巻頭言

2021.01.01
巻頭言

ベスト1月号 巻頭言を掲載しました

決意を新たに臨もう
~地域紛争の増加が懸念される国際環境~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 新年あけましておめでとうございます。
 皆さん、ご家族とおそろいで新たな年を迎えられたことと思います。
 心からお祝い申し上げます。

 年頭に当たって、新たな年は例年にも増して、厳しい覚悟をしなければならないという内容になります。我が国にとっても、また治安を担当する警察にとっても、一層厳しい気配の濃厚な年になるであろうということです。面接など今年の昇任試験ではこうした厳しさへ認識・決意が欠かせないことになります。

 分断を背負い深く傷付いたアメリカで、バイデン大統領が誕生します(1月20日)。独善的な前任大統領とは異なり、何が起きるか予想できないという国際環境の不安定さは、幾分、緩和されると思われますが、だからと言って決して我が国にとって安泰とは言えません。
 アメリカの信頼性は深く傷つき、国際社会はリーダーなき漂流を続けることを覚悟しなくてはなりません。特に、我が国は自主的な歩みへの覚悟が問われるでしょう。なぜなら、米中対立が一層深刻になると予想されるからです。
 新政権では、中国の根本的な問題点である少数民族問題や人権問題、さらには南シナ海・東シナ海などでの権益拡張攻勢への批判がより深刻となり、中国にとっては体制の根本が批判されるわけで、引くに引けないという事態になるでしょう。我が国も、自由・民主主義体制や基本的人権の尊重、また法治といった根本的価値観を争点として、身を引いてやり過ごすことが難しくなり、米中対立に当事者色を強めていくことになりそうです。
 米中対立の高まりで、国際的な様々な紛争の多発・激化も避けられなくなり、特に我が国周辺・極東地域は、米中のつばぜり合いの最前線となることが予想されます。こうした国際環境の中で一層難しいかじ取りが求められ、当然のことながら、治安環境は多事多難な様相を覚悟しなければなりません。
 警視庁外事警察の新たな編成において、中国、北朝鮮を担当する課をそれぞれ別にすることになった背景には、こうした事情があります。担当を専門化することで情報収集能力と捜査能力を高め、周辺アジア地域での混乱への備えるという観点から新たに編成するのです。また、国際紛争はテロの増加と直結します。警視庁が、国際テロ担当として外事4課を独立させているのも同様で、情報収集能力と捜査能力を高め、国際情勢に対応するためです。

 そして、言うまでもなく、新型コロナの第二、第三波への備え・対応も新年の大きな課題です。警察でのクラスター発生は、絶対に避けなければなりません。全警察職員の一致したプロとしての取組への覚悟が欠かせません。
 これらの前提の下、今年は大型任務が目白押しです。異例の環境下で、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を見事にやり抜かなければなりません。時期は未定ですが、総選挙も必至。都議会はじめ各種選挙もあります。これらを全て粛々とこなしていくことが期待されます。

 加えて、警察業務のデジタル化も急務です。デジタル化での根本課題は、職員一人ひとりの意識改革、人材の育成です。外部の専門家・研究者などの英知を、積極的に取り込んでいく意識も欠かせません。特に交通安全や生活安全分野でのデジタル化は、警察活動を新たなステージへと転換する予感がします。

 最後になりましたが、皆さんにとって、今年目指すところの目標が見事成就することを祈念しています。本誌スタッフ一同、最良の同伴者たるべく、決意を新たに全力投入で応援します。よろしくお願いいたします。

巻頭言一覧ページに戻る