自らの意見を持っているということへの巧みなアピールが求められる。

1 移民受け入れ問題
人口減少期にある我が国で移民の受け入れをめぐる議論が高まることは必至だ。単純労働者を受け入れず、高度専門能力を有する人材を選別して受け入れる方向が良い。
そのために、資格外活動などのなし崩し的な出入国管理の崩壊は許してはならない。
関係当局の厳格な運用にさらなる努力が欠かせない。

2 留学生受け入れ拡大
国際化を図るためにも、挙げて留学生の受け入れに努めるべきだ。我が国での就職などについて、日本語と日本文化への習熟度の高い留学生の優遇には賛成だ。
私は、日本に例えば5~7年間滞在している人への永住権については、前向きに対処したいと考えている。

3 同化政策を基本に
永住・帰化に関して、我が国がそうして来たように、同化政策を基本にすべきと考える。異文化をモザイク状に存在させるという考えもある。ただ、私は我が国が古来取ってきた同化を目指す受け入れがいいと考える。少なくとも、日本語の習得にはかなり高いハードルを課しておきた
い。何よりも、日本社会との融和に有効だろうから。
そのためにも、外国人労働者などの子弟の教育にはさらなる努力を払うべきだ、日本語教育が成功して、同化にも資するものと考える。

4 国際的な日本語教育
諦めることなく、国際社会での日本語習得熱の向上を目指したい。ネットを利用して日本語が学習でき、習得に応じて資格取得が可能になるような工夫をさらに努めるべきだ。
留学生受け入れ時の加点要素にするなど向学心を刺激したい。

5 警察として
通訳体制……各国語学別に対応できるよう、本部などに電話での対応などを可能にする配意を強めたい。また、語学教育にはさらに配意したい。
様々な分野でのイスラム教対応(留置場の食事など)など宗教への配意を強めたい。

安全安心社会構築への現職警察官への期待が高まっている。矜持(きょうじ)を持った研鑽(けんさん)を願いたい。

2015/5/1 ベスト5月号 巻頭言

警察官試験受験生を増やすための取り組み
〜昇任試験で出題されるポイント~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

とにかく、少子化で若者が減少している。しかも急速に……。その中で、景気が多少とも上向いてくれば少なくなった新卒・若者の奪い合いになることは必定だ。警察官試験への受験生減少で全国警察は挙げて応募者増加にあの手この手の知恵を出している。
昇任試験でも、面接や論文試験などで少子化問題が出題される可能性が高まっているので備えておくに越したことはない。以下そうした際の参考になればと、ポイントを記してみた。

1 現代の若者は大人の社会が分かっていない。
ゲームなど仮想空間に費やす時間が多くなっている分、若者は年齢の異なる人との接点が減っている。早い話が、現実の世の中が分かっていない。しかも、大人に接する術(すべ)を知らない。こちらから、積極的に若者に話しかけるしかないということだ。
警察学校をオープンキャンパスとして公開することが良い。一日警察官などのイベントも良いだろう。小中学校へ交通安全や防犯キャンペーンで訪れるのも良い。とにかく、若者に接する機会を作ることが肝要だ。

2 硬いことは苦手という若者が多い。~にっこりやさしく一言かけよう。
「警察官」というだけで、怖がるといった若者がいる。勝手な先入観がはびこっているのだ。こちらから少し腰を丸くニコニコして接していくしかない。登下校時の安全見守り活動などは絶好の接点になる。勤務の可能な範囲でということだが、子供の目に付くところに姿を見せることだ。
そこで大切なのは、やさしい一言だ。にっこりできるに越したことはない。子供を見たら将来の警察官予備軍だ……という感覚で接したいものだ。

3 交番は広報・宣伝拠点だ。
交番勤務員は警察の広告塔ということだ。そうした意識が肝要だ。すがすがしい姿勢。惚れ惚れするようなさわやかさ……があれば最高。無理を言うな……という声が上がるかもしれない。おじさんはおじさんなりに……で十分だ。
大切なのは、そういう気持ちということだ。特に若者には声をかけられたら最高だ。内容はアドリブで。先ずは「おはよう!」で、十分。

4 町内の皆さんとの知り合い増加を。
町内の皆さんと、どれだけ知り合いになれるかが最も肝要だ。多少の世間話、ときには無駄話ができることが良い。
交通巡視員、防犯委員など町内会の役についている人をはじめ、できるだけ多くの人々と話ができる関係を目指したい。そこで、「警察官という仕事のすばらしさ」を語ってもらいたい。実は、これが最大の受験者増加キャンペーンなのだ。

5 愚痴るな。
愚痴りはストレス解消に有効だ。それは分かる。気心の知れた同僚とたまには愚痴っても良いだろう。ただ、部外者の目も気にせずに、職場や上司の愚痴を言わないことだ。みっともないったらありゃしない。警察官は、職場を離れたら仕事や職場の話はご法度と心得たいものだ。

6 警察官という職業への誇り。
若い時代の初めて警察学校の門をくぐったときの感激を忘れないことだ。自分の仕事に誇りを持っている人の姿は美しい。そうした誇りを持っている自分を時には率直に出してもらいたいものだ。

警察官という職業は社会の基盤をなしている。岩盤そのものだ。人間社会は安全安心があって初めて始まる。その「いろはのい」を担う警察という仕事への皆さんの誇りが若者の心に響くことを確信している。

2015/4/1 ベスト4月号 巻頭言

警察官のハイブリッド化が問われる時代に備えよ
~人口減少社会の警察活動を議論しよう~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

我が国は経験したことのないような急激な人口減少期を迎える。警察官を巡る環境も大きく変わらざるを得ない。毎年100万人ほどの人口減少が続くことになる。2020年の東京オリンピックを境に、いよいよ東京都も人口減少し出すことになる。全国全ての都道府県で毎年人口が減ることになるということだ。

高齢化がいよいよ顕著になり、限界集落が方々に発生する。東京都での限界集落現象も目立つようになる。

人口が減少する時代は、警察官の減員も避けられない。大雑把に言えば、人口が半分になれば警察官も半分になる。

しかし、警察業務はというと、人口が減ったからといって、減少するとは言い切れない。否、反対に増えることだってあり得る。しかし、財政などの状況から、おそらくは警察官の数は減少していかざるを得ないだろう。

そうした環境の変化を見越して警察業務を前広に見直していかざるを得ない。それには警察官の仕事の仕方から始めることが肝要だ。そうした視点で、以下、警察組織及び警察官に求められる要件や資質の変化やそれらへの備えなどについて展望しておきたい。

1 市民との共同での取り組みを飛躍的に拡大することになる
防犯活動や少年補導はもちろん、多くの分野で市民の協力を得て効率の良い治安維持活動を展開していくことになる。そのために、警察官の市民とのコーディネート力が重要になる。
話す力の養成は一層重要になる。市民と共に活動するために市民との距離をさらに近いものにしていくことが求められる。

2 ITの活用が進む
警察活動でのIT活用が大幅に進むことになろう。警察学校などでの教養でもIT 分野の割合が飛躍的に拡大する。
現在は、IT関係は問題点が少なくなく、特に、秘密漏えいを防止する観点が先行しているようだ。しかし、ITの進展を踏まえれば、警察が、前向きに向かい合うことは、必然的だ。
早期に、IT、ネット関係への前向きな教養へとの転換が欠かせない。
市民との連携もITの活用の延長線上にあると思う。

3 国際化対応も急務だ
2020年に来日外国人2千万人を目指している。おそらくそんなものではないだろう。3千万、4千人になる時代は遠くないだろう。
現在でも銀座通りは中国からの観光客であふれている。
警察官はさらに国際化した時代に備える必要がある。
英語プラスもう1つの外国語を話せなければやっていけない時代はもうすぐそこに見えている。
当面は、オリンピックへの備え。そして、警察官に求められる当たり前の外国語の時代を前向きに迎えてもらいたい。

4 交番相談員などは飛躍的に増やすべきだ
一層の高齢化社会を見通して、希望者は、例えば、70歳まで勤務する時代がやってくる。あるいは定年という制度がなくなる時代になるかもしれない。
警察官としての勤務には、体力が欠かせない側面がある。そこで、交番相談員のような負担が軽い業務を積極的に警察官OBに担ってもらうことを進めるべきだ。
学校をはじめ防犯活動での様々なニーズが考えられる。

5 警備業、探偵業などとの協力も図るべきだ
警察業務と隣接する民間業務との協力関係は戦略的に考えるべきだ。

6 限界集落化していく地域への警察力の配置に工夫が求められる
限界集落・団地などに警察力が求められるが、警察官は割けない……ということが目に見えている。そこで様々な工夫が求められる。
青パト・モデルもあるだろう。ミニ交番などといったモデルはどう
だろうか。ITとOBがそこにどう絡むか?

7 NPOなど
NPO活動は一層重要な要素となろう。そこでのOBの活躍は歓迎されるだろう。警察活動でのそれらへの支援への工夫が肝要ではないか。


まだまだ、様々な意見があるだろう。積極的な論議をしていきたいものだ。

2015/3/1 ベスト3月号 巻頭言

覚悟が欠かせないテロとの長期の戦い
〜日常勤務が勝負~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

世界は長期間のテロとの戦いを覚悟しなければならない。正月気分も抜けない1月初めの、パリでの新聞社やユダヤ人経営の店舗等への自動小銃などによる銃撃は、本格的テロ時代の幕開けを告げるものだった。
残念ながら、中近東から来たアフリカでの国家・国境流動化現象は相当長期間に及ぶ可能性が高い。
多くの国際問題専門家が指摘するように、アメリカという世界の警察官役の国が衰退し、秩序の大本が揺らいでしまった。ロシアのウクライナ、クリミア半島への武力行使による国境変更を止め得ないことに象徴される。アジアでは、隣国中国が2010年に我が国をGDPで追い抜き、2015 年中には我が国の2倍超にもなる。10年ほどでアメリカをも追い抜き世界一の経済大国にならんとしている。中国は海洋権益の拡張を狙い、東シナ海や南シナ海で現状変更を狙っている。我が国を取り巻く国際情勢は楽観できない危うさを秘めている。
こうした不安定な国際情勢の中で、最も不安定なのが中近東地域だ。シリアやイラクで急速に力をつけているイスラム・スンニ派過激派の「イスラム国」への有志連合の空爆は今年も続くことは必至だ。その間、世界で国家を持たない最大の少数民族(3,000万人ともいわれる)、クルド民族が事実上の独立化へと進んでいる。クルドが独立することは中近東地域流動化の始まりになることは必至だ。
欧米をはじめ世界各国で、パリでの事例に見られるようなテロは最も警戒を要することになる。まさにテロとの戦いの時代ということだ。
まして、我が国では2020年のオリンピック開催というテロリストにとって格好の見せ場があるのだ。その備えとして全組織挙げての対テロ警戒能力の向上が欠かせないことになる。
警察活動にあっては、警察官一人ひとりに、こうした国際社会の大きなうねりの中で、しっかりと自らの任務を認識し着実な備えを怠らないことが求められる。
警察官にとって最も基本になる心得は「情報」に関する感度を上げることだ。川路大警視が言った「声なきに聞き、姿なきに見る」という心得は、研ぎ澄ました注意力を傾けて“聞き”かつ“見る”ということだ。
警察官は任務にあっては、そうした注意力を傾けて観察することが欠かせない。それには、どういうことが重要な情報なのかという判断ができるよう、常日ごろの準備が重要になることは言うまでもない。

我が国は、幸い島国で出入国の管理が比較的容易だ。その利点を最大限に生かして、あらゆる手段で出入国に関連した情報収集の力量を磨くことが求められる。
広義の国境管理ということである。とりわけ、銃器の持込みをさせないことだ。日常の警察活動で、あらゆる手を使って、銃器の流通をさせないという取り組みが最大の心得だ。暴力団関連の銃器に関する情報への感度を高めることをはじめ、マニアックな銃器の収集・隠匿まで、蟻の一穴を許さない心得が肝要だ。
麻薬等薬物事犯は治安の根底に関わる問題という視点が肝要だ。これくらいはいいだろうという意識が大きな災いを招来することになる。
警察官はそうした心配症でいいのだと思う。

日常の警ら活動、交番の前を通り過ぎる人々……こうしたことすべてが情報収集の対象になる。常在戦場の厳しい警戒を怠るまい。
後輩の警察官の皆さんに心からのエールを贈りたい。

2015/2/1 ベスト2月号 巻頭言

しなやかな心で、軽やかに対処する
〜豊かな人間関係を構築する極意~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

人間関係がいかに大切か。改めてここで指摘するまでもないだろう。しかし、人間関係で悩んでいる人も、苦手だという人も少なくない。人間関係を上手に築く心得を扱ってみたい。

様々な人との関係で私たちは生きている。人間は文字通り集団の中で人と人との関わり合いで生活している。一番基底にある集団は家族、親戚で、ご近所という地縁関係から様々な友人、学校、職場や取引先、さらには国家、国際社会と広がっている。集団内でも様々な人間関係が織り成される。同期、同郷、職場の関係と複雑に絡み合う。
さらに、集団と集団の関係も様々な模様が織り成される。人間生きている限り、そうした関係の影響が決定的に大きな意味を持っている。

人間関係には様々な問題が必然的に伴ってくる。生きているということは問題を抱えているということになる。生きている限り問題から逃れることはできない。その根底に周囲との人間関係がある。ということであれば、人間関係をどのように築くべきか、また、そこに必然的に発生してくる問題にどのように対処すべきかを、あらかじめ考えておく方が賢明というものだ。

職場でも、家庭でも、私たちは生きている限り、様々な問題に遭遇する。その問題にどう対処するかで、その人の人生が決定的に変わってくるといっても過言ではない。問題にどう対処するのかということは、尽きるところ、周囲との人間関係だ。その人間関係は、本質的には、自分自身の性格によって決まる。

国家でも会社や警察といった組織でも同じことだ。この世の中はどこでも、大小様々な問題の連続ということだから。それぞれのレベルの人間関係が重要なのだ。組織はそれぞれ致命的になる事態を避ける問題解決の知恵を蓄積しようと努めている。各種訓育や監察制度もその一環として人間関係を考えている……といってもいいだろう。

個人的には、問題の発生が避けられないとすれば、どこかで、自分流の問題への対処の仕方をじっくりと考えておくことが肝要だ。人間関係をうまく構築させる暗黙知がここでも大切になる。今回は、そうしたスタンスで、読者の皆さんがそれぞれの問題として、周囲との「人間関係」を考えるきっかけになれば幸いだ。

金額が大きくなれば慎重な判断ができるのに、小さな場合は軽率になるという人がいるだろう。「ちりも積もれば山となる」の理で、その結果は大損をしていることになるだろう。こういう人は存外どこにでも居るものだ。皆さんの人間関係も大げさに考えないで、どこにでも有る日常接する人との関係というレベルから考えることだ。

未熟で思慮が浅い類の人も少なくない。これは基本的にはその人間の問題だろうから、まずはそのことに気づくことが肝要だ。あるいは、大きな問題に出くわした場合にも、じっくりと考えて対処することができずに、「付和雷同」、あるいは無責任な他人の影響を受けて簡単に答えを出してしまうことになる。あるいは、そもそも問題自体から逃げているという人もいる。

大所高所から、あるいは当事者以外の他人から見れば、どうでもいいような枝葉末節だけにこだわって、「思考停止」状態という人もいる。衝動買いもこの類か。となると、ほとんどの人がこの範疇に入るのではないか。

さらには、いつまでも気長に構えているという人も結構多い。これも性格の問題だろうか。結婚願望があるのにいつまでも先延ばしにしているあなたも、あるいはこの範疇に入るかも知れませんね。

誰しも問題に遭うことは避けられないのだから、問題を楽しむ心がけが肝要ではないか。
問題に対しては、努めて春の日差しのようなおおらかな気持ちや態度で対処したいものだ。決して、あせって、決め付けることのないようにした方がいい。
常に、相手の立場を考えて、柔らかい頭で考えたい。相手が、どう考えているのか、何に重きを置いているのか……を思って、しっかり観察してみることだ。できるだけ相手に合わせて説明して、相手の心を徐々にほぐす心がけが肝要だ。

やわらかな心で、やわらかに対応することに勝るものはないのではないか。

人間関係もそうした心で今日接する人との臨み方、その積み重ねということなのだ。

2015/1/1 ベスト1月号 巻頭言

解体する世界秩序の厳しい時代を生きる
~治安への影響を読む~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

新年あけましておめでとうございます。
読者の皆さんを始め、ご家族の皆さんにとって、新しい年が、本当に良い年でありますよう心からお祈りいたします。

新年に当たって、私たちが生きているこの時代の特徴を考えてみたいと思う。

世界の秩序は、既成の秩序(ルール)を維持しようと模索する勢力と、それを不満として解体を試みる勢力の間の緊張関係から成り立っている。既成の秩序を維持しようとする勢力が強い時は平和が維持される。何らかの理由から既成の秩序を解体し、自分たちにとってより有利な状態にしたいという勢力が強くなると不安定になる。戦争はその究極にあるといえるのだ。

第2次世界大戦以降の世界にあっては、既成の秩序を守ろうという最大の勢力はアメリカだったのだが、このアメリカの衰退が著しい。残念なことにアメリカに変わって秩序を守ろうという国が見つからない。国際情勢の基盤は「(アメリカから)バトンを引き継ぐ国がない」ということだ。

ロシア、中国、イスラム諸国がそれぞれの思惑から現状に不満を抱き、既存秩序の解体・現状変更を目指している。

昨年のクリミア、ウクライナでのロシアの軍事力を行使しての国境の変更を狙った行動は、「力による現状変更は許されない」(既存の国境を力で変更してはならない)というルールへの挑戦だった。残念なことに、ロシアのプーチン大統領の挑戦を止める力が国際社会に失われていることが明らかになった。

中国は、尖閣諸島、南シナ海などで、力の行使による国境の変更を試みている。

イスラム諸国は、多くは第2次世界大戦の後に独立したという意味で若い国家だ。それぞれが抱える様々な困難の背景を洋式近代化の結果だとする不満を高めている。中東から北アフリカ諸国は世界で最も失業率の高い地帯で、とりわけ若者の疎外感・閉塞感が強い。既存秩序変更への熱が高いことは必然の情勢だ。

それぞれの国での既得権益層とのあつれきの結果、過激派の勢力が伸張しやすい情勢にある。
シリア、イラクでの過激派イスラム国力の拡大する背景となっている。

オバマ米大統領は、残り2年の任期を残して、事実上レイムダック化している。国際秩序を守る先頭に立つことを期待することは難しい。

国際情勢は動乱の中東をはじめ、各地で紛争の多発する困難な時代となる覚悟が肝要だ。

わが国の国内情勢も、様々な困難な問題が顕在化していくことは避けられないだろう。

さて、警察官の任務の治安情勢だが、内外の厳しい情勢の中、かなりの困難な状況を覚悟する必要があることは間違いない。
新年に当たって、気を引き締めて、臨もうではないか。

厳しい情勢になるほど、困難の度合いが高まるほど、公私共に充実した成果を生むことができるというのが私の実感だ。全て、自分の心構え次第だということだ。

年頭の清新な空気の中で、個々は深呼吸一番、各自の目指すところに向かった精進を誓うことが肝要だ。
小社職員一同、皆さんの目標の達成に向かって精進を誓いたい。

2014/12/1 ベスト12月号 巻頭言

信念や信条を押しつけてはならない
〜控えめに“留めること”が説得の極意だ~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

親切から、自分の信念を語って聞かせる上司が少なくない。話している本人が一番得心している。周囲は、まま、しらけ気味なのに……。
説得の極意は相手の心を観察することが前提だ。そして最後は相手の判断を尊重することだ。得心することができるのは相手自身だからである。どんなに正しいことだと確信していたとしても、それを相手に受け入れさせるのは容易なことではない。時には、確信していればいるほど、反感を呼ぶこともある。生身の人間は複雑で難しい。
人間関係の極意は「押し付けないこと」、最終的には、相手の判断を尊重することだ。相手の判断の材料やきっかけを提供することに留める、と言い換えることもできる。この間合いを身に付けることは、その人に対する評価を左右することになるから恐ろしい。

お酒をやめて体の調子が良くなったのか、ほかの人にも熱心に禁酒を勧めている人がいる。どれほどの期間かは分からないが禁煙に成功したという人で、自慢するのは良いとして、ほかの人にも熱心に禁煙を勧めている人もいることには問題がある。
自分の体験や意見を他人に語るということは、それはそれで結構なのだが、時に、あまりに熱心に禁酒や禁煙を強く勧めて、うるさがられて浮き上がっていることがある。当の本人は善意なだけに気の毒というか、こっけいでもある。
趣味やスポーツ、最近はやりの自然環境に配意したエコロジーな生活、あるいは各種サプリメントの愛好家など、自分の体験や信念を周囲に語ってやまない人も少なくない。善意なだけに始末に終えない……ことも少なくない。
健康に良いこと、正しいことを勧めているのだからと、確信に満ちていることが、あだとなって、相手の趣味趣向や生活スタイルを無視して強制したら、反感を買わないではおかない。時に人間関係は台無し状態にもなってしまう。

同じ勧めるにも、相手の立場になって考えることが肝要だ。控えめに推奨して、その人が、勧めを受け入れるかどうかは、その人の判断に委ねるべきだ。人間関係は軽やかにありたい。
心の深いところにある道徳的な様々な行為も、自らの学びや実践は大いに結構だが、それを他人に勧める際には、少し控えめにすべきだ。それが宗教という範疇になると、それこそ、反発を買うことは、様々な先例も多く、経験済みといえるのではないか。
何事につけ、相手が何を考えているのかを観察し、相手の状況に合わせて話をすることが肝要だ。説得ということは、程度の差こそあれ、相手の心の営みに立ち入ることになることを忘れてはならない。心にズカズカと立ち入るのは、してはならない。それが経験知というものだ。
人間関係では、相手を観察するという“ ゆとり” が大切だ。増して、説得という営みでは、慎重さが欠かせない。人間関係はすべて、押すだけでは反発を買うことになる。時には、引いてみることが欠かせない。
相手に決断させる。得心した選択だけが本当の確信となるのだから。
心情や信念は他人から押しつけられるものではない。人間関係の機微
を理解することが欠かせない。

2014/10/31 ベスト11月号 巻頭言

他人に干渉しすぎてはならない
〜部下に対する教育の難しさ~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

部下に対する指導が苦手な幹部が多い。本人は本当に親切に注意し指
導しているつもりなのに、ひどく嫌われている人も少なくない。

まず知っておくべきは、他人を教育することは、常に難しいことなの
だということである。最初から、そんなにやさしいことではないという
ことを忘れて安易にやってはならないのだ。それなのに、やってしまう。
それが上司としての仕事なのだから……、という人が多いのだ。

教育で効果を発揮するには、父母にでもなったつもりで、相手に対し
て、誠心誠意ということを忘れずに対処するのでなくてはならない。教
育の前提はそうした誠心誠意だと確信している。真心を尽くした場合だ
け、相手の心の深いところで受け止めることができる。教育とはそうし
た心のレベルのやり取りが要になる。

ましてや、相手に注意する、場合によっては説教するとなるといっそ
う難しいことになる。職場では、注意したり、場合によってはしかった
りということが、ごくごく日常的に行われている。それが、上司として
やらなければならない「指導」という仕事とされているのだ。

繰り返すが、実は、他人を注意する、ましてやしかるといったことは極
めて難しいことなのだ。それを階級社会の警察で、上司たるもののすべて
に任務として期待しているのだから、始めから無理筋といっても良い。

そういう基本認識をしっかりと押さえた上で、注意したり、しかった
りするのでなくては効果がないだけでなく、逆効果だけが残ってしまい
かねない。

人間関係の要諦として、一般的には、あれこれ細かいことまで干渉し
てはならない。多くはその人の短所を指摘するのだから、本来、指摘さ
れること自体が快いことではない。それなのに、結局は「ああしなさい」
「こうしなさい」などと細かく指摘することになる。細かいことで他人に
干渉するということは、それまでに築き上げた人間関係を損なうことに
なりがちなのだ。だから、干渉しない方が良いということになっている。

家庭や学校での人間関係でも、過干渉は多くの場合は逆効果になって
いる。実の親子関係でも、親が子供に対して行う教育でも過干渉は効果
より逆効果の方が大きい。過干渉は、子供の成長にとってマイナスにな
ることが多い。子供を信頼して見守る方が有効な場合が多い、……と言
われている。私もそう思う。

相手に対して何かを指摘することは、本質的に自分の価値観を異なる価値観を持っている相手に少なからず押し付けることになる。相手に人
格的な価値を否定されたと受け取られることが多い。
親が子供に小言を言いすぎることも、小言を強制的に聞かされる子供
の精神を疲弊させることになる。言われた内容よりも、とにかく、そう
いう状態になることを拒絶する。

病んだ心ではすべてが台無しだ。子供の精神の疲弊こそが、過干渉の
親の子育て失敗の原因だ。

愛情が前提となっていることが分かっている親子の間でも、心を開か
せ注意を聞かせることは難しい。ましてや職場の上司部下の関係で相手
の短所を見つけた場合、しばし深呼吸してから対応を考えるべきだ。多
くの場合は、相手の人格を尊重して、さりげなく注意する程度に留める
方が良いのだ。

効果的な教育には愛情が前提であり、過干渉にならないよう細心の注
意をしたうえで行うことが肝要だ。まして、職場での上司と部下の間の
教育は、多くの場合は、人間関係を破壊してしまう。

アドバイスであっても、責任が伴うことも忘れてはならない。

それなのに、他人に何かと意見を言いたがる人が居るのは不思議だ。
なんだかんだと忠告する。根は親切なのかもしれないが、多くの場合は
「独りよがり」だ。相手から「余計なお世話」と受け取られることも少
なくない。
アドバイスしている側はそうした相手の気持ちが分かっていないこと
が多い。親切なアドバイスでも、感謝されることよりはむしろ人間関係
を悪くしていることが多い。
アドバイスする場合は、最後までその責任が伴うというくらいの覚悟
をしておきたいものだ。アドバイスする場合は一言ひとこと、言葉を慎
重に選んでするのでなければならない。真に相手を思って、相手の幸せ
を祈って、アドバイスする場合に限り、必ずや相手の真心に響くことに
なるだろう。

教育やアドバイスの難しさをよく理解したいものだ。人間の感情のあ
りように関心を持って、デリケートな人間観察を心掛けることが肝要だ。

2014/10/1 ベスト10月号 巻頭言

国際情勢から目が離せない
〜治安のプロ・幹部に求められる国際情勢の常識とは~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

幹部警察官にとっての国際情勢での一般常識とは何だろう?公務員として、まして警察捜査権という法執行機関に属し強制力を担っている警察官としての一般常識には、いくつかの微妙な特徴もある。先ずはこの微妙さを理解してかからなければならない。
例えば、政治的な、あるいは宗教関連の話題は、常識的には避けたほうがいい。特に、個人的な心情を強く出すことは誤解を生むことにもなり得るので要注意。しかし、日常の市民との付き合いの中で、そうした話題が出ることは避けられない。そうした場合には、どんな話題でも対応できる心のゆとりが欠かせない。その準備としての備えが警察幹部に求められる。
国内外情勢は、治安事象の判断には欠かせない。この意味では、関連の情勢を考え、特に、治安との関連をしっかり分析することが肝要だ。
警察官としての一般常識とは、様々な国内外情勢を理解する力ということ、日常、接する市民が関心を持っている話を理解できる能力、特に、治安との関連を考える視点を持つということだ。そうした治安のプロとしての話ができることが肝要だ。
警察幹部としては、治安を担う上でという物差しをわが身に付けるという視点で、各種情勢を整理して捉え学ぶことが良い。治安を担うものとして、治安との視点があってこそ、警察官としての発言は一目置いて聞いてもらえるというものだ。

国際情勢だが、治安への影響という視点で極めて深刻な問題が進行中だ。我が国にいれば必ずしもその深刻さが実感されないが、現在は、戦争の時代、少なくとも戦争前夜の時代といっていい状態なのだ。
イスラエルのガザ地区、シリア、イラク、ウクライナなどなど。どこも実際は戦争状態になっている。
アフリカでは内戦状態という地域も。難民が数百万人という単位で増えている。ボコハラムのテロ攻撃はリビアのカダフィー政権崩壊も影響している。
これらをちゃんと理解しておかなければならない。自信のない人はそれぞれに関するネット検索から始めてもらいたい。
戦争前夜の時代といっていい状態には、アメリカが世界の警察官をする意欲も能力も失っていることが大きい。しかし、根本的な背景は、貧困の存在だ。
シリアやイラクで「イスラム国」というイスラム原理主義過激派が攻勢を強めている。欧米各国から若者が義勇兵として参加している。それらの若者がやがてそれぞれの出身国に帰ってテロ活動を起こすことが懸念されている。
インドネシアやマレーシアからも数十人規模の義勇兵が参加している。やがて、彼らは帰国し、インドネシアやマレーシアでのテロ・ゲリラ活動に参加していく懸念が強い。
ウクライナ東部でマレーシア機が撃墜されるという衝撃的な事件が発生した。誤ったロケット弾攻撃によるものだろう。1万メートルの上空を飛行する航空機を撃墜する兵器が武装勢力の手に渡っているということだ。
戦闘地域が拡大しているということは、テロリスト集団に武器弾薬が流布しているということだ。コントロールできない武器弾薬がテロリストという危険な集団の手に拡散してしまったのだ。
遠いところの“対岸の火”などといってはいられないのが今日の世界ということ。

インターネットの募集に応じた若者が欧米、アジア各国から集まり、実弾の飛び交う実戦の戦闘を経験して、世界各地に拡散している。それが現実ということだ。

一人、我が国だけが安泰というわけには行かないのは明らかだ。

警察幹部としての国際情勢理解とは、世界各地の紛争や戦闘が回り回って、我が国の治安の根底にどのような影響をもたらすか……しっかりと因果関係を理解することに始まる。

2020年のオリンピックを控え、世界のテロ関連情勢は、我が国国内の治安問題になったということだ。

2014/9/1 ベスト9月号 巻頭言

依然として深刻な特殊詐欺
〜振り込め詐欺防止は高齢者への優しい社会作りの原点~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

時代状況を反映し犯罪にも流行がある。今日の時代を最も反映している犯罪は、振り込め詐欺に代表される特殊詐欺といえよう。
警察は、それぞれの時代を反映した犯罪に集中的に対処することで、「体感治安」すなわち市民の「安全・安心感」を醸成することに努めることが求められる。
今日は、振り込め詐欺の増勢を止め、沈静化させることが、警察官にとっての時代の要請ということになる。
今月は、特殊詐欺問題を通じて警察活動を考えてみたい。

警察庁が本年5月末現在の「特殊詐欺の認知・検挙状況」をまとめた。認知件数は5,074件、うち振り込め詐欺は3,985件で、いずれも昨年同期を上回っている。
特殊詐欺の実質的な被害額は223億8,110万円余り、振り込め詐欺が半数以上を占めている。休日を除いて、毎日1億円を超える被害額になっていることは重大なことだ。
刑法犯認知件数が減少している中での、特殊詐欺の増加傾向は、今日の社会状況を反映したものと考えられる。

特殊詐欺に関して、第一線警察官の皆さんに、いまさら一般論を繰り返すまでもないだろう。以下の具体的な特徴を踏まえた施策を執ることによってできるだけ犯罪抑止効果を上げる必要がある。

まずは、特殊詐欺の被害者は約7割を女性が占めている。年齢別では男女とも70歳以上が最も多い。
要するに、高齢者、特に女性高齢者に絞った広報を実施したいということだ。

広報は、対象を絞って、オンデマンドであることで最も効果が上がる。高齢女性への働きかけという視点での、広報へのひと工夫を願いたい。

注目すべきは、金融商品等取引名目の被害額が大きいことだ。当然といえば、当然なのだが、高齢者をむしばむこの種の手口には、集中的な広報が肝要。高齢者といえども、従来の認識とは違って、かなり活発な人も少なくない。そうした人が被害者になっているという視点も欠かせない。要は、自分は大丈夫という誤った認識が、被害を呼んでいる。
誰でも被害者になり得るという広報が肝要だ。

自分はだまされない……という自尊心から、通報・届出が遅れることで、ますます対応が遅れることになっている。
誰でも被害者になり得る。被害者になっても、何も特別に恥ずかしいという受けとめをしないこと。こうした高齢者の心理に配意した広報が大切だ。

なお、ベスト読者の気になる昇任試験にとって、このような旬のテーマは格好のネタだ。

被害の現況、手口の傾向、抑止対策等は最低限押さえておこう。このような時代を反映する犯罪に関しては、別途勉強時間を作らず、ニュースに触れた時点で覚えてしまうのが肝要だ。

蛇足ながら……。

私も71歳になって感じるのだが、高齢者への広報が、いかにも馬鹿にしたようなものが目に付くのだが、いかがだろうか。歌を歌ったり、踊りを踊ったり……。それも、場合によっては有効だろうが、多くの高齢者は、従来のイメージよりは、ずっとしっかりと生活している。いか
にも、といった広報は考えものだろう。
ただ、問題は、近所づきあいが従来より少なくなっていることだ。孤立しがちということだと思う。そのことによって、肉親をかたる者からの連絡につい心を許してしまうという隙が生じるのかもしれない。
第一線での警察活動にあっては、地元自治体や町内会や各種団体、NPOなどの役員などとのできるだけの関係作りに配意してもらいたいと思う。

2014/8/1 ベスト8月号 巻頭言

決して中途で諦めない
〜成功の秘訣は継続だ~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

学問でも事業でも、スポーツや趣味でも、あるいは昇任試験でも、途中で諦めないことが一番大切だ。人間、成功するための最大の心得(コツ)は、諦めないことともいえよう。
何事も、誰にとっても、これでおしまいということはない。一度や二度の失敗で諦めてはならない。最近は、人生にとって、“ 諦めないこと”こそが、最も尊いのではないか……とさえ私は思っている。
生きている限り、誰しも無限に進歩していく可能性がある。私たちの人生はそういうものだと思う。成功の高みではなく、そこを目指しての努力こそが尊いのだ。

ところが、何かを志して、ある程度のところまでそれなりの努力をしたけれど、途中で努力を止めてしまい、志を遂げずに人生を終えてしまう人が多い。努力するということ、特に何度も挑戦し続けるということは容易ではないということだ。

経営者には経営者で、途中で挫折したという話が山とある。同様に、警察官にも警察官としての志を抱いていた者が、いつの日か途中で努力することを止めてしまったという人が少なくない。警察学校の校門を初めてくぐった日の初志を大切にしたいものだ。と同時に、誰しもが挫折する。一度や二度挫折したくらいで諦めてはならない。大切なのは諦めないで再挑戦すること。くじけても、くじけても、何とか立ち上がって、再挑戦する。決して諦めない強い心こそが、その人の本当の価値なのだろう。結果としての、成功ということよりも、諦めないしなやかさこそが真の価値あるものなのだ。
中国の古典「詩経」に「初め有らざるなし、よく終わり有る鮮(すくな)し」という言葉がある。
最初のうちは誰でもが努力しようとするが、最後まで努力を続け、やり遂げる人は少ないという意味だ。
へこたれない根性というか、何度でも挑戦することの大切さを説いているという風に解釈することもできる。わが国の「七転び八起き」にも通じる。

誰しも一度や二度、あるいは何度も……人間は失敗する。挫折しない人はこの世には居ないのだ。大切なことは諦めないこと。挫折しても、何度でも再挑戦する強い心を持っていることが真の価値ということだ。

本誌の読者の皆さんも、挫折することもあるだろう。そうした場合、大切なのは決して諦めないことだ。昇任試験には合格することが望ましいが、くじけないことは、それと同じようにすばらしいことだ。長い人生という物差しで考えれば、真に価値があるのは、折れることなく立ち上がって再挑戦することだと思う。

どんな問題に出くわそうと、過去に戻ってその原因を断つことはできない。時間は決して止まることはないのだから。
わが身にふりかかった問題から逃れて、他人に代わってもらうこともできない。
自分の運命はすべて自分で背負うしかないのだ。

逆境でも、試練と受け止め、いっそう奮闘努力するしかない。いやむしろ、逆境に感謝することが肝要ということだ。

こうした前向きな姿勢こそが、その人を成長させる原動力になること請け合いである。諦めないこと、むしろ試練に立ち向かう前向きの心で臨むこと。そういう人が高みへとたどり着くことになるということです。

昇任試験も同じことである。今回、合格できなかったとしても、決して諦めずに、むしろ試練を与えられたことに感謝して、前向きに臨んでほしい。
継続こそが真の力になることを忘れないように。

2014/7/1 ベスト7月号 巻頭言

短期集中勉強の要領
〜コツコツだけが唯一の方法ではない~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

はじめに
警察界には毎日コツコツ勉強するという努力派(従来型)上司が多いようだ。しかし、勉強方法は千差万別だ。人間の数だけそれぞれのやり方がある。普段はほとんど勉強していないのに、短期集中で合格してしまうというご仁も少なくない。実は後者の方がずっと効率が良い勉強方法だといえなくもないのだ。
そこで、今回は短期集中型の勉強方法をお薦めしてみたい。

1 思い立ったが吉日
目指す試験までの期間を前提に短期集中勉強で合格を目指そう。そう思ったその日が、あなたにとっての吉日ということだ。そう自分に言い聞かせる。今すぐに何をどう勉強するのかといった作戦計画を立てるのだ。
試験までの時間が短いなら短いなりに、ある程度の時間があるならそれなりに、という計画になる。
絶対に合格するぞ……という思いが前提となる。

2 本気での集中
短期勉強の命は集中力だ。生半可なものではない本気さ勝負ということ。決めたものは、必ずやり切らなければならない。そこに妥協があってはならない。人間、言い訳を探しがちだ。その言い訳を一切許さない厳しい決意が求められる。
これだけ集中して勉強したのだから、合格だ……と思えるほどの集中力を発揮してもらいたい。マイドコントロール面でもそうした確信をイメージすることが欠かせない。

3 絞り込み
短期間だから、あれもこれもという贅(ぜい)沢は許されない。これとこれ……といったように勉強する範囲を絞り込む必要がある。
信頼できる先輩、上司などの助言を得るなど、その勉強すべき物の絞り込みには特別の情報収集力が欠かせない。普段からそういう関心での準備が望ましい。
絞り込んだ範囲外の物は一切目をくれない。しかし、絞り込んだ限りの物はきっちりとやり切る。
その踏ん切りが欠かせない。

4 自信を持って臨む
合格するという決意と合格できるという確信。そのために、特別集中取組み作戦決行という決意が求められる。だから、集中力が発揮できる……と、確信するのだ。

5 まとまった1冊の選択
例えば、弊社の巡査部長試験に特化した問題集「THE SERGEANT」。これは、SA試験、論文試験、面接、術科・教練……すべてを網羅している。1冊を選定して、その1冊を徹底的にこなす。ぼろぼろにしなければならない。どのページも、あたかも書き潰(つぶ)し・砕き・飲み込むほどに徹底的に勉強する。
この月刊誌ベストは、長年の経験に裏付けられた目で、過去出題された問題を元に、新たな問題を予想している。そうした物を選択するのは短期集中勉強での実際的な知恵というものだ。

<エール>
たとえ、準備に当てられる期間が1か月であっても、眦(まなじり)を決して、勉強してもらいたい。そこから大きな世界が開かれることを信じている。

2014/6/1 ベスト6月号 巻頭言

警視庁という巨大な存在
〜昇任試験でも警視庁が全国の模範に〜

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

警視庁は警察界では例外的な存在だ。正に巨人なのだ。
平成25 年5 月16 日現在の数字で、警視庁警察官は43,272 人という陣容だ。全国警察官が257,098 人だから17%近くを占めている。
人口比で見てみると、警視庁警察官は人口1万人当たり約33 人、全国のそれは約20 人だから人口比での警視庁警察官は全国平均よりもはるかに多い。ちなみに、歴史的な原因により、西日本に警察官が多い。
警視庁に警察官が多いのは、首都特有の負担があることと説明される。

警視庁のこうした例外的な特徴が、警察界で様々な影響を及ぼしている。その中の昇任試験に関して考察してみたい。

警視庁以外の警察では定員も少なく、当然のことながら、昇任試験の作成に携わる警察官も少ない。それに対して警視庁は圧倒的にガリバーなのだ。昇任試験担当者も当然のように多い。警視庁以外の道府県警の昇任試験担当者は大変なのだ。担当者が少ないといっても、昇任試験は
やらなければならない。出題から採点まで実にご苦労が多い。少ない担当者の道府県警察での担当者の負担は計り知れない。
試験となると、それなりに、十分に検討された問題を出題しなければならない。試験問題などの管理ですら、小さいところだからといって手が抜けない。

結論を言えば、警視庁の昇任試験問題が全国警察の模範となっている。警視庁での出題を見て、他の道府県警では昇任試験の問題を作るのだ。もちろん、それぞれ修正は行うが……。警視庁の昇任試験問題は翌年の他の道府県警の出題を占う上で欠かせないといわれるのはこうした理由
からなのだ。

昇任試験勉強をする際には、警視庁の出題は押さえておかなければならない。これは知る人ぞ知る、いわば警察昇任試験の常識だ。警視庁の出題は、多くの専門職員の手間をかけた結晶なのだから、当然といえば当然。

弊社は、警視庁の出題を詳細に分析、会員にその結果を届けるよう最大限努力している。その理由は、率直に言えば、上記で述べたような理由からだ。

賢明な読者には、警視庁の出題に各自の道府県警の重点項目などを加味して試験に臨んでもらいたい。特に、年頭の本部長など幹部の訓示、各部の重点、各種月間の資料などを押さえることが欠かせない。

法律部門に関しては全国的に大して差異はない。したがって、警視庁のそれと同様と考えていい。各道府県警の違いは各部門別の実施要領や取り扱い細目の違いに現れる。そうした点に注意してほしい。入校時の資料などはその際の最も役に立つ資料となる。月間教養日などで配布さ
れる教養資料は、大切に保管しておかなくてはならない。数十枚あるクリアファイルに入れて保管することを勧める。昇任試験の直前にそれらが最有力な武器になる。

警視庁の皆さんには、全国の警察の先達としての期待を担っていることを誇りにしてもらいたい。昇任試験では、警視庁の過去問を中心に勉強することに専念してほしい。もちろん、プラス今年の重点事項をしっかり抑えるという要領は全国のそれと変わらない。

今月は、警視庁の存在感を中心に昇任試験準備勉強のコツを紹介した。弊社職員挙げて、全力で皆さんを応援する覚悟だ。会員の皆さんの初志貫徹を祈念している。

2014/5/1 ベスト5月号 巻頭言

賃金体系などの警察官の待遇について
~階級制と士気高揚の関係~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

今日の警察では、階級と職務の混乱が顕著になり、階級と給与の相関関係も崩れている。早い話が、上位階級に昇任するメリットが低下している。その結果か、警察界での昇任試験を目指すインセンティブ、ひいては学習意欲の低下が指摘されて久しい。
こうした傾向は警察官に限ったものではない。公務員全体に昇任し管理職になるのは、責任が増す割りに給与もさほど伸びないことなどから、敬遠される風潮になっている。早い話が、平々凡々、言われたことだけをやっていればいいのだという倦怠感がまん延している。なんとしても公務員制度を見直し、士気の高い、効率の良いものにしなければならない。
警察官の勤務(賃金)形態を一般の公務員などと横並びの議論ではなく、警察官に求められる特殊な要素を主張して、その条件を満たすための勤務(賃金)形態にするという検討を提示すべきではないか。特に、第一線現場での執行力を確保するということを最重要条件とした上での様々な検討でなければならないということだ。第一線警察官は実質的に50歳定年が望ましいとすれば、その実現のための条件を探るべきではないか。
そうした視点を踏まえ、本稿では、警察官の待遇・賃金問題に絞って、問題点とその解決への方向性を論じてみたい。

1 年功給から職務給への比重移行
現状、特別の事情がなければ、年功で昇給するという慣例が行われている。年功でなく、職務の難易度や昇任することで昇給する方向での見直しをすべきだ。
イメージとしては、階級昇任の都度、基本給が数万円上がるというモデル。同時に、同一階級にとどまると10年も経ればほとんど昇給しなくなる。自己研さんして昇任試験に受かって昇給をゲットするという職場の雰囲気にしたい。
2 危険手当など特別勤務手当て
逮捕など抵抗が想定される危険任務、死体処理のような困難な任務など、警察官には他の一般的な公務員とは異なる勤務形態がある。これらに対する特別勤務手当ては抜本的に増額するように見直すべきだ。
3 警察官の年金加算
危険勤務に伴い、警察官の勤務年数に一定の割合での加算評価を考えるべきではないか。体力的な要請から警察官としての勤務に早期退職が生ずるとすれば、なおさら、それを補う処遇面での魅力をつけなければならない。
加算評価の割合や仕方については専門的な検討結果にゆだねたい。20年間勤務すれば5割増とすれば30年勤務と同様な勤務と評価される。それだけ、転職への垣根が低くなるといったイメージになる。
場合によっては、20年以降の勤務での加算をなくすなど、早期退職への誘導を考えることもあろうか。市役所に勤務している兄より10年早く退職しなければならない弟の警察官が年金を考えても損得ないというモデルを検討したい。
また、年齢が若ければ転職の垣根が低くなることも早期退職を可能にするものといえよう。
4 防犯・防災分野での資格
警察官としての勤務がその後の活動で生かされるような資格を設けたい。警察官として20年以上勤務すれば勤務実績が評価され、その資格で活動の幅が広がるというようなイメージだ。
警察官OBが企業や自治体、あるいは地域などでの安全安心業務を担うこととしたいのだ。
現在は警察官が担っている職務の中にも、そうしたOB警察官にふさわしい職務があるのではないか。
地域の巡回連絡、防犯・防災指導、あるいは駐車違反指導取締りなどは、むしろOBに担ってもらった方がいいのではないか。

終わりに
現在は、変化の極端に激しい時代だ。その根底に我が国の少子高齢化という社会構造の変化があり、情報技術の進歩を中心とした情報インフラの変化などを背景とした国境障壁の低下・喪失がある。
警察官の周辺も決して例外ではいられない。本稿では、賃金という切り口から今後の改革の方向性を探ってみた。
警察幹部を目指す者にとって、こうした分野への関心は欠かせない。幹部選抜の昇任試験でも、こうした問題意識があることが欠かせないのだ。

2014/4/1 ベスト4月号 巻頭言

改めて感じさせられた命の重さ
〜東日本大震災に学ぶ~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

東日本大震災の被災地を訪れるたびに、改めて、人間の命の重さを感じさせられる。

釜石東中学校の村上洋子副校長の、発震直後に取った対応は地元の人々に感謝されている。地元の町内会長は「神の声」だったとも語ってくれた。村上先生が我に帰った時点で、最初の激しい揺れから10分ほどが経過していた。先生は、「逃げろ」「整列も点呼もいらない」「すぐ逃げろ」と、教室を回って叫んだ。教職員は、あらかじめ指定されていた地点に向けて走り出した。この様子を見た隣りの小学校の教職員や父兄が続いた。
その直後、大津波が襲来した。津波の襲来は発震35分後だったというから、正に間一髪だった。村上先生の「神の声」によって、釜石東中・小学校の全員600人あまりが無事だったのだ。

釜石では、「15分ルール」を新たな教訓として提唱している。経験的に、釜石では大地震の後、30分ほどで津波が襲来する。だから、揺れたら、誰かを助ける時間は15分しかない。15分で助けられる者を助ける。15分で助けられない人は助けられない。助けに行っては自分も助からない。
時間がない。「救うのも逃げるのも命がけだ」ということだ。「生きて胤(たね)を残す」ということも聞いた。復興するにも、生き残ることが前提。何としても、生き残って復興してくれ。「15分ルール」には、被災地でなければ生まれない命の叫びを感じさせられた。

自然災害への教訓には、犠牲者の命の重みがこめられている。犠牲者の声を感じることから貴重な教訓を学ばなければならない。
私たち日本人は、忘れるのが得意だ。過去はきれいさっぱり水に流すことを良しとする。また、辛い思い出は、早く忘れたいという傾向が強い。辛い過去の痛みは忘れたいというのは分からないでもない。でも、忘れてはならないものがある。地震も津波もまた必ず起きるのだ。目を見開いて自然の力の大きさをしっかり焼き付けておかなくてはならない。犠牲者の声なき声を聞き、子孫へと、その教訓をしっかり伝えなければならない。

危機への対応力は、生きていくものにとってもっとも重要なものだ。ゲームばかりに夢中になっている子供達に体力をつけることの大切さを、社会全体で教え込まなければならない。災害を生き延びるには、何をおいても健全な心身を持っていることが肝要だ。生きていなければ復興も何も始まらない。
被災地・釜石市の皆さんに、「命の大切さ」を改めて教えられた。

2014/3/1 ベスト3月号 巻頭言

警察活動での女性への期待
〜チャレンジ精神が欠かせない~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

女性が警察活動でより大きな役割を担うことによって、国民の警察への評価が高まることを期待している。そうした視点での女性の貢献に期待とエールを送りたい。
わが国の真に男女平等な社会実現への意識改革で、警察での改革が大きな役割を担うことに組織を挙げて取り組むことを期待している。
警察が男性中心の組織であったことは疑う余地がない公知の事実だ。その良さを失うことなく、女性の活躍で警察への国民の評価をより高めることが肝要だ。そのために女性自身の覚悟も欠かせない。また男性職員の理解と応援ももちろん欠かせない。
本誌ではあえて、これまで必ずしも論じられることのなかった視点から提案をしてみたい。関係者の、女性警察官の活動への様々な検討に際しての話題を提供し、できれば具体的な改革への参考になれば幸いだ。

1 交番勤務員として女性が求められるようになるために~欠かせない女性警察官の覚悟
盛り場でのごたごたで女性警察官が臨場処理する。その能力が欠かせない。そのための覚悟も必要だ。女性警察官に男性の同僚に任せるという意識があってはならない。
もちろん、男性と女性にそれぞれの特性があることは当然の前提だ。しかし、同時に、世間一般に、交番に女性警察官がいるよりも、男性警察官がいた方が頼もしいという評価が存在していることも否定できない。
私の女性警察官に対する期待には、そうした世間の評価を変えてやるという強い気持ちを、女性警察官に持ってもらうことが含まれている。
警察組織を挙げて女性の働きやすい職場作りに努めることが前提だ。世間が警察は本気だろうか、単なる建前だけではないのか?どうだろうか?……と、半信半疑で見ている。
警察の本気度を結果で示してもらいたい。
そのためには、あえて、女性警察官にその覚悟を真っ先に期待したいのだ。

2 逮捕術での男女別を廃止してはどうか
犯罪者は警察官が男性か女性かを区別してはいない。犯罪現場は警察官の性別にお構いなしだ。そこで、警察の逮捕術も男女別を廃止してはどうか。警察官の意識改革のためにも、検討してみてはどうか。
女性警察官も男性警察官と対等に対峙することで、現場感覚が磨けるのではないか。
アメリカでは、逮捕術は犯罪現場の実態に合わせ、男女を区別しないのが一般的だ。しかも、女性警察官は男性警察官と対等に戦っているという。
女性警察官に、体力的にハンディキャップがあることは分かっている。しかし、だからこそ、それを乗り越える工夫がなされることになる。それが現場での実践につながっていくことと信じている。

3 勤務評価での実績評価を再検討~女性警察官のマイナス評価をあえて加えよう
女性警察官に対して様々な評価が聞かれる。その中には偏見も少なからず存在するだろう。そこで、あえてそれらの女性警察官へのマイナス評価を拾い上げて、勤務評価に取り上げるようにしてはどうだろうか。
逆療法かもしれないが、かえって警察という職場全体での意識改革には早道ではないだろうか。
よく聞かれるのは、例えば、女性は「マニュアル通り」で、「状況判断での柔軟性」に弱い、「困難に立ち向かう積極性」に欠けるなどといったマイナス評価がある。ならば、状況に応じた「判断力」、あるいは、「進んで困難な役割に臨むか」などを、勤務評価の項目に入れるべきだ。
そうすることで、真の男女の職場での相互へのわだかまりを解消することができるものと信じるゆえだ。

4 副署長などを原則男女職員から任命
急には難しいだろうが、将来、できれば男性副署長と女性副署長を任命するようにすべきではないか。そうすることで警察の本気度が示せる。
真に男女の平等な職場にするには人事の形で示すことが欠かせないと考えるゆえだ。

最終的には、「女性警察官」という言葉がなくなることが目標ではないか。警察官という職業があって、それがたまたま男性だったり女性だったりということだ。
とんでもないという意見もあるだろう。しかし、そうした本音の議論をすることが、極めて肝要だ。

2014/2/1 ベスト2月号 巻頭言

職業としての警察官
~親子二代目の警察一家の夢~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

最近、警察官2世が増えているそうだ。中には3世という人も少なくないとか。
子どもの頃から警察官という職業を身近に見て育っていることで、よく分かった上での選択だから、こんなはずではなかったという途中で挫折する可能性が低い。採用担当者にとって、そうした意味で安心感があることは事実だろう。今月は、そうした警察一家を巡っての諸問題を取り上げてみたい。警察官という職業を考える1つのきっかけとして、できれば関心のある方々からの意見を寄せて頂ければありがたい。

最近、警察官にあこがれる子供が増えている。小学生を対象に、大人になったらどんな職業に就きたいかと尋ねたら、男子は「サッカー選手」(11.7%)が一番多く、次いで「学者・博士」「警察官」(いずれも6.1%)、「野球選手」(5.8%)「テレビ・アニメ系キャラクター」(4.0%)だったそうだ。女子に関しても「警察官」(2.6%)が8位、とベスト10に初登場したのも大きく注目される(第一生命2012年夏休みこどもミニ作文コンクールアンケートより)。
長年男子のトップだった野球選手の人気が落ちて、警察官ががぜん人気の職業に急上昇という感じだ。
おそらく、東日本大震災などでの警察官の人を助けるために必死に働いている姿が強い印象を残したのだろう。あるいはテレビドラマの刑事ものの影響だろうか。

私は、多くの子どもを取り巻く環境が安全安心な社会というものではなくなってきたのではないかと危惧しないではない。いわゆる「体感治安の悪化」ということだ。子どもは、子どもながらに、現実社会の中でさまざまな事象の影響を受けている。悪い人がいるから注意しなさいといった注意を受けることもあるだろう。そうした環境で、警察官になって悪い人を捕まえるぞ……といったことを考える子どもも増えているのではないだろうか。

いずれにせよ、警察官の人気が高まっていることはご同慶の至りだ。

子どもは親の姿を実に良く見ている。「背中で教える」ということはそうした意味でも本当だ。子どもは、間違いなく、皆さんを見ている。このことを忘れてはならない。たとえ疲れていても子どもにはちゃんと向かい合いたいものだ。
そうした結果として、読者の皆さんのお子さんの中から、「将来、お父さん・お母さんのような警察官になろう」という子も出てくることだろう。

子どもが「警察官になる」という意思を抱いた子どもの親は羨ましいともいえる。少なくとも憧れの対象としての親であったということだから。

子どもと仕事の話をするべきだろうか。してもしなくてもいいだろう。子どもは親との遊びの中ででも、さまざまなことを感じているということだ。

さて、勉強する親の姿を見ている子どもさんは、私の知っている限り、良く勉強する警察官になる。当然のことながら幹部になる可能性が高い。そうした意味で、親は子どもへの影響ということでも責任があるようだ。小誌愛読者の皆さんはそうした意味では自信をもっていいのではないか。

子どもが警察官を志望したら、親としては、子育ての成功を確信していいということだ。「厳しいがやりがいがある職業だ」といったひと言で十分ではないか。そうした将来の夢を目指して、今回の勉強こそ、必勝を期して頑張っていただきたい。弊社としては全スタッフあげて皆さんの成功を祈っている。

2014/1/1 ベスト1月号 巻頭言

警友の皆さんへの年頭のご挨拶
~“ リセット上手 ” たれ~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

警友・会員の皆さん、新年明けましておめでとうございます。どのようなお正月をお迎えでしょうか。皆さんおそろいで健康に新年をお迎えのことと思います。本誌を目にされている今は、新年も数日過ぎているのでしょうか。そろそろ正月気分を払拭しなければという方もいるでしょうか。きっと、新たな一年の勉強初めということでしょう。本年の勉強初めに、改めて、新たな年のご挨拶・エールをおくります。
24 時間、365日休むことのない警察という仕事の性質とはいえ、新たな年を迎えるこの季節は特別な感慨を覚えるのではないでしょうか。 しばし、来し方行く末を思い、新たな決意をする絶好の機会であることは間違いないでしょう。今日を、本誌とともに、今年の新たな第一歩を踏み出す日にしてください。

どなたにとっても、個人として、上手にリセットすることが肝要です。とかく安易な方への誘惑に流されやすい我々にとって、リセットは、極めて大切な心得なのです。ただし、肝要なことは、リセットするたびにそれまでの経験に学んでリセット上手になることです。ほかの誰でもない、自分というパートナーこそ一生付き合っていくしかない永遠の相手なのですから。自分の性質をよくよく見極めて、楽しく付き合って行きたいものと、かねがね、私は考えています。怠惰な自分とあるべき自分 が仲良く付き合っていくという現実。あるべき自分に向かってのリセットの繰返し。そのリセットの最大のチャンスが新年です。私は、それを70回も繰り返してしまったのですが……。皆さんもリセット上手にな ってください。

大学の教壇に立ち学生と接している立場からみた警察官は、大学生の憧れる存在です。警察官という、人のために直接役に立てる職業に就きたい。東日本大震災の際に被災者の救援に頑張る警察官の姿には強烈なインパクトがありました。そして今、若者は皆さんに憧れているのです。 胸を張って任務に立ち向かってください。「一隅を照らす」という警察官の原点を体現していただけることをお願いします。

皆さんの中にはあるいは採用試験に合格した日の感動を忘れてしまった人もいるかもしれません。しかし、間違いなく皆さんは大学生の憧れる存在なのです。警察官として警察学校の門をくぐった日の感動と決意を思い出してください。そして、それぞれの目指す警察官としての姿に向かって歩み続けてください。今年をそうした歩みのリセット元年にしてください。

まずは、目標を立てることが、全ての始まりです。たとえ三日坊主であったとしても、3 日間の努力の意味があります。要は、それを伸ばしていくということ。どうしたら伸ばせるか。今はたとえ三日坊主であっても、自分と真正面から向き合い、自分という運命的パートナーとの上手な付き合い術を身に付けたいもの。
今年は、全ての面で明るい希望を感じさせる年ではないでしょうか。スポーツ界には明るい話題が多いようです。先ずは、サッカーのワールドカップがあります。盛り上がることでしょう。昨秋の2020年オリンピック招致成功は明るいニュースでした。今は、年改まって、開会まであと6年ということです。警察にとってもオリンピックを見据えての諸準備が本格化することになります。景気に関しても、アベノミクスと いうことで、打ち沈んだ長年のデフレマインドが転機を迎えるチャンスでもあります。是非、このチャンスをつかみたいものです。

オリンピックを皆さんはどういう形で迎えたいですか。この機会に思い描いてみてはどうでしょうか。その夢を目標にして、今日から新たに頑張ってください。

そして、個々人にとって長年の夢を実現させること。皆さんにとって、お一人、お一人の夢をかなえる年です。是非、そうあってほしいと、本誌スタッフ一同、心から願っています。

何事も念ずることから、夢を描くことから始まるものです。それを自分にとっての計画にし、決意して、立ち向かうことになります。新年はその絶好のチャンスということです。

2013/12/1 ベスト12月号 巻頭言

治安の良さは我が国最大の宝物
~警察官への誘い・君の参加でさらに磨き上げよう~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

去る9月7日の第125次IOC総会において、東京がイスタンブール、マドリードを抑えて選出された。言わずと知れた、2020年開催が予定されている夏季オリンピックの話である。あの日を境に、世界の視線は日本に集中しており、その注目度合いはオリンピック開催まで途切れることがないばかりか、うなぎ上りに上がっていくだろう。

ふと考えてみた。人間はどんなところに住むのが幸せなのか……と。日本に生まれ育った私は、本当に良かった……と思っているが、子孫達も皆そのように感じてくれるだろうか。そのためには今何をすべきなのだろうか……とも。

どこで仕事をするのかと考えた場合、重要なのは、ビジネスチャンスに恵まれた所という条件だろう。先祖達の住んできた田舎から都会に移り住んで、今では、大多数の人が都会で暮らしているのも、仕事に都合が良いから、というのが理由だ。ますます都市で暮らす人が増える見込みらしいが、将来は一体どうなるのだろうか。
どこに住みたいか。家族が安心して暮らせるという条件は欠かせない。安全と安心があってこその生活だから。その上で、子供の教育環境を含む生活環境の良さが挙げられようか。仕事に有利な所、多くは通勤の便なども欠かせない。いやむしろ仕事があって、通勤に便利な所という順番で住居が決まっているのが実態ということか。

我が国の治安が良いことは、日本人にとっては、当然のことのように受け止められてきた。それが20世紀最後の10年の「バブル崩壊とそれに続く不況」によって、日本人の安全安心への不安が芽生えた。今は一応の落ち着きを見せたとはいうものの、安心という「体感治安」の方は未だ回復途上ということだろう。

日本人という視点を外して、世界の人々がどこでビジネスを展開し、どこに住むことになるのかを考えてみよう。日本がそうした外国人に選択される所になれるようにするためにはどうしたら良いのかということだ。

我が国の人口が長期低落傾向にある中、外国人によって、暮らしたい所として日本が選ばれるようにすることは、非常に重要なことだ。その際の条件として、治安の良いことが重要な要素になることは疑いがない。

四季の変化、自然の多様性、食べ物のおいしさ、人々の穏やかさなど明らかに有利な要素が備わっている。これに治安の良さがさらに重要な要素として考慮されるように思えてならない。

2100年の世界はどのようになっているだろうか。人口はアフリカ諸国などを中心に増え続け100億人ほどになっていると予想される。食糧や水などの不足やそれに伴う争奪が、国家間の対立要因となるともいわれている。相変わらず争いや懸念が絶えない可能性が高い。となると、それらの要素を前提とした、安全で安心な所ということが一層重要な関心事項になっているだろう。

警察官という仕事は、ますます重要性を高めていくことは間違いない。安全と安心の第一線での担い手となるのだから。若者には、警察官の仕事の重要性、警察官という職業のやりがいへの確信を持って、警察官への門をたたいてほしい。

現役の警察官の皆さんには、警察官に寄せられる、国民の期待の大きさを忘れないで頂きたい。警察官であることがいかに意義深いものか。既に警察官になっている人にとっては、ついつい忘れがちになる。人間とはそういうものだ。最初に警察学校の門をくぐった日の緊張を思い出して頂きたい。その晴れがましい興奮とともに、警察官としての日々を夢に描いたことを。

2013/11/1 ベスト11月号 巻頭言

人生の同伴者
~座右の銘~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

座右の銘とは、人生の友・同伴者だ。暗闇の中の導きの灯火であったり、暖かい励ましやお叱りの鞭にもなる。そうした意味で、私の例を交え、座右の銘を考えてみたい。昇任試験とは試験だけの勝負ではない。日常の仕事の仕方や生き方こそが大きな意味を持っている。座右の銘は、自分の心の中に存在する自分だけの最も大切な宝物ともいえる存在だ。

「易きを避けて難きに付く」という言葉に出会ったのは中学3年生のときだった。かれこれ半世紀の同伴者だ。お疲れさん……と声を掛けてやりたいといった感じでもある。意味は、どっちにしようかと迷ったら、難しい方を先ず考えてみよといったこと。通常、人間は楽な方に流されがち。だから、難しい方を優先的に考える位でちょうど良い……といった風に解釈している。

郷里青森で所属していた心身鍛練団体(月1回ペースでハイキングなど野外活動をしていた)の多数ある誓いの言葉の1つ。それは明治時代に結成された伝統を誇る‘結社’だった。所属員は皆、結社と称していた。集まるたびに数多い誓いの言葉など唱和していた。不思議なものだ。度々唱和している内に、頭の中に堆積し、今では血となり肉となって、あたかも体の一部のように感じられるようになる。
座右の銘とは、心に響いた言葉ということだ。どこかでそうした言葉に出くわしたら、手帳など身近なものにまめに書き留めておくことだ。そうした中でも、特に気にいったものは、目に付く所に貼っておくのも良いだろう。手帳などに書き留めてそれだけのものもある。長い付き合いになるものもある。年を経ての付き合いは味が出てくる。言葉も同じ感じだ。座右の銘とはそうした結果、離れられなくなったものだ。
私の場合、駅などでエスカレーターを避け階段を上るとき、心の中でこの言葉がにっこりほほえんでいる感じがする。ウオーキングのルート選択でも、遠目の目的地に向かわせるのも。寒い朝、暖かいベッドから離れ難い気持ちを断ち切ってくれることも。結果としては、たいていは、そうして良かったと思えるものだった。このように日常の中、普段着で付き合う言葉の同伴者となっている。

「‘言’必ず真、‘約’必ず守る」という言葉も、同様の同伴者だ。意味は文字通り「嘘付くな、約束は守れ」ということ。信用がどれだけ大切かは改めて言うまでもない。
時には逃げたいこともある。しかし、逃げ出したら切りがない。その内に逃げ出す口実を探すのが上手になろうというもの。しかし、他人にそうしたうそは容易にばれる。長い目で見れば、歯を食いしばってでも頑張った人にして得られるものが大きい。一時の誘惑に負けてはならない。
特に警察官という仕事では信用・信頼が命だ。職場の上司・同僚との間での彼(彼女)に任せておけば大丈夫という評価は全ての根底だ。‘言’必ず真、‘約’必ず守る。彼(彼女)がやると言ったのだから安心だ……という存在でありたい。

人間の評判というものは、突き詰めれば、その人の生き方そのものだ。日常的な生活や仕事の仕方が積み重なったものだ。
昇任試験も実は同じことだ。試験当日の一枚の答案、短時間の面接。それは1つの手段としてのセレモニーに過ぎない。その前に職場では評価がなされている。日常の仕事ぶり、それだけでない日常の話し方や受け答えといったもの。それらが集大成しての評価となっていく。実はそれが最も重要なのだ。人生とはそういうものだ。退職して20年にもなろうという最近になってそんなことを考えている。

皆さんにも座右の銘があるだろう。自分自身の座右の銘と日々向き合って付き合って頂きたい。また、新たな座右の銘を探すといった前向きな気持ちで臨んで欲しい。そうしたしなやかで積極的な気持ちの延長線上に、目指す高みが近付いてくるものと信じる。

2013/10/1 ベスト10月号 巻頭言

法律は実務で学ぶ
〜納得し自信を持つ要領~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

法律を本だけで学ぶには限界がある。本当の学び方は仕事の中にある。そこが理解できればしめたもの。法律を自由自在に操れるようになる。少なくとも法律が面白くなって、苦痛なく学べるようになる。仕事を通じて楽しみながら法律を学ぶコツを紹介しよう。

1 疑問を持ったら法律書や辞書を引く
何でも疑問をもったらとことん根拠に当たることだ。漢字でもなんでも一緒。読み方でも書き方でも、どんなことでも疑問を感じたら即座に辞書を引くことだ。辞書を引く習慣を身に付けるだけで、どれほどの宝に相当するかは計り知れない。
そのためには、まず、辞書を身近に置くことから始まる。職場や自宅(居間や勉強部屋など)に置いておけば、疑問が生じた時に見ることができる。早い話が置いておくだけでいいのだ。いつでも見ようと思えば見られるという意識が大切だ。

2 積読(ツンドク)
辞書から始まって、必要な本を生活空間の中に積んで置くだけで意義がある。本は読むだけではない。身近に置いておくだけでも良いのだ。本のある日常であることが意味を持つ。
今ではネットの有効活用に置き換えることも可能だろう。どんな手段でも良いから、辞書や本が有る生活を送ることが肝要だ。

3 取り扱った案件を詰めて考えてみる
例えば、カードの紛失届。そのカードが既に使用されていたりして、窃取された可能性が高い場合にも紛失届でいいのか。特定の店で繰り返し使用され、犯人が捕まる可能性が高い場合はどうしたらいいか。比較的簡単な紛失届受理取扱であっても様々な疑問が生じる。
法律、規則、取扱要領など関連の根拠も少なくない。時間にゆとりの有る時に、例のような疑問にとことん付き合ってみたらいい。

4 なぜそうなっているのかと考える。話し合える相手を見つける。
単に、法律がどうなっているのかを覚えることにとどまっていてはならない。大切なことはどうしてそうなっているのかと考えることだ。できれば誰かその問題についてディスカッションできる相手を見つけたい。そうすることでより深い理解が可能になる。
特に変更・改訂があった場合には、どこがなぜ変更・改訂されたのかと徹底的に考えてみるべきだ。そして、分からないことは、聞くことだ。聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥。聞ける人がそばに居ることは財産ということだ。

5 調書など書くことへのこだわり
作成した書類は徹底的に読み直す。もちろん、模範的なひな形も読み直すことだ。可能ならクリアファイルに保存しておき、折節に読み直してみる。犯罪事実の書き方、報告書の書き方など、実務で作成する書類にこだわりを持ってもらいたい。
いったん作成したものを見直すことは良い勉強になる。作成し終わったら一件落着・お終いとする……のではなく、次への更なる踏み台とすべく見直すという姿勢が肝要だ。書類にこだわりを持つ人は伸びる。犯罪罪種別に模範的な調書などを勉強すべきだ。
何事も、最初はまねから始まる。模範例を何度もまねることによって、要領が飲み込める。そのような心構えを持っているのといないのとでは、行き着く高みが“月とスッポン”の違いになる。

6 模範とする先輩を見つける
職場で目標となる先輩を是非見つけてほしい。実務で学ぶための最高の方法は、生きた生身の先輩を見つけることだ。事案の処理から勉強の仕方まで、実在する先輩に勝るお手本はない。
本などでない実在の先輩。徹底的にその先輩から盗むべきだ。あの先輩ならどう振る舞うかと考えてみたくなる先輩の存在は重要だ。まねたい先輩が居るということは、やがていつの日か、自分がその先輩のようになれるということだ。後輩から見ればあなた自身が、目指すべき目標とされる先輩となるということだから。

7 生活の中に考える時間帯を設ける
仕事は忙しいだろう。そうした場合でも、寝る前の30分は工夫できるかもしれない。今日扱ったことを反省し、明日の段取りを立てる。朝起きたとき、今日の段取りが有るのと無いのとでは大違いだ。それが毎日となると、その蓄積は大きい。
健康のために一駅歩くというのと同じことだ。毎日の生活の中に前向きな改善を組み込みたい。仕事を考える時間であれば、それはものをいうことになるというもの。

いずれも「なーんだ」といったものばかりだったろう。そんなものなのだ。奇抜なものはない。王道をこつこつ歩んで行くことだ。納得して、日常生活の中に習慣となるまで身に付けることがポイントだ。自分自身が納得でき肯定的に自信を持って生活できること。それが一番だ。

2013/9/1 ベスト9月号 巻頭言

転がし運営術
〜上級管理論文のポイント~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

本誌アンケートではその後も管理論文への注文が少なくない。警察界で模範的な管理論文が見られないという現実を反映しているのかもしれない。ある意味で金縛り状態、受身での対応で精一杯という状況は否定できない。そうであるだけにもっと本音の管理論が議論できる雰囲気になることを期待したい。少なくとも上級幹部を目指す皆さんはそうしたレベルの気概を込めた論文を披歴してもらいたい。高得点となることは請け合いだ。
いわゆるあれはダメ、これはダメの禁句の寄せ集めで警察の管理が改善するとは誰も信じてはいないだろう。積極姿勢での、こうしたい、という肯定的な管理の意欲を示すべきであり、各自のこうしたいという積極的な提案を柱にすべきだ。昇任したら自分はこのような幹部になりたい、と。その際に以下の諸点を参考にしてもらいたい。

1 「転がす運営」
組織の長としての運営にあたり、まず何よりも係員全体に目標を持たせたい。組織としての目標は、窃盗犯検挙何件というものでもいいし、他の係との競争に勝つといったものでもいい。係員全体にそうした意義を理解させ、皆で盛り上がる。目標達成の暁には祝賀会でもとはいかないまでも、可能な限りの報賞を行いたい。
誰しも否定形でない、目標へ向かった元気の出る職場で勤務がしたいのだ。幹部としての皆さんはそうした気持ちをどのようにして演出するかを語って欲しい。幹部とはオーケストラの指揮者なのだ。指揮者は団員一人ひとりの体調から性格までを見極める目が勝負だ。時には大げさな渾身の演技で団員の心をわしづかみにする。一人ひとりに目配せする。手も指も、時には体全体を使って指揮者の気持ちを団員に伝える。こうした人心掌握術は職場の管理者も同じなのだ。私はこうした運営を「転がす運営」といっている。組織全体が目標に向かって突き進むイメージだ。
一人ひとりには悩みもあれば調子の良くない時もある。しかし、そうした個別の要素を大きく包んで、組織全体は大きな集団として、転がっていくという感覚的なとらえ方だ。車の運転での車両感覚という認識に近い。

2 語りかけ
幹部の根底は部下に対する語りかけにある。もちろん、黙って背中を見て来いといった管理もある。これはよほどの力量のある幹部にして使い得る上級の管理術だ。そうした例外は別にして、基本は語りかけだ。
いかに効果的に部下に語りかけるか。その思いで研鑚しているというトーンの決意表明を薦めたい。一人ひとりの部下同僚などの観察、声かけへの反応。さまざまな積み重ねで、こうした同僚・部下の掌握力を磨いていくのである。
適時適切な声かけ、特にその効果の確認。こうした幹部になる日のための準備状況を披歴するのだ。

3 具体的不祥事など
経験した不祥事などを取り上げ、その検討から、特に問題点を抽出する。それらは、積極的な提案の下、目指すべき「転がす運営」によってこそ、防止することができる。自分は是非そうした運営を実践したいと決意を語って欲しい。

4 性善説か
否、性善説ではない。組織として排除しなければならない人はいる。しかし、それは最小限にしたい。暖かく包み込みながら、しかし、決断する時には厳正に。信賞必罰の必要性を確認すべきだ。

5 個人としても目標を
若い人はワークライフバランスを重んじる傾向を強めている。これは肯定すべきだ。その上で、個人としての目標を見つけさせ、それを支援するという職場の雰囲気の醸成に努めたい。

管理論は尽きる所、あなたの幹部としての資質を見極めたいという意図で出題されている。そうした意図を理解して、誠実に自分の言葉で決意を語ることだ。採点者の胸にすとんと落ちる解答が最高の管理論文といえる。

2013/8/1 ベスト8月号 巻頭言

合格するための受験準備
〜面接ポイントアップのために〜

 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

何事にもコツがある。コツは所詮コツだが、知ると知らぬとでは天地の差がある。そこで、今回は合格のための受験準備の日常的な心得のポイントを披露してみたい。特に面接でのポイントアップという視点だ。

1 知識は基礎・基本の勝負
最初から、コツらしくないことでガッカリかもしれないが、基礎・ 基本が一番肝心だ。警察法、警察官職務執行法、刑法を始めとした警察官としての基盤をなしている法律・規則などの本や知識を常に目に触れるところに置くことを薦める。自宅の机の上に置き、手帳の扉などに書き写しておく。教科書があれば一番いい。折節に触れ、繰り返し読み返す。教科書がなければ、それに代わる自分にとって使いやすいもの。警務要鑑は赤線を入れた座右の書としてほしい。急がば回れ。足下固めから始めてほしい。何事も王道に勝るものはない。面接でモノをいう知識は、基礎・基本が中心なのだから。話すことの要所要所に基礎・基本の理解度を示すことが要諦だ。

2 字を丁寧に書く
受験関係書類はもちろん、答案や普段の作成書類すべてに関して丁寧な書き方を心掛けよう。面接においても様々な形で字が見られている。一番身近な氏名、それだけでも思いのほか、様々な印象を与えている。常に今書いている書類を見た時の相手の心理を想像してもらいたい。どうにもこうにもならない汚い字で書き殴られたという印象では好意的採点は望めない。字の上手下手は仕方がない部分があるがそうとばかりは言っていられない。繰り返しになるが、自分のいない所で、自分が評価されるのは、書かれた字を通じてだということも、忘れてはならない。手を離れた瞬間から文字は自分の代理人といってもいいのだ。肝心なのは下手でも丁寧に書くことだ。丁寧に書かれてさえいれば、好感度は増す。達筆であることに越したことはないが、それは誰にでも望めない。しかし、より見やすく丁寧に書くことは練習しさえすれば習得可能だ。書き方に関する練習ノートなどもあるのでやってみてはどうか。

3 身だしなみ
出かける前には鏡を見ること。鏡に映された自分の姿を見て、髪、ひげそりから身だしなみ万般をチェックしよう。人の印象は大切だ。毎日そうした心得で過ごしていることの蓄積は思いの外、大きい意味を持っている。面接試験の日にはさすがに、誰だって身だしなみに気をつかうだろう。実は普段の身だしなみが同様に肝要だ。職場での皆の評価が警察官昇任試験には集大成されている。身だしなみは常日頃からが肝要だ ということを忘れないで欲しい。

4 相手の鼻周辺を見て話す
下を向くのもダメ、上もダメ、さりとてにらみつけるのはもっとダメ。面接の時の目の置き場は難しい。自然体で良いのだが、試験となると緊張する。普段から、話すときには相手に正対することだ。相手が話している時には集中して聞く。とりわけ話す時には、相手の鼻周辺に視線を置く。会話というものは、理解し理解してもらうという相手とのコラボレーションだ。そうした心得での普段の訓練が肝要だ。

5 分からない場合の対応
尋ねられた質問にすべて対応できるとは限らない。そうした時にどう答えたらいいのか。どぎまぎしてみっともない対応をしてしまってはお終いだ。質問の周辺の事項を明確にする要領で、「ご質問ですが、 ○○ということでしょうか」など、聞き返す準備などしておきたい。その上で、基礎・基本の知識で答え、状況によっては「詳細は勉強不足です。すいません」とでも答えることになろう。大切なのは、そこまで腹をくくっておくということだ。そうすれば過度に動揺せずに乗り越えられる。

6 あがり防止対策
人間誰しも緊張したり、あがったりするものだ。時に、過度に反応してしまう人がいる。こればっかりは万人に利く即効薬はない。自分に合った手段を見つけるしかない。 歌手や俳優など、手のひらに「人」の字を書いて飲み込んでから舞台に上がるという人もいる。試験官も同じ人間ということだ。偉そうに怖そうに見えるのは、こちらが緊張しているからだ。私は、鏡に向かって、「あんたは偉い。そこそこ格好良いではないか」ではないが、自分で自分を多少おだてると意外に効果が有るようだ。方法は人によって異なる。自分に合った落ち着くおまじないでも探してほしい。


以上、要約すれば、普段から面接試験のことを考えて置くこととなる。 考えれば何かの備えができる。その積み重ねだ。受験はそうした日常の延長にある。

2013/7/1 ベスト7月号 巻頭言

率先垂範タイプを目指せ
〜昇任試験での“ 暗黙知 ” の重要性〜

 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

昇任試験で本当に見極めようとしているのは何だろうか。昇任試験を担当している側の本音の考え方を理解してかかることが極めて大切だ。受験する側の皆さんとしては、当然のことながら、一つでも正解を増やして得点を上げることにどうしても目を奪われがちだ。しかし、試験実施者が見ているのは単なる得点ではないとしたら......。もちろん、試験なのだから高得点であることを目指すのは当然だ。そこで高得点の中身の話となる。昇任試験の採点は、単なる知識を見ているのではないのだから。本号ではそうした微妙な問題を扱ってみたい。私の経験に照らせば、そこが死活的に重要になる。

まずは、分かりやすい文字・文章に関しての話から始めよう。試験での差は、特に何がしかの文章を書く場合に端的に現れることになる。まずは丁寧な書き方になっているか、ちゃんとした思考ができているか、 冷静な論理展開ができているか。......といったことがきわめて重要な採点ポイントになっているのだ。時にそれらの採点基準は明示的であるというよりは暗黙の了解事項として機能している。言い換えれば、採点する側がピンとくる、自然に加点したくなるということだ。面接では真にその点が見られているのだ。率直に言えば、チームリーダーとして任せられるのかどうか、大丈夫かいということだ。巡査部長は兄貴として、警部補はプレーイングマネジャーとして、職場の空気を決めることになる。それを任せていいのか......という点を見極めようとしているのだ。

書く文字が、部下・同僚の範となれるか、少なくとも丁寧に書こうという姿勢は示さなければならない。大丈夫ですよ。お任せください。しっかり後輩を指導していきますよ。そうした気持ちを答案用紙にちゃんと表現することだ。もちろん、普段の執行務で作成する書類は極めて重要だ。試験の時だけ丁寧に書けばいいというほど甘いものではない。普段の職場での評価がついて回るのはもちろん、普段の癖が答案に現れないわけはない。職場で求められる公文書作成の基本に基づいた文章でなければならな い。この点は特に注意すべきだ。作文でも公文書作成のつもりでピシリと決めたい。書き出しの1字空け、文節の改行、句読点など、細部にまで神経を使った文書を心がけなければならない。職場にある暗黙知に注意しておくべきだ。警察署にも独特の習慣があるだろう。朝少し早く出勤して上司の机の上を拭く。ゴミ屑かごを空にする。これらの一般的なものから、その課独特のものまで、各職種にもさまざまな暗黙知がある。刑事には刑事の独特のカンもある。職人気質などといわれているものなども。こうした暗黙知に注意し、一つでも多くを我が物にして欲しい。仕事が出来るようになることはもちろん、職場内の上司、同僚からの評価が上がる。暗黙知とはそんなものだ。暗黙知の習得は、職場を愛し、職場に馴染むことだと言い換えることもできる。その中で最も重要になるのは、率先垂範力だ。言うよりも行動に出るタイプ。警察で好まれるタイプだ。職場での自らのイメージがそうしたタイプとなっているか。努めてそうした評価を獲得する心がけが肝要だ。

以上を集約すれば、警察官という職業を誇りとし、楽しんでいるということでもある。昇任試験実施者は職場を明るい雰囲気にできる幹部を選考したいのだ。昇任試験ではそうしたタイプは大歓迎される。面接試験では警察官としての誇り、警察官である喜びを語りたい。そういう暗黙知も忘れてはならない。極意といってもいいレベルの昇任試験の暗黙知だ。

2013/6/1 ベスト6月号 巻頭言

~警察官の定年問題~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

高齢化社会になり、会社員や公務員の定年が延長された。警察官だけがそうした波に背を向け乗り損ねることは、警察官採用面で人材確保が難しくなることから、警察官の定年も延長されている。
しかし、警察官の定年延長に対する問題点は少なくない。警察官にはその職務に求められる様々な条件がある。暴れる犯人を逮捕するという職務遂行を考えるだけで、必要な身体能力が求められることは明らかだ。高齢になれば体力の衰えは避けられない。では、その条件を欠いた者をどう処遇すべきか。配置転換か。一般職などへの職種変更か。そのいずれにも多くの問題点がある。それらにどのように対処したら良いのだろうか。
あるいは、現状でますます増えていく高齢警察官の勤務に関して配慮すべきことは? 若い時は警察官として働き、本人の希望により早期に転職するという選択肢は作れないのか? 今回は、定年延長を巡る警察官としての様々な論点を考察してみたい。管理職を目指している者にとって、こうした大きな問題への関心は欠かせない。例えば、若くして警部試験を受けるというような際に、最終面接試験で決め手となるのは、こうした問題への見識なのだから。

1 何歳まで定年延長するのか
日本社会は、全体としてみれば60歳定年が定着し、さらに65歳定年への移行を模索している。警察も、現在は、60歳での定年後、交番相談員などとして再任用枠の創設・拡大を図っている。捜査指導官など、スタッフ的職務での事実上の定年延長枠も増やそうとしている。このまま65歳定年が一般的になっていく流れに付き合うのか、付き合えないのか。さらなる定年延長ということになればどうするのか。体力気力に裏打ちされた経験知の充実したピークは、40歳代後半だという見方がある。経験的にはそうした説に同意したい。とすれば、警 察署長など第一線の指揮官にはその年齢で就くべきだろう。現在のよう に体力の下降線に入ってからの署長就任でいいのか。 署長を終えてからのポストが限られるため、どうしても定年延長になるにつれ、署長など指揮官の就任年齢は高齢化している。

2 賃金体系
定年延長は賃金体系の変更を伴うだろう。多くの会社で、全体の給与負担を増やさないために、高齢者、例えば50歳以上の従業員の賃金引き下げが論じられている。定年延長と賃金体系見直し(高齢者賃金の引き下げ)がセットという流れだ。警察官も同様の流れに乗っていいのか。基本給と職務給を再構築する事によって、定年前でもよりフレキシブルな人事ができるように検討すべきではないか。例えば40歳代後半に署長をしているときは、その激務に見合う高額の職務給とする。署長を離れた50歳代では職務給が下がることもあり、そうなれば大幅に収入が下がるということも、受け止めるべきではないか。

3 交替制勤務・特に夜間勤務
交番をはじめ交替制勤務員は何歳までにすべきか。特に夜間勤務についていえば、ある程度の年齢以下が望ましいとなろう(例えば55歳以 下など)。問題は夜間交替勤務ができない年齢になった警察官の処遇だ。社会全体でそうした高齢者の職務開拓を検討し、警察官をそこに配していくようにすべきではないか。そのためにも55歳以降の現職警察官基本給を大幅に引き下げることもやむをえないのだろう。その引き下げられた給与との比較も警察官以外の職への転職の抵抗感を薄めることになろう。学校教育関連の安全安心、子供の非行といった各種相談窓口などは、高齢者の職として相応しいのではないか。

4 年齢でなく個別の健康状態や身体能力(体力)を考慮すべきか
例えば、警察官に求められる走力、持久力などの身体能力の基準を定め、その基準に達しない者の退職を求める。年齢ではなく個々の体力による定年制を考えるべきではないか。この場合、半年後や1年後の改善を加味して判定されるのが好ましいだろう。それでも基準に達しない場合は、警察官としては退官することになる。場合によっては、40歳での警察官退官もあり得る。制度設計時に、その場合の転職斡旋まで求められる。警察官としての職歴が評価される資格や、それを受け入れる社会とすることが前提となることはいうまでもない。 なお、こうした考えは欧米では主流といえる。転職や年金などとの総合的な調和が求められる問題なので、一概に良し悪しは論じられない。 しかし、考え方としては、あるべき選択の一つであろう。

5 高齢化社会における警察
これから我が国の高齢化がどんどん進むことは避けられない。その時代、例えば 2050 年には世界の人口は90億人となっている。2008年に1億 2,857万人でピークを打った我が国の人口は約9,000 万人、世界全体の1%といったところか。生産労働人口は半分の4,500 万人。65歳以上が4割。ほぼ、1人の労働者が 1人の高齢者を支える時代となっている。こうした社会における警察官の採用はどのような状態になっているのか。社会全体のありようを踏まえた想定をしておくことが肝要だ。2010年採用者が40年勤務したら 2050 年ということになるのだから。警察官として、もし70 歳まで働くというのであれば、体力の衰えをどのようにして補うのか。全警察官に対して、あらかじめ60歳代の配置先を踏まえた職務能力育成の準備をしておかなければならないだろう。

6 体力の衰える段階での職務
しかし、現実的には、他の公務員などの定年延長につれ、警察官の定年も延長せざるを得ない要請があるだろう。そうした前提で、体力の衰える中高年警察官の担うべき仕事のあり方を検討しなければならない。それには、若い段階からそれを前提として準備をしていかなければならない。こうしたことも考慮して、適任者を採用し、教育することになる。当然、これらのことを、転職も前提として考えなければならない。

2013/5/1 ベスト5月号 巻頭言

警察はどこまでカバーすべきか
~いじめ、DV、ストーカー等々~
 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

近年、警察に対し家庭内の問題に関して積極的関与を要望する声が拡大する傾向にある。いじめ、DV、ストーカーなど悪質な事例も続発して、警察としても放置することはできないという実情になっている。他方で、警察力にもおのずと限界があり、何もかも引き受ければどれも中途半端になってしまいかねない。物理的にも不可能だというのも本音だろう。警察力をどこに集中するのか? 今後、そうした現場の判断が強く求められることになるものと思われる。今回は、警察力の重点をどこに配分するのかという観点から関連する事項を考察してみたい。これは、幹部警察官としての見識が問われる格好の問題でもある。

1 広く市民の協力を得る
警察官として、特に幹部警察官としては、警察だけで処理するという 狭い発想であってはならない。常に、どうしたら市民の協力を得ることができるかという発想を持っているべきだ。広報はもちろん、あらゆる機会での挨拶や対話など、とにかく可能な限りの協力を得るべく最大の努力をしたいものだ。そのため、警察官は日頃から挨拶や会話の能力を向上すべく努力しなければならない。

2 関係機関の総力で
特に、関係機関の協力を得られるようにする方向での最大の配意も欠かせない。関連情報の提供はもちろん、日頃の関係強化への気遣いなどもできるだけ心がけたい。警察官は「コーディネーター」としての認識であるべきだ。関係機関にひょいと顔を出して、要望を聞くことも有効だろう。

3 いじめ防止は地域社会の総力で
例えば、いじめ。基本的には教育現場の先生方の頑張りが求められる。 警察は先生方を支援するというスタンスだ。まずは、先生方への積極的な支援姿勢。そして、先生方との日常の関係拡大の努力なども工夫すべきではないだろうか。いじめを疑わせる情報などは積極的に提供したい。そのためにも、警察が乗り込んできたと先生方に構えられてしまう関係でない、信頼関係の構築が欠かせないということだ。また、地域社会への情報提供への協力においては、できるだけ学校発の情報を警察が発信するのを手伝うというスタンスがいい。ほかに関係機関・官庁・団体などがある場合には、警察は可能な限り一歩引いて支援に回るという姿勢であるべきだ(警察の謙抑主義という)。

4 地域社会の再生
地域社会の協力という言葉が多用される。しかし、地域社会の協力なるものの実態が問題だ。地域社会が崩壊し、名ばかりで実態が存在していない場合もあるのではないか。遠廻りではあるが、警察は地域の絆の再生に向けた地道な協力・努力を惜しんではならない。安全安心の構築が警察の究極の目標なのだから。

5 孤独死
警察の問題という認識は低いが、孤独死は社会的には大きな問題として存在している。これこそ地域社会の慢性疾患だ。こうした問題こそ、警察としては関心を示し、側面から協力するという姿勢が肝要だ。 結果として、警察の情報収集力が向上することになる。結論としていえば、情報が勝負ということだ。警察は情報力の向上という目標を立て、地域社会の安全安心の要となるべく努力すべきだ。

〈結 論〉
警察は、主に情報を武器として、自治体を始め、学校や地域など、諸団体の安全安心を向上させる様々な活動への支援を強化していかなければならない。そして、市民の要望のあるテーマに関し、警察は可能な限りの応える姿勢を示すべきだ。

2013/4/1 ベスト4月号 巻頭言

半歩前の精神
∼昇任試験準備の心得∼
 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

年季の入った金言や格言の類には耳を傾けるべきものが少なくない。多くの人々の英知が凝縮しているからだ。それらの示唆する教えに独自の解釈を加えて、次第に自分のものにしていくことをお薦めしたい。年月を経て長い付き合いになればなるほど、あたかも人生の同伴者のような味わいも醸されて意義深いものになるのではないか。今回はそうしたことから、数ある言葉の中から「半歩前の精神」という気になるものを取り上げて考察・紹介してみたい。半歩前の精神という言葉から、どのように解釈を膨らませ、自分にとって心に響く言葉に練り上げていくのか。そうしたコツを感じ取ってもらいたい。

半歩前の精神とは、一日一日の努力の積み重ねの大切さを強調する本来の一面がある。「点滴(雨垂れ)石を穿つ」「ちりも積もれば山となる」などと同じ主旨。さまざまな状況下、一歩がダメでも、たとえ半歩であっても前進せよと。一歩はしんどくても半歩なら大丈夫ではないかとのさらなる励まし。半歩であっても、「とにかく前に」という号令だ。この最初の意味から派生して、一歩前ではいかにも「私やっています」と目立ってしまうような場合での、半歩なら人に気付かれずに前進できるという側面に注目したい。いかにも「やってます」というやり方ではなく、自然体のステルス(こっそり行う)前向きさということだ。ここでの半歩とは、あくまでも控えめな姿勢を示している。仕事でも、勉強でも、いかにも「私やっています」というやり方には、時には周囲の反感も生じる。さりげなさが良いということ。仕事にせよ、勉強にせよ、だまってさりげなく進める方が良い。前進しているかどうか、気付かないような前進。それが、半歩という意味だ。目立たないが、立ち止まっているのではない。たとえ半歩ではあっても前進しているのだ。そうした姿勢を半歩前の精神という。「はい、はい」と声を出して名乗り出るのではないが、やるべきことはちゃんとやっていく。目立たないが、頼りになる。

昇任試験の極意は、この半歩前の精神にあるのではないか。昇任試験は大騒ぎして派手にやるべきものではない。職場にあってはさりげなくありたい。同僚などの前では、半歩前の精神が好ましい。ギラギラしては浮いてしまう。職場で浮いている人の評価は高くはない。急がば回れ。目標に向かっての前進はし続けなければならないが、それが周囲から浮いてしまうことは避けたい。闘志が内にみなぎるという要領だ。半歩前の精神は大人の心得だ。そういう態度が保てる人は、上司から見ても頼もしい。いわば「クール」ということだ。熱いものは内に秘める。外見は冷静にして沈着ということ。自分を客観視できることは肝要だ。職場の中でどう見られているか。そうした感性の鋭さ・敏感さということ。鈍感な人が居る。周囲がどうみているかなどお構いなし。昇任試験で求めているのは、非凡な才能の持ち主ではない。警察という職場のさらに上の階級で、部下同僚をまとめてい ける人を求めているのだ。そこでは感性の豊かな人が良いことは疑いない。

相手の気持ちを思い量ること。日頃の仕事の仕方や職場での同僚などとの関係で、デリカシーさの感じられる振る舞いであること。こうした点は、昇任試験の前提になる日常の勤務態度や人物評価の中で重要な比重を占めている。求めるものは全て身近に存在するともいう。どこかに自分の追い求めるものがあるという「青い鳥」症候群は誰にでもある。青い鳥はどんどん逃げていく。既に手の届くところにあること(仕事や幸せなど自分が大切にすべきこと万般)に後半歩の努力を加えることこそが肝要だ。

逃げないで後半歩頑張ってみようではありませんか。自分が望んでいることから逃げないことが大切だ。逃げたい心が青い鳥の幻影を呼び込むのではないか。外はよく見えるものだから。その時、半歩前の精神を思い出してもらいたい。踏ん張った人だけが手にするものは大きいのだ から。頑張っていない人の誘惑の声は時に耳に心地良い響きがある。「昇任したっていいことないじゃないか」「責任が重くなるだけで、給与も大して変わらないし」などなど。心地良い言葉は危うい。身近な所にいる青い鳥の類だ。半歩前の精神とは幅が広く、意味するところの深いものがある。皆さんも心に触れるところのある言葉と付き合ってみてはいかがですか。

2013/3/1 ベスト3月号 巻頭言

法化社会
∼自己責任社会への覚悟∼
 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

法化社会とは、可能な限りの規制を緩和し(必要最小限の規制された範囲以外は)各人が自由に行動し、利害衝突が発生すれば最終的に法律によって決着をつける社会ということだ。紛争が発生したら法律にのっとって解決しようと人々が考えている社会と言い換えてもいいだろう。規制を緩和することで、できるだけ小さな政府を作る。そうすれば公務員も減らせる。公務員を減らすことでできるだけお金(税金)のかからない「小さな政府」を目指すという構造改革の考え方と表裏一体となる。法化社会を目指した現在進行形の改革は以下の3つに集約される。警察官として特に管理職を目指す警察官にとって、社会構造の変革の方向を理解しておくことが求められる。警部・警視昇任試験などでは欠かすことのできない論点だ。

1 裁判員裁判
2009 年、衆議院選挙人名簿から無作為に抽出された者が、国民の代 表として裁判に参加するよう裁判制度が改革された。裁判を国民の感覚 に近づけ、国民が裁判に関心を持ち、裁判結果を支持するようになることを目指している。裁判員法(09 年 5 月施行)に基づき、殺人罪、傷害致死罪、強盗致 死傷罪、現住建造物等放火罪、強姦致死傷罪、身代金目的誘拐罪など一定の重要刑事事件の裁判に適用される。原則として裁判員6人、裁判官3人で構成される合議体で審理される。国民の感覚が量刑に反映されることで国民の裁判制度への感心も高まるなど肯定的に受け止められている。国民の感覚の反映か、強姦致死傷罪で従来の判例より重い刑罰が課される傾向にあることが注目されている。終身要求される守秘義務など、裁判員の負担の大きさが問題点として指摘されている。これらは早急に制度を直すことが望まれる。国民が社会の安全安心の維持に参画することは、肯定的に評価されるべきと考える。

2 司法試験の改革
大学卒業後、法科大学院で原則として法学部卒業者は2年間、その他の学部の卒業者は3年間の専門学習を経て、司法試験を受け、法曹界へ進むことにしたものが司法試験制度改革の内容である(06年から新制度開始)。法科大学院が乱立したことで卒業生の司法試験合格率が低く、法科大学院の人気が下がりつつある。このため、法科大学院間での淘汰が進んでいる。司法試験合格者の適正数を巡っての議論も注目される(当初、年間3千人としていたが、弁護士サイドからの絞込みを求める声が強い)。法曹三者以外に、企業内法務担当者など法科大学院卒業者の進路を開拓・ 定着させることが課題となっている。警察官から法科大学院へ進学する、あるいは、法科大学院卒業者から警察官志望者がでるというような可能性も視野に入れて検討してみるべきではないか。

3 法教育
法や司法が身近になり、将来の社会を担う国民の法的教養・法教育の強化が求められるようになっている。学習指導要領の改訂で、小・中・ 高等学校で社会科・公民科を始めとし、道徳・特別活動等で法教育の充実強化が期待されている。法教育とは、法律専門家ではない一般国民が法的な考え方や法律の基礎知識・技能を学び社会生活に活かすことを目指している。約束を守ることの大切さや揉め事を解決する手段・方法などを実践することなどがその中身となる。 警察官としても法教育の充実にさらに積極的に参加していくべきと考える。小学校での警察官という仕事・役目の重要性の理解、中学校での 警察官へ協力することの意義・大切さについての理解、社会の安全・安心の実現には国民一人ひとりの協力・参加が欠かせないこと等についての理解を増進させたい。

4 まとめ
広報は国民に対する報告であり、国民への理解と協力は警察活動の最も重要な課題だということを忘れてはならない。法化社会という現在進行 形の改革は警察運営にとって国民と共にある警察実現の好機と確信する。

2013/2/1 ベスト2月号 巻頭言

警友諸兄への新年のご挨拶
~広い教養を身につける視点を~
 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

警友 ・ 会員の皆さん、新年明けましておめでとうございます。年末は例年の歳末警戒に加えて総選挙(警視庁では都知事選挙も)があったため、殊のほか忙しく慌ただしいままに新たな年を迎えたのではないでしょうか。

さて、年改まって新たな一年の始まりを迎えました。何もかも新しくなったようなこの新年というのは、来し方、行く末を考えるよい節目ということ。決意を新たに、それぞれの目標実現に向かうべく、新たな計画を立てる絶好のチャンスです。“一年の計は元旦にあり”という言葉は先人達の経験に裏付けられた普遍的な知恵というものです。皆さんには是非、今年が目指す昇任試験合格への着実な歩みとなるよう、勉強を生活の一部とする習慣を身につけることを提案します。毎日、一時間机に向かうという習慣こそ実り豊かな人生にする基本だと確信します。

その手始めに、身近にある新聞などを熟読することから始めてみませんか。実は、警察内部の教養資料だけが勉強すべき教材ではないのです。より広い視野に立っての勉強という視点が欠かせないと確信します。それが昇任試験合格への力量増進に大きな意味を持っているのです。手っ取り早く家の中を見渡してみるだけでも色々なものがあるのではないです か。その代表格が新聞です。特に元旦号などに掲載されている回顧と展望、今年の内外の課題など、特集記事は是非、熟読すべきです。経済や政治あるいは社会情勢、内政や外交あるいは各国情勢など、各新聞社の持てる力量を搾り出したような記事は格好の勉強すべき材料なのです。 普段の新聞でも、社説や囲み記事はどれも教材になるのです。皆さんが日頃接する部外の一般の皆さんは、誰も警察資料を見てはいないのです。大抵は、新聞やテレビから情報を得、考えているのです。その人々と様々な問題について会話が弾むような力量が警察官にとっては重要なのです。

一般の人々とこうした会話が弾むような警察官を周囲は評価するものです。皆さんの上司はそうした視点で皆さんを見ているのです。とりわけ、警部補や警部、やがては警視といった上級幹部を目指そうという高い志を抱いている皆さんは、日頃の心構えとして、広い視野での勉強を心がけるべきなのです。世間で教養というのはそうしたものです。 警察を取り巻く課題は山積しています。それらを踏まえ、部内の教養資料も次から次へと増えていきます。その時、それらの課題を社会全体の視点に立って考えていることはなんと好ましいことか。そうした警察官に皆さんには是非ともなっていただきたいのです。日本公法は、今年も全力で皆さんの目標達成を支援します。皆さんの よき伴走者でありたいと願っています。一緒に頑張りましょう。

2013/1/1 ベスト1月号 巻頭言

警友諸兄への年末のご挨拶
~弱い者に寄り添う心を大切に~
 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

警友・会員の皆さん、今年も残り少なく、いよいよ押し迫ってきました。恒例の歳末警戒に加えて総選挙(警視庁では都知事選挙も)もあったため、殊のほか忙しく慌ただしかったことでしょう。ご苦労様でした。職務の性質上、正月だといって、完全に休暇をとるとはいかないながらも、皆さんには、来し方を思い、来たる新たな年への思いを馳せておられることかと思います。

警察官にとっての根底にある精神は、被害者や弱者に寄り添い、悪に対して正義の戦いを挑むということではないでしょうか。その警察官には、人々の心のひだを感じられる豊かな感性が求められます。年の瀬には、寂しい人々にとって、一層の寂しさを感じさせる舞台装置がセットされているようです。弱者を食い物にしようという者もいれば、自殺する者もいる。警察官はそうした人々に最も近いところで勤務しているのです。勤務に際しては、隅々まで、よくよく観察し、心の目をも働かせて、心のひだを感じ取るべく、最大の努力をしてもらいたい。警察界に伝えられる「声なきに聞き、姿なきに見る」という言葉は、こうしたことを意味しているものと思います。心の目で見るということです。

昇任試験であっても、そうした心がまえ・志は重要なポイントとなるのです。ともすれば、知識や技能といった表見的な部分だけが注目されますが、本当に見られるのはその人間性であり、警察官としてのあるべき姿に適うか否かなのだから......。日常勤務では、そうした評価がなされている。素質とか適性といった言葉は、そうしたものを指している。外部(部外者)の評価(評判)も元はといえば同根といえるでしょう。様々な人の評価が昇任試験に際して、集積され、合否に大きな影響を及ぼすことになる。人間社会とは、そういうものではないでしょうか。面接試験では、答えの正しさだけが見られているのではない。応え方、あるいは、態度を含めた、その人間のかもし出すものすべてが見られている。そうしたものはいったいどこからかもし出されてくるのだろうか。それは人間性であり、人間性に裏付けられた人間そのものだと思う。忙しさに紛れ、いろいろな誘惑に流され、そうした根本的なことにまで思いが至らないのが私たちの常というものでしょう。年の瀬に当たり、忙しい普段には、忘れがちな“初志”に立ち返り、来し方行く末を考えてみたいものだ。

一年の反省も肝要だ。そのうえで、来たる年の目標に思いを馳せることが良い。一年間、本当にご苦労様でした。お陰様で、本誌も、皆様のご支援によって新たな年を迎えることができます。日本公法は、新たな年も、全力で皆さんの目標達成に邁進します。皆さんの良き伴走者でありたいと願っています。来年もどうぞよろしくお願いします。一緒に頑張りましょう。良い年をお迎えください。

2012/12/1 ベスト12月号 巻頭言

挫折を糧に
∼脱しなければならない不合格
慣れ∼
 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行


本誌に寄せられたアンケート・ご意見を読ませていただいている者として、なるべく返事を書きたいという思いで本稿を書いている。一番、真剣に読まざるを得ないと思っているのが「不合格でした」というもの。我々としても力が足りなかったということであり、率直に残念だ。月並みな言い方で恐縮だが、なんとしても挫折を糧に、来年こそは合格の栄冠を手にしていただきたい。

率直に言って、気になるのは、そうした便りの中に悔しさの発露ではなく、「今年も」とか「また」といったある種の受容の表現があることだ。そこに挫折への受け止め方としてのある種の弱さや甘さがあるのではないか。絶対に不合格慣れなんかしてはならない……と叫びたい衝動に駆られる。不合格は厳然たる現実であり、要はそれをどう受け止めるかである。そこにはまず言い訳ではなく、むしろ、何にも増して悔しさがあってしかるべきではないか。その上で理性的な反省があり、新たな決意が続く。今年の不合格をむしろ将来への大いなる飛躍の出発点とするようにしてもらいたいのだ。挫折に対して、痛みを和らげようと対応するのは、自己防衛本能のなせるところだ。忙しかったし、体調も悪かったなどと。それも決して悪いというのではない。それぞれに適したやり方があるというのもその通りだ。しかし、それだけではもったいない。なんとしても将来への糧とする根性を示してもらいたい。

筆者は、かつて、福岡県警に勤務していた時、警視庁から割愛で福岡県警に途中採用されてきた人を部下としたことがあった。彼は、警視庁で巡査部長試験に合格、巡査部長として勤務の途中で、事情があって福岡に割愛される道を選択したのだった。福岡県警では巡査としての再出発だった。ある程度、年齢もいっていた彼にどう対応すべきか?上司としての若い私の判断は過酷なものだったかもしれなかった。私は「悔しくないですか。」と、率直な言葉を投げかけたのだった。それは私の本音でもあった。彼に共感して共に本当に悔しかったのだった。彼の闘争心に真正面から火をつける作戦に出た。彼なら受け止めてくれるとの確信もあった。さらに「警視庁の本当の実力を見せ付けてください。」「巡査部長・警部補の昇任試験、いずれも一発で合格することですよ。」とも。私と同年代だった彼は、私の本音の声に、応えてくれた。大卒資格を得ていたこともあり、最短期間で警部に昇進、もちろん署長となった。30歳ほどになってから割愛という再出発をした彼は、昇進とは別途の価値観で生きる選択もあった。もろに闘争心に火をつけるという荒業ではあったが、彼は見事に対処し、逆境を糧として生かしてくれたのだった。生涯の友として、今でも楽しい付き合いを続けさせてもらっている。

人生に一度や二度の挫折は当然のことだ。要は、それをどのように受け止めるかということ。痛みを和らげようとの本能の作用に身を任せてばかりでいいのだろうかということだ。人生、どこかで決然として眦(まなじり)を決して臨むべき時がある。それを感じ、決断するのはあなた自身しかいない。ぜひとも言いたいことは、悔しいという叫びこそが爆発的なエネルギーになるということだ。人間、悔しい時には徹底して悔しがる。それを糧にして、頑張る時には頑張る。そうしたメリハリをつけることが大切だと思う。昇任試験は、基本を固めることが要。しかも、短期集中的に、基礎を徹底して固めることだ。それには悔しさはバネになる。いや、そうしたエネルギーは有用なのだ。こつこつとした勉強も大切。しかし、どこかで燃えるように集中的に勉強することも大切。挫折を糧に燃え上がるようなパワーを発揮してもらいたい。

2012/11/1 ベスト11月号 巻頭言

活気に満ちた係(チーム)の運営力
~面接でどこをみているのか~

 株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

警務に関して「職場管理・運営」という分野がある。実は、組織としての警察、その幹部昇任試験においては職場の管理運営力が重要な要となる。上級幹部になればなるほどその比重が増す。警部、警部補試験は、 本音を言えばそこを見る昇任試験なのだ。面接試験では様々な問いが投げかけられるが、それらは究極的に受験者の管理運営能力を見極めるための手段に過ぎない。面接官のチェックポイントを意識した対応が肝要だ。以下、職場の管理運営に関してのポイントを列挙してみよう。

1 一人ひとりに真正面から向かい合う
縁あって同じ職場でチームを組むことになった部下、あるいは同僚という立場での出会い。その出会いに感謝して、一人ひとりに真正面から 向かい合うことから始まる。上司であれば部下の顔色、髪の様子、あるいは服装など、毎日の変化から、部下の健康状態や悩みなどの有無まで観察できるかもしれない。係員一同ではなく、それぞれ個性の違う A君、B君、C君でありAさん、Bさん、Cさんなのだ。一人ひとりと向かい合うということから始まる。職場内での挨拶の励行は言うまでもない。幹部に昇任するということは、職場の中での人間関係が増すということだ。職場の中でのその人の影響力が増すことが職場にとって好ましいのかどうかがポイントになる。一人ひとりに向かい合うという基本が欠かせないゆえんだ。

2 話は最後まで聞く
部下や同僚が何か話し掛けて来たら、どんなことでもちゃんと最後まで聞かなければならない。相手の話を生半可に聞き流したり、途中で遮ったりしてはならない。誰しも、自分の話を真剣に聞いてくれる人に好意を抱くものだ。まして、上司に対して部下が何かを訴えるというのは、上司にとって願ってもないチャンスなのだ。話し相手に正対して、話をしっかりと受け止めるのだ。そして、話してくれたことに感謝の気持ちを伝える。たとえ、すぐに実現できることではなくても、よく考えてみるなどと、肯定的に反応したい。実は、話を真剣に聞いてくれただけで話した人は満足していることが多い。人間は話したいものだ。そして話を聞いてくれる人に好意を抱くことが多い。自分がないがしろにされていないことに安心する。だから 聞き上手は管理職の素質がある。

3 我がことに引き寄せて考え・話す
不祥事はどこにでも存在する。事件や事故も同様だ。新聞やテレビなどで毎日報道されていることは、こうした不祥事、事件、事故だということさえできる。ということは、他山の石とすべき事例には事欠かないということだ。 毎日のようにどこかで発生しているこうした生きた事例を我が職場に引き当てて、我がこととして考えることが有意義だ。部下・同僚と共に他山の石から我が職場の教訓を引き出すことができるか。その発想力が問われる。 職場の上司は、単に通達などを形式的に伝えるだけでは不十分だ。いかに我がことに引き寄せて伝えることができるか。聞き手の部下・同僚が我がこととして注意喚起させられるように伝えることができるかということがポイントなのだ。 なお、話し方は重要なポイントになる。部下などに話をすることが増える。何を話しているのか不明瞭であっては困る。簡潔にちゃんと話ができること。声に力がこもっていること。ある程度の音量も欲しい。早い話、聞こえないのでは困るということだ。

4 率先垂範
上級幹部になればなるほど、部下から注目される。一挙手一投足がより大きな問題となる。部下からそのような目で見られて大丈夫だろうかということだ。部下の模範となる仕事ぶりであってもらいたい。今日のようにフラットな関係が重んじられる時代では、率先垂範型のプレーイングマネージャーが求められることになる。しっかりやってみせることができるということ。仕事ができなくては 部下への示しがつかない。OJTが警察という職場で重んじられる。日々、職場の現場でのマン ツーマンの職場教育が重要なのだ。上級幹部に昇任するということは、 OJTの担当者になるということなのだから。

5 報告・連絡
個人の力を組織の力に結集していく配意が求められる。そのような気配りができるかどうかということだ。そのポイントは、報告・連絡である。自分だけでなく組織全体としてどうかという立場で見ることができるかどうか。一歩、高い立場での見方が求められる。 一階級上の立場に立っての見方といっても良い。

6 意欲に満ちた積極性
職場は高い目標に向かって一丸となってがんばっているという姿が理想だ。不祥事防止という消極的で後ろ向きな組織の管理運営ではなく、 高い目標に向かってがんばろう......という積極的な雰囲気を作っていくことが肝要だ。 受け答えの声も力のこもったものでありたい。はっきりとした発声が好ましいことも、改めて言うまでもない。 職場の部下同僚を束ねる担い手。その担い手としてふさわしいかどうか。より上級の幹部昇任試験になればなるほど、面接ではそこを見極めているのだ。

2012/10/1 ベスト10月号 巻頭言

「国民と共に」を誰が担うのか
~昇任試験面接の決め手~
 

株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

警察は安全・安心という国民生活の大前提・基礎の実現を担っている。そのために、逮捕権やけん銃の使用といった極めて重い権限が与えられている。その影響は重大であり、権限の行使にはプロとしての精進が求め られる。警察官として心掛けるべきこと、その根本を考察してみよう。昇任試験、特に面接で最も焦点の当てられるのはそこに行き着くのだから。

1 国民の信頼を得るための第一歩は良き聞き手になること
警察官としての土台ともいうべきこと、最も心掛けるべきは、国民の信頼を背景とした執行務であることだ。国民が何を求めているか。常に考えあるいは感じ取るようにしたいものだ。国民というと抽象的すぎてよく分からないとすれば、受け持ち管内の人々と置き換えて考えるのでいい。そのおおかたの人々の期待に添うということだ。それはできるだけ多くの人々と話をすることから始まる。話をするには、良い聞き手になることが理想。相手が気兼ねせず何でも 話したくなるような対応ができることが警察官の心掛けることの第一ということだ。

2 心情に寄り添う
話は耳だけでなく、心で聞くという心掛けで臨むことが肝要だ。相手の立場に立って考え、受け止めるといっても良い。一般的には警察官に話すとき、多くの人は、緊張し、身構えている。その際の警察官の言動は重い意味を持っている。警察官は、警察官であることに慣れ過ぎていてはならない。またか、と受け流したり、流れ作業で処理してはならない。相手は緊張して皆さんの一挙手一投足を食い入るように見ているのだから。心のひだを感じ取るような気持ちで相手に臨んで欲しい。ことの外大切なのは、別れ際の一言だ。交通違反の切符を切った相手にも「気を着けて安全運転をお願いします」など、心を込めた一言が欲しい。

3 話し方の訓練
警察官は話し方の訓練を重視すべきだ。署長や課長などの関係団体などでの挨拶を始め、警察官一人一人の非公式のスピーチなどでも、話し方は大切だ。警察学校は勿論、警察署でも努めてスピーチの訓練を心掛けたい。そうした雰囲気を醸成させるだけで、みんなが刺激を受けることになる。スピーチは練習でどんどん上達するものだ。

4 住民の参加による街作り
自主防犯活動が活発になっている。東日本大震災を経験して国民の意識・価値観が変わってきている。多くの人々が「どう生きるべきか?」 と、考えさせられたのだ。どう生きるかということは哲学ということだ。その中で、自分たちの安全・安心は自分たちでという意識が高まっているのだ。 警察はこうした住民の意識に寄り添って、可能な限り協力して欲しい。住民と共に治安を守るという理想を今こそ再構築しようではないか。

警察幹部選考という昇任試験の根底にあるものは、警察を代表しての判断や諸活動を誰に託すのかということである。国民・住民にとって信頼できる警察という目標に向かって、より多くの重い任務を誰に託すのか。新しい時代の担い手としての能力が問われている。それを見極めようとしているのが“面接試験”ということだ。

2012/9/1 ベスト9月号 巻頭言

常日頃の勤務実績が決め手
〜客観的な視点を忘れるな〜
 

株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

今月もアンケートを読んでの感想を披瀝したい。多くの人が、今年こそ受験勉強に集中して合格を勝ち取るべく取り組むといった決意を表明している。それ自体はまっとうなことであり、本社スタッフ・職員一同、合格の栄冠を勝ち取るように全力で支援したいと決意を新たにしている。

しかし、一つ心配なのは、合格は職場での評価の集大成だという客観的な視点が全ての前提に存在している、ということだ。この至極当然の 前提が理解されているのか?いささか不安を覚えることもある(杞憂であることを祈りつつ)。 警察という組織の幹部としてどういう人を選抜するべきか。当然のこ とながら、その選抜に組織の将来を託している。それだけに真剣に合格者を選抜しているのだ。どういう人を合格させるのだろうか。単なる知識の有無といった単純なことではあり得ない。合格した人を見る職場の 評価が、あの人は仕事もせずに試験勉強ばかりしているということであってはならないのだ。

昇任試験での最も重要なポイントは常日頃の仕事ぶりなのだ。あの人は率先して仕事で苦労している、勤務ぶりが他の模範とされている、彼の昇任は誰しも納得、というのが理想なのだ。こうした本質を忘れてはならない。

自己中心的な視点でなく、自分をあくまでも客観的に見ることのできる心がけが肝要だ。受験勉強に集中するのは良いが、自分が周囲からどのように見られているのかという視点を欠いてはならない。 何年も不合格となっている人の中に、少なからず、自分が見えなくな っている人が存在する。

幹部選抜の昇任試験は、根底に職場での評価が存在している。ストレ ートに言えば、職場の同僚が納得する勤務ぶりであることが前提なのだ。 昇任試験勉強は日常の勤務の集大成なのである。 まずは、日常の勤務に励むことだ。勤務に必要な知識、技能を修得す るということ。受験のための日常の職務と遊離した知識や技能ではないのだ。勉強する際にも、取り扱った事象の中での生きた知識技能とすべ く心がけてもらいたい。問題集に書かれたものとしてではなく、将来の実務に役立つものとしての理解習得に努めてもらいたい。そうした実務 に結びつけた想像力が有効だ。もしもこういう事案に出くわしたらどう 処理するかという発想である。過去問も可能な限り自分が取り扱うことを前提に自信が持てるまで確認することが有益だ。

日常の勤務こそが最高の勉強の場だということを忘れずに、取り扱い 事項に全力で立ち向かってもらいたい。それこそが本当の実力となって身につくのだから。それゆえに、実務に直結している具体的な取り扱い要領が重要になる。分からないところは、職場の同僚・上司に聞くことだ。聞くことができることが進歩のはじめの一歩という発想が肝要だ。 聞くは一時の恥というではないか。聞かないこと、わかった振りをすること、それこそ一生の恥だ。そんな姿勢では昇任試験の合格は到底おぼつかない。

皆さんからのアンケートは我々にとって宝の山だ。スタッフ・職員で回覧して熟読している。私の受けとめは的外れかもしれない。みなさんの大願成就を祈ってあえて筆を執った次第である。

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2012/8/3 ベスト8月号 巻頭言

面接は気合いの勝負
〜TPO を踏まえた話し方&楽しむ態度で〜
 

株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

全ての昇任試験で年々面接試験の比重が高まっている。というより実質的な合否の決定権を握っているといってもよい。少なくとも面接で 「これでは一寸」と判定されれば合格することはない。これは申すまでもなく、知識技量の程度より、それを使いこなす主体である人間・警察官の人柄や信頼性、すなわち、警察官に対する市民の評価や与える影響力での警察官の生身の人柄や信頼性の要素の比重が大前提になっていることにゆえんしている。 こうした傾向は何も警察官の昇任試験に限った話ではない。大学生を対象とした、採用試験対策では、就職氷河期を乗り切ろと、どの大学でも面接試験への指導に力が注がれている。社会全体、どの組織でも人間性への関心が高まっている。実は、警察官採用試験でも学力試験で篩にかけられた受験生を対象に最終段階として実施される二次試験でのハイライト・面接試験に採否の最終判断が委ねられている。昇任試験は、組織幹部を選抜するということであるから、昇任した人間の部下への影響力に、より多くの関心が注がれることになる。より上級の階級になればなるほど部下の数は増え、当然のことながらその影響力が大きくなる。組織全体の士気を上げるためにも、昇任者の人間性(人間としての総合的な資質)に目が向かうことになる。人間社会はあくまでもその構成員である人間そのものの資質によって決定づけられているのだから。

面接は一本勝負。短時間での印象の勝負と言い換えることができる。一本勝負には一本勝負の心得があろうというもの。面接室に入って面接官と相対した時の、最初の印象が大きい。そこで半分は決まる。人間“見た目が勝負”とも言われる。ある意味、真実を突いている。髪や服装を整え、外見の清潔さ、物腰のさわやかな印象は重要だ。特に、警察官としてのてきぱきとした挙動が欠かせない。部屋に入り、礼をし、名乗るという型にはまった短時間の動きの中で、これらの諸点をビシッと決めるのだ。

第二は、昇任への意欲を示すことだ。昇任して上位の階級に就いて何をしたいか。短い言葉の中に簡潔に表現しなければならない。言葉に力が込められていなくてはならない。口の中にこもった、何を言っているかはっきりしない発声は厳禁だ。特に、語尾をはっきりさせることを心掛けて欲しい。試験官である上級幹部はそれを期待しているのだから。

第三は、当意即妙な受け答えでありたいということだ。それには相手の話をちゃんと聞くことから始まる。そのためにも、できるだけ冷静になっていなくてはできない。下腹で深く呼吸して、冷静になれるよう努めることを進めたい。普段から呼吸法に留意しておくことが良い。簡単に言えば、座禅と同じで、できるだけ細く長くゆっくりと息を吐くことに神経を使うことだ。良い答えとは、相手の話をちゃんと聞くことに始まる。すなわち、相 手の問いを理解した上で、一呼吸間をとってから答える。面接に際しては、冷静に話が聞け、落ち着いて対応できるということを示すことが肝要だ。繰り返すが、相手の話をお終いまで聞き終えてから一呼吸を置いて答える要領を忘れないこと。 試験では答えが正解かどうかと言うことももちろん重要だ。しかし、それにも増して、その回答者がどう受け答えしているかということが見られている。くれぐれも、このことを忘れてはならない。しかも、多くの場合は、受け答えの態度の方により大きい比重が置かれている。

第四は、発声の仕方。さわやかにして力の込められた“りんとした発声”でありたい。自信のないぼそぼそした話し方であってはならない。 下向きではならない。姿勢を正して、相手の鼻辺りを見ていることを心掛けることだ。

第五には、面接官との面接という出会いを楽しむという心境で臨みたい。人間、こちらの気持ちが相手にも伝わりやすいということだ。面接官に敬意を持ち、誠心誠意の受験をすること。その気持ちは面接官に伝わり好印象を与えることになる。 面接に際して、緊張しないようにというアドバイスがなされるが、要するに同じことを指しているのだろう。ただし、緊張しないようにと言うのは、なかなか難しい。緊張しないように心掛ければ心掛けるほど緊張してしまいがちだ。むしろ、楽しむこと。面接官も仕事であり、受験生のこちらも仕事。お互いにご苦労様ということだ。そう思えば緊張がとれるかもしれないということだ。

面接試験は気合い勝負。短い時間のさや当てで合否振り分けとなる。 受験生にとってはいささか迷惑で、できれば早く終わってくれればという心境にもなろう。しかし、それも、非日常的な一つの経験と受け止め ることだ。こうした楽しむという気持ちで、ゆとりある応対ができれば、 自ずと良い結果がついて来ようというものだ。本誌読者の健闘を切に祈る。

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2012/7/4 ベスト7月号 巻頭言

法学では何を学ぶのか
〜昇任試験の神髄に迫る〜
 

株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

はじめに

「法律を学ぶ」とは、本当は何を学ぶことなのだろうか?法律の条文をたくさん知っていることだろうか?警察官の職務に際して誤りのない判断・執行務ができる知識を身につけることだろうか?もちろんこれらは大事なことだ。しかし、それでは不十分なのだ。今回は法律を学ぶということの本当の意味を考えてみようではないですか。そこがはっきりすれば法律の勉強は飛躍的に進むことになり、目指す合格もぐんと近づくこと請け合いだ。

1 説得力の養成

ズバリ結論を示せば、法律の学習が究極的に目指すのは、「説得力の養成」なのだ。人間は多様な価値観を持っている。その多様な価値観を持った人間がとにもかくにも何らかの折り合いを付けて生きていかなければならない。しかし、争いごとは必ずついてまわる。制度的に言えば、あらゆる争い事は裁判によってけりを付けて、秩序を回復させることになっている。裁判官は法律によって判断する。法律は裁判官が判断する際の拠所・ルールブックというわけだ。しかし、法律の解釈は人によって多少異なる。誰しも自分に都合良く解釈したいのだからやむを得ない。そこで裁判官の前で、それぞれの主張を展開することになる。弁護士とはその専門家なのだ。裁判官は対立する両者の言い分を聞いて、判定の旗を振る。裁判は裁判官を審判として争われることになる。言い換えれば、裁判官を説得する戦いだ。説得に成功して、裁判官をしてなるほどと頷かせることができた方が勝訴する。法律を学ぶ究極の目的は裁判官を説得する能力を養成するということなのだ。

2 説得力とは

人間はどういうときに説得されるのか。基本的には、言い分が客観的・論理的でありなるほどと腑に落ちるときだ。そのためには、相手の立場、言い分を理解した上で、その誤りを可能な限り相手が受け入れられるように説くことだ。大学での法学の学習では、まず、通説・多数説・少数説などの学説から判例などを知識として知っていることを示し、それぞれの問題点をえぐり批判する。その上で、自分の支持する説を展開するという順番で論理展開する訓練を繰り返す。自分の考えだけを一方的に主張するよりも、反対の考え方をする人の考えを辿り、その検討の結果、問題点を明らかにし、その上で自らの考えを展開する。そうする方が相手もこちらの主張を受け入れやすいからだ。相手にとって、全て納得とは行かなくとも、少なくとも、あなたがその様に考えるということは分かったということになる。説得力とは、そういうものだ。あなたの考え方に賛同するのではないが、あなたの様な考え方をする人がいるということは分かった。そう言わせることなのだ。説得力とは相手に理解させること。できれば賛同させること、ということとなる。

3 手段としての知識

法律を知っていることは、あくまで手段に過ぎない。誤りのない判断・執行務ができることは警察官の前提だ。もちろん、それぞれ頑張って勉強しなければならない。しかし、そのレベルに止まっていてはならない。幹部昇任試験では、さらに奥にある所を理解していることが求められる。そういう理解で、説得力を身に付けようと目指していることが肝要だ。上級幹部試験になればなるほど、そういう本質的な所が決め手になる。小論文形式での判定を左右しているのはここなのだ。面接試験でも正に、説得力の有無が見られているのだ。

4 添削に挑戦

知識は択一問題でも学べる。しかし、説得力となると文章題に勝るものはない。文章題は添削してもらうことだ。客観的な観点からの目。添削では、究極的には説得力ある文章になっているかどうかを見ることになる。文章題は、沢山練習すること・一本でも多く書いてみることに勝る勉強方法はない。そして、自分で書いた物を、後で見直してみたい。その時の尺度は、説得力があるかどうかだ。書き出しが引きつける力があるか。読み終えてなるほどと思わせる物だったか。できれば誰かに見て貰うことだ。本誌の添削を積極的に活用してもらうことを願っている。

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2012/6/2 ベスト6月号 巻頭言

何事にも求められる読みの深さ
〜昇任試験合格の要諦〜
 

株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

はじめに

何のために勉強するのか。それぞれ目的があるだろう。その場合、その目的を達成することが良い勉強であり、それが実現できることが、即ち、成功であることは言うまでもない。目的達成のためにはどうしたらいいのか。何事も先ずは情報収集から始まる。情報は広く多く集めることだ。収集された正しい情報に基づいて、勉強する。目的達成のために必要な知識・技量を修得することになる。合格することが目的の昇任試験対策にもこうした一般論が当てはまる。 合格するにはどのように勉強すべきか。試験全般に詳しい知識と経験を 持った人の話を聞くことから始まる。とりわけ採点者はどこを見ている のか。面接など人物評価では、どういう人を合格させようとしているの か......など、評価する側の視点に立った、冷静な見方が肝要だ。 以下、そうした観点に立っての昇任試験合格の要諦を紹介しよう。

1 問題は何時作成されるのか

試験実施日から逆算して試験準備のルーティンがある。例えば、1月の警視庁警部補試験なら正月休みの前、12月には問題はできあがっている。その問題はいつ作成されるだろうか......と考える。各部の重点などの収集、検討などに意外と時間が掛かる。試験問題の作成担当者はなにかとプレッシャーがあって大変だ。通常は、夏の間から試験のことが 頭から離れなくなっている。9 月、10 月は実際に問題を作成するピークではないか。となると、受験者は 8~10 月のニュースを見逃してはなら ないことになる。試験の問題には半年から 3ヶ月前の期間の雰囲気がしみついているからだ。 昇任試験には、その時点での各部の重点事項、発生した事件・事象が出題される。そのことを頭に入れた準備をしなければならない。

2 問題は誰がどのように作成するのか

試験問題には、作成担当者がいる。担当者は各部の庶務担当課などに 各部の重点課題などを提出してもらっているだろう。特に、教養重点は優先的に収集し押さえているはずだ。 その上で問題を作成する。作成は容易ではない。いささかの疑義も生じてはならないと神経をすり減らす。関係法令、条例、通達や資料など紙に書いた物が無くてはプレッシャーに堪えられない。 問題作成で過去問が重要になるのは、新規に問題を作成するのが難しいからだ。したがって、過去問をもとに問題を作成することになるのだが、全く同じであってはならないので、過去問に手を入れることになる。 その際に今年の状況を加味するように努力することになるのである。

3 各部の重点は何だ

受験者にとって、各部門の今年の重点事項を収集することは欠かせない。その課題に関する教養資料は最重要だ。その元になる条例や通達を手元に置いて勉強しなければならない。出題者が手にしている物を受験者も勉強するということ。そうした視点が肝要だ。少なくともそうした気持ちで勉強しているとツボを外すことはない。

4 他人の意見を聞く(情報収集・交換・勉強仲間との意見交換)

よく勉強している仲間の意見を聞くことが有意義だ。先輩や上司の意見もさらに重要だ。自分一人の判断ではなく、多くの人の意見を吸収するのだ。そうした柔軟な姿勢が好ましい。よく勉強している仲間との意見交換は、情報収集の最高の手段であり、それ自体が有益な勉強方法となる。ライバルとなる仲間との試験に関する検討は積極的になすべきだ。そうした仲間がいるような人は合格に一歩も二歩も近付いていく。

5 基本を固めて、基本ができていることをアピールする

改めて指摘するまでもないが、基本が重要だ。特に昇任試験では基本が勝負といっていい。可能な限り、教科書など自分の基本としている文献に立ち返るように心掛ける。時事的な出題であっても、答える際には、可能な限り、刑法、刑訴法、警察法の基本を勉強していることをちゃんとアピールすることがお薦め。不祥事防止などでは服務の要諦などをバッチリ書ききる。勉強しているかどうかを見るのが試験なのだから、それにちゃんと答える。合格点をとるとはそうした採点者の目を意識しての答案になっているかどうかが勝負ということなのだ。基本は教科書から始まる。警察学校で使用した教科書を座右の書として大切にしなくてはならない。常にそこに立ち返るのだ。確認するということ。それに警視庁の警務要鑑やそれぞれの県警の警察官必携や基本法令集などを自宅の卓上に置き、努めて関係の原典に当たるようにすることだ。昇任試験も基本に始まって基本に終わるのである。

6 客観的に確認する

本誌などを利用して、専門家の視点を加味した点検をぬかりなくするという心得を持っていなければならない。個人の判断には限界がある。常に謙虚に自らの力をより客観的に見るという姿勢が肝要。こつこつと定期的に積み重ねるという意味では本書利用などは理想的だ。本書読者の目的成就を確信している。

おわりに

試験には合否がある。その違いはどこにあるのか。試験を含め、何事も大所高所から、冷静に考えてみることが重要だ。その上で、毎日のこつこつと積み重ねられる努力。努力に勝る逆転の知恵などという物はないということだ。

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2012/5/8 ベスト5月号 巻頭言

易きを避けて、難きにつく
〜高みに立った者だけが展望を楽しめる〜
 

株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

はじめに

昇任試験をめざして、おそらくは1年間という長丁場になるであろう勉強。日常生活の忙しさの中での各自の挑戦は決して容易なものではない。疲れて帰宅してから机に向かうのがおっくうになることもあろう。「そんなに無理をすることもないのではないか」など、様々な迷いも生じるだろう。現職時代多くの方に語ってきた私の警友への激励の弁を披露してみたい。

1 迷ったら難しい方を選択しよう

人生は選択であり、決断の連続だ。多くの可能性から選ぶことによって今日の自分が存在しているともいえる。たくさんの選択肢がある中から、皆さんはどのようにして選択しているのだろうか。それこそ人によって様々だろう。楽な方を選びたくなることもあるだろう。それは当然のことだ。誰だって好んで苦労したくはないだろうから。

しかし、楽な方を選んで、後で後悔した経験が私には結構あるのだ。楽な方を選びたいのは自然の理、いわば人情というもの。しかし、迷うというのは、心の底ではその楽な方ではなくて、難しい方を選んだ方が良いのではないかという思い(迷い)があるからではないだろうか。迷いとはこの難しい方を選んだ方が良いのではないかという潜在的な声との葛藤なのだ。私自身は、迷ったら、難しい方を優先して考えた方が良いのだと考えるように努めている。安易な方を選びたいというある意味で自然な流れの中で、潜在的な心の動きが、「それで良いのか?」と叫んでいるのだ。だから、先ずはその声に耳を傾けるべきだ。

2 山頂の景色は登り詰めた人だけのもの

私の経験では、どんな山でも、なべて山登りは結構しんどい。急な登山道を、息を弾ませ、汗をかいて、あえぎながらの難行苦行の末に辿り着いた山頂からの景色は、だからことのほか心に焼き付くというもの。はるか彼方まで広々と広がる下界の景色は開放感がある。山頂からの雄大な景色は一歩一歩自力で登ってきた人のものだ。家のソファーで寝そべって写真で見ている人には味わえないものだろう。

昇任試験も全く同じではないか。歯を食いしばって一日一日と頑張った人にしか合格の喜びは味わえない。苦労して昇任試験を受けなくとも良いではないか、階級が上がっても責任が重くなるだけで何のメリットがあるのか、等と言った誘惑の声が耳に入るだろう。敢えて言う。課長にならなければ、署長にならなければ味わうことのできない景色があるのだと。課長や署長になれないで、それらの善し悪しなど語ることはできないのだ。登ってみなければ山頂からの景色の爽快さは味わえない。昇任試験は挑戦して合格してみなければその喜びは味わえない。課長や署長はなってみなければ、そこからの景色は分からない。怠惰な誘惑の声に惑わされてはならない。苦しくとも頑張って登り詰めて見るべきだ。山頂からの景色を味わおうではないか。

3 ツボを押さえた勉強

長丁場。いたずらに長時間の勉強はお薦めではない。効率的な勉強方法を採らなければならない。本誌など、同伴者のリードは利用すべきだ。生活習慣として一日一日決められた時間を勉強に充てるのがいい。可能な限り、基本に立ち返り、法律や規則、通達などに目を通す。そして何よりも考えながら仕事をすることだ。本誌の問題も自分で考えるきっかけを作ることを目指している。考えるという習慣をつける。疑問点は放置しないで決着させる。本誌はそうした皆さんの善き友でありたいと願っている。

おわりに

本誌に皆さんの声を寄せて頂きたい。どんな疑問点でも遠慮無く寄せて頂きたい。

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2012/4/2 ベスト4月号 巻頭言

目標を目指して、自らを律する喜び
~自分と付き合うコツを知る~
 

株式会社日本公法 代表取締役社長
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師

大貫 啓行

はじめに

仕事の後で、昇任試験を目指しての1年間程の勉強をし続けることは容易なことではない。何事であれ、目標を立て、その実現に向けて頑張ることで、楽なものはない。しかし、コツを身に付けさえすれば、喜びに転換できる。今回は、私流のそのコツを紹介してみよう。現役時代、信者が出るほど有効だった(と思っているが?)。

1 先ず行動

あれこれ考えるより、とにかく先ず行動に移すことだ。例えば、手元にある資料を読んでみる。あるいは警察官職務執行法を読んでみる。要は何でも良いからやってみること。固く立派な決意をすることも、勉強の長期間に亘る計画表を作成することも要らない。とにかく実行することが良い。禅では先ず掃除をするのが良いと教えるそうだ。理屈ではない、体を動かすことから始める。ひたすら掃除をする。信仰も二の次。これは何を示唆しているのか。百の理屈よりも、一の行動の大切さを意味している。ひたすら掃除をする。心を込めてきれいにする。全てはそこから始まるのだ。
例えば寝る前の10分間、机に向かって資料などを読むだけで良い。10分が20分、20分が30分になればしめたものだ。何も寝る前でなくても良い。自分にとって無理のない時間帯での第一歩ということだ。先ず実行、どんな些細なことであっても良いから先ずは始めてみることだ。そこには挫折感は無用だ。今日からとにかく始めること。

2 10年後の自分

10 年後にどうなっていたいのか。想像してみることだ。10年後、20年後の自分はどうなっていたいのか。忙しく誘惑の多い日常生活の中で、ついつい、その日暮らしになりが ちなのは人間としてやむを得ない。数々の言い訳を探すのも比較的容易なことだ。しかし、「10年後、どうなっていたいのか?」…と、時にしっかり想像してみてはいかがか。どうしたらその夢が実現できるだろうか?誰が考えてみても、自分で勝ち取るしかないことは明らかだ。10年後の自分を思い描くことで、誰か他人に急かされてではなく、自分自身の意思としての目標だということが実感できるようになる。

3 悔しさをバネに

ライバルがいれば一番良い。あいつには負けたくない。そういうライバルがいる人は幸せだ。なんであっても良いが、自分にとって、“なにくそ”という思いが湧いてくる動機が見つけられれば幸いだ。競争心は頑張りの栄養だ。自分にとって何が一番利くだろうか?……と、自分を客観的に見ることができるようになれば、その人はしめたものだ。誰しも、自分を見つめるもう一人の自分の存在を感じるのではないか。そのもう一人の自分を大切にしたいものだ。斜め後ろやや上方にもう一人の自分が存在していることを感じないだろうか。人生とは、自分との付き合いということだ。自分を好きになるしかない。誰か他の人に代えられないのだから。どうしたら自分は頑張れるか。もう一人の自分に相談してみる要領だ。

4 基本を大切に

昇任試験で大切なことは、暗記することではない。もちろん、知識はあるに越したことはない。しかし、あくまで基本がしっかりと身についているかどうかが決め手になる。そうした観点から、警察学校での教科書はすべての出発点になる。警察法、警察官職務執行法、刑法、刑訴法等基本法から服務規律など内部の基本文献は勿論、全員教養等で配布された資料等は繰り返し、繰り返し読み直すべきだ。昇任試験ではそうした基本事項の修得状況を確認することが、本来のあるべき姿だと言える。

5 積み重ねられた先達の経験に学ぶ

尊敬できる先輩の話を聞くこと。その先輩ならどうするだろうか、と考えることを自らの行動の原点に置くこと。昇任試験勉強の先達の知恵には謙虚に耳を傾けるべきだ。又、本誌を始め、経験を積んだ専門家の知恵は有効に利用した方が良い。特に、本誌の様に一定の周期で届けられる教材は、勉強にリズムを与える意味で有効利用をしてほしい。ペースメーカー役は必要だから。

おわりに

自分と上手に付き合うこと。自分との付き合いを楽しむこと。楽しみながら勉強できれば成功の近道になること請け合いだ。

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