2018/1/1 ベスト1月号 巻頭言を掲載しました
迫る年の瀬に「自律自修」を
~留まって省みる~
株式会社日本公法 代表取締役社長 麗澤大学名誉教授 元中国管区警察局長 元警察庁教養課長 元警察大学校教官教養部専門講師 大貫 啓行 |
もう年末のメッセージを書くことになった。私としても「もう」というのが本音だ。
現役のみなさんにとっては、なおさら、あっという間の1年だったのではないだろうか。特に今年は、後半だけでも、都議会だ、総選挙だ、トランプ大統領の来日警備だと大きな対応が続き、気付けば歳末警戒ということになった。そんな印象だろうか。
言い古されたことではあるが、あらためて、時の流れの速さに驚きさえ感じさせられる。
そうした喧(けん)騒の中で、ただただ流される人もいれば、自ら新年に向けて前向きにこなしていく人もいる。喧騒の中にあるときほど冷静になれることもある。全て、その人の心の受け止め方の問題だ。
年の瀬は、自らの日常を省みて、いかに生きるべきかなどを考えてみるのにふさわしいのではないだろうか。深山にこもって沈思黙考するよりも、喧騒の中で省みる意義は一層深く大きい。
警察官という仕事には喧騒の中での思考がふさわしいように思う。
喧騒の年の瀬の中で、いっとき沈思黙考する時間を持ってみてはどうだろうか。
現在、どう見ても治安の基盤の揺らぎの大きな時代に入った。その帰結として、社会の警察への期待がますます高まることは必至。その認識が警察官の皆さんに求められるのだ。
現在進行形で、世界のそして我が国の治安の根底は大きく揺れている。特に、我が国が時代の変わり目にあることは誰の目にも明らかだ。いたるところで聞かれる「少子高齢化」、高齢者があふれ、やがて人口減少が顕著になる。毎年小さな県が消えるような時代が迫っている。人口減少が社会全体に様々な歪みを生じさせることは避けられない。合わせて「情報技術の変化のスピードの激しさ」は、社会の様々な分野にまで大きな影響を及ぼす。一層、ひずみや不安に満ちた社会になる。多くの人が抱く不安感自体が、治安の基盤の弱体化に直結する。
ここは腹を決めて、足元の治安の課題にしっかりと向かい合わなければならない。特殊詐欺、SNS を使用したいじめ、自殺関連殺人事件などの新たな犯罪の増加も、根は時代の変化の中での治安の基盤に関わる重大な問題だ。
一方、余りの変化の激しさに警察官の側の対応力にも様々な問題が生じている。先人の切り開いてきた後を担う若い後輩への期待は大きい。警察官の仕事の基本は何も変わらない。使命感と奉仕の精神。毅然(きぜん)として悪に立ち向かう意思と能力の涵(かん)養が基本。
年の瀬、皆さん個々人の目指すものをしっかりと確認してもらいたい。喧騒の中にあって、深山にもます深い思考をすべきだ。忙しいときこそ自らのやるべきことへの反省が大切になる。警察大学校の校訓に「自律自修」という言葉がある。喧騒の中にあっても自らを律し自らを修める努力の大切さを教えている。
忙しい年の瀬の皆さんの頑張りにエールを贈りたい。
どうぞ、良い年の瀬をお過ごしください。