巻頭言

2021.10.01
巻頭言

ベスト10月号 巻頭言を掲載しました

結局、勉強の習慣化が決め手
~合格への秘策も近道もない~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 時の流れは早い。個人的な話だが、大学新卒で警察大学校の校門をくぐってから、既に50年以上の年月が経過した。振り返れば、警察との縁の深さに驚いている。約30年の現役時代はもちろん、OBとして、再就職先であった大学における警察官志望の学生の教育(約20年)、警察大学校教官教養部における警察学校教員養成授業(兼務として約10年)、それにここ日本公法での執筆など(約15年)と、立場を変えつつ、ずっと警察との縁につながって過ごしてきた。その過程で、実に多くの警察官との縁を持てたことに感謝している。

 今回は、長年の警察官との縁を通じて得られた、「順調に昇任する人とできない人の違い」という切り口での執筆を依頼された。昇任を目指して、日夜頑張っている皆さんの、お役に立てるかどうか、いささか心もとないが、何らかの参考になればと念じつつ、率直に感じるところを披露してみたい。

 運の良し悪しといったものの存在もないとは言えないが、ただ黙って待っていればいいというものでもない。運を含め、日々の頑張りなど、それぞれの持っているものの結果が影響していることは間違いない。
 結論は、極めて単純。努力した人が合格しているということだ。特別なことはなく、「ちりも積もれば山となる」「点滴、岩をも穿つ」「万里の道も一歩から」など、小さな努力の積み重ねの大切さを教える教訓のとおりなのである。何の変哲もない教えではあるが……それが人間の営みの真実ということ。

 それでは、誰でもコツコツ努力できるかと言えば、「言うは易く行うは難し」。多くの人にとっては、それが難事中の難事である。ここで終えては、アドバイスにはならない。どうすればコツコツと努力を積み重ねることができるのか。何らかの要領と言ったものがないのだろうか。
 私にできるアドバイスは、結論から言えば、習慣化である。私達は、毎日、さして考えもせずに日常のルーティーンをこなしている。朝起きてから出勤するまで毎日毎日、それこそ秒単位で同じことを繰り返しているのではないだろうか。それが日常であり、さして苦痛を覚えるものではないのではないか。いちいち考えて行動するというのでは疲れてしまう。ルーティーンということはそういうものだ。となれば、勉強を習慣化できた人が先に行くということだ。
 結局、私達が考えるべきことは、どうしたら習慣化することができるのかということに尽きる。一歩の積み重ねの習慣化。それは結局、各自の自分との付き合い方となる。自分という人間の観察から始めることだ。考える時間の習慣化をするという手もあろう。例えば,寝る前に10分でも机に座るということでいい。明日のやるべきことの確認だけでもいい。
 うまい具合に何らかのきっかけがあって、勉強を始められた人は継続するべく自分をコントロールしていくことだ。その初期段階が勝負。初めは、意識してやる必要もあろう。自分に相応しいあらゆる手を使うことだ。とにかく習慣化することができた人が先を行くことになるということ。ライバルや尊敬する先輩の存在。上司の励まし。愛する人の笑顔。あるいは先を越された口惜しさ。動機は色々あるだろう。それこそ何だっていい。とにかく勉強の習慣化に成功した人が強い。

 いきなり勉強というのは難しい人には、体を動かす習慣から入るのを勧めたい。一駅歩くのも、習慣化すればしめたもの。身体が爽快なら勉強に取り組むことへのハードルも下がる。コロナ渦の新常態生活を、新たなルーティーンを始めるきっかけにするのも良いのではないだろうか。

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