巻頭言

2019.01.01
巻頭言

2019/1/1 ベスト1月号 巻頭言を掲載しました

総員で取り組む後継者育成
~よくぞ警察官になった~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

「優秀な後継者の採用育成のためにあなたがなすべきこと」……今年の管理論文で出題確率の高い課題といえよう。

今回は本問題への答案作成を前提に考察を進めてみたい。

優秀な後継者の獲得・育成が現下の警察にとっての喫緊の大きな課題となっている。少子化の中、我が国の若者の絶対数が減少している背景、加えて、せっかく採用されても早期に退職する人が増加傾向にあることも問題の深刻さを見せている。

実は、後継者難は何も警察だけの問題ではなく、我が国では、ありとあらゆる職場で最大の問題となっている。それだけに、各職業間で少ない若者を奪い合っている状態。挙句の果てに、引っ張りだこの若者の職業選択に対する真剣さの低下、安易さもないとは言えない。ミスマッチから早期退職増も目立っている。大卒から3年で3割が転職しているという。私の実感としても、教え子たる卒業生がよく転職している。そうした状況の中での警察官採用なのだ。問題の深刻さの所以(ゆえん)だ。

警察官採用では、年々、募集活動に様々な工夫を凝らしているのも誰しも承知のこと。募集PR(広報)活動はもとより、警察施設の見学や訪問イベント、警察学校などへの体験入学やインターンなども更に一層創意工夫すべきだろう。とにかくやれることは何でもやるべきだ。出身学校へのOB 訪問は実績があるので一層積極的に実施すべきだ。先輩という親近感から本音での話が始めやすい。

また、現職の警察官がそれぞれに警察官という職業に誇りを持っていることが最大の前提である。現職警察官自身の気持ちの中にこそ最大の問題が潜んではいないだろうか?現職の警察官が誇りを持って仕事に励んでいるか。警察官という、やりがいある仕事によくぞなったものだ……と、心の底から思っているだろうか。家族、友人にその誇りを伝えているだろうか。一人ひとりの警察官が心の底から警察官の仕事に惚れ込み、誇りを持っている、その結果としての警察官のきらきらと輝いた姿を見せてほしい。警察官各人が家庭で誇りを持って家族に接していれば、子どもはもちろん親戚の子弟へ警察の最高のPRとなることは間違いない。

さらに、警察という職場に改善すべき課題も少なくないだろう。警察の職場をよりよくするための努力が求められる。効率の良い、風通しの良い職場にするための改善に十分ということはあり得ない。各種見直しによって、効率の良い執行務にしなくてはならない。各種人間関係の改善などをはじめ風通しの良い職場環境を実現する努力を続けなければならない。職場ぐるみ、総員参加の改善改革機運を大切にしなければならない。

警務や警察学校など採用部門だけの問題だという意識が、自らに壁を作っていないか?総員参加の下の改善改革運動が求められているという認識。そして、あなたが何をどうしようとしているのか?という真摯な回答が求められている。

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