巻頭言

2024.01.01
巻頭言

ベスト2024年1月号 巻頭言を掲載しました

大きな転換期を迎えた
~安全安心の担い手・警察官への期待~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 新年あけましておめでとうございます。
 皆さん、ご家族おそろいで新たな一年を迎えられたことと思います。心からお祝い申し上げます。

 いよいよ2024年が始動しました。我が国にとっても、また治安を担当する警察にとっても今年も極めて厳しい年となるように思います。

 その最大の原因は、ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、パレスチナ問題をめぐってイスラエルとアラブ諸国の緊張も高まるなど、国際秩序のぜい弱性が様々な面で顕在化しています。アメリカは相対的国力を減退させ、もはや世界を取り仕切ることは無理です。

 中国はアメリカへの挑戦心を隠そうともせず、様々な局面で米中の覇権争いが激化必至です。我が国は中国と隣国で、歴史的にも切っても切れないつながりがあり、他方アメリカとは、同盟関係を結んでいるため、我が国が中国に立ち向かう最前線であることは、地政学的に免れることができません。台湾有事は日本有事などといわれるように、由々しき危うさを伴う状況です。我が国を取り巻く国際情勢の国内治安への影響は極めて深刻なものとの覚悟が欠かせません。中国は、既に人口減少に転じ、昨年インドに人口世界一の座を奪われました。低成長時代に入り、先行きへの悲観論も潜在しています。「悲願である、偉大な中華復興(台湾統一)をかなえるのは今のうちだ」という焦りが高まりかねないという危険性があることを考えておかなければならないのです。

 それに加えて、北朝鮮は核やミサイルを中心とした軍事力に偏っての体制維持に躍起となっています。ロシアとの軍事関係の連携も進み、最も近い地理的位置にあることから、我が国はその深刻な影響から免れることはできません。

 こうした内外の緊迫した環境は、我が国の治安基盤を揺るがし、警察の対処がますます重要になってきます。警察としては、広い視野に立ったグローバルな視点が求められることになることが必至。いよいよ、こうした警察を取り巻く情勢変化や、もたらされる事態に係る対応への認識・決意が欠かせません。

 また、今年は、注目すべき選挙が目白押し。1月の台湾総統選、3月のロシア大統領選、11月のアメリカ大統領選。我が国では9月に自民党総裁選もあります。

 今年の昇任試験では、そうした状況の理解や自己変革への具体的な決意が求められるということです。

 さらには、情報技術の革新・普及の結果、ネット犯罪への対応が益々重みを帯びることも必至です。言い換えれば、犯罪にとって国境はますます意味を持たなくなるのです。しかしながら、治安機関における国際協力には様々な障害が根強く存在しています。

 新たな年に臨む我が国の治安活動は、こうした国際環境の中で難しいかじ取りが求められることになります。環境問題やAI化の流れも急速です。若者人口の減少する中、人材確保対策もますます重要になります。

 南海トラフ巨大地震、首都直下型地震や富士山噴火など様々な災害リスクも必ずやってくるとの認識の下、備えを怠ることはできません。危機にあって、国民の警察への期待を誇りとしての万全の備えが欠かせません。

 最後に、皆さんにとって、目指すべき目標が見事成就することを祈念しています。本誌スタッフ一同、最良の同伴者たるべく決意を新たに全力投球で応援したいと思います。

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