巻頭言

2022.04.01
巻頭言

ベスト4月号 巻頭言を掲載しました

信頼を得ての警察活動
~警務出題の基本対応~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 福岡での現職警察官逮捕の衝撃は大きかった(事件発生、平成29年6月6日)。現職警察官が妻や子どもを殺害した。異常な個人による事件ではあるが、国民の警察官への信頼が大きく揺らいだことは間違いない。警察官も人間であり、殺人を犯すような者がいること自体は避けられないことかもしれない。特異な個別の事件を大げさに扱わないほうがいいのかもしれない。しかし、その後も、警察官による痴漢事件や盗撮事件など、後を絶たぬ警察官による犯罪に、世間の見る目は厳しい。

 今後も昇任試験では不祥事防止対策、信頼回復方法などが出題されることは必至だろう。どこがポイントになるのか?不祥事対策に関しては、毎年のように出題されており、回答を書く方も慣れたもので型にはまった回答をしがちである。
 実は、そこに落とし穴がある。
 幹部は深刻な問題として受け止めているのに、多くの警察官はルーティーン的に受け止めていることへ、採点者の中には、いら立ちに似た感情がある。
 軽く書いているだけじゃないかと……。
 国民の信頼を得ることの難しさ。信頼を崩壊させることの容易さ。全員で築かなければならないのに、壊すとなったら、1人の不届き者で十分ということ。そして、何よりも、これをやったら万全だという対策がないことへの苦悩。こうした、幹部の抱いている感情・思考を共有し、だからどうするのかという決意表明を期待しているのだ。型にはまった薄っぺらの解答での高得点は無理。むしろ率直な思いが伝わるものである方がよい。事件報道(不祥事)に接した際の口惜しさ。不祥事防止対策の難しさを書くべきだ。
 部下、同僚とのもう一歩踏み込んだ関係の構築への決意。ちゃんと向かい合って会話する大切さ。勤務で接する市民とのより深い思いやり。こんにちは、ありがとうございました、気を付けて……などの声掛けの励行。
 本当に、真剣に考えているな……と、思わせる回答であるべきだ。模範解答ではない、個人の決意が伝わるものでありたい。

 職場での風通しの良さは必須。幹部は、一人ひとりに向かい合うことが基本だ。顔色、髪や服装の乱れ、仕事での悩み……部下のあらゆる側面を観察することが期待される。そして何よりも語り掛けることだ。話せは通じるものがある。
 不祥事防止対策は、つまるところ、一人ひとりが警察への熱い思いを持つことだ。まず、自分の言葉で不祥事防止対策に関する回答を書いてみることをお勧めする。

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