巻頭言

2025.06.01
巻頭言

ベスト2025年6月号 巻頭言を掲載しました

採用試験も昇任試験も警察官は面接で決まる
~面接試験の重要性~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 今年度から警視庁だけでなく、多くの道府県でも採用試験制度の大改正が行われている。未曾有の人手不足の中、文字どおり、背に腹はかえられぬという状況を目の当たりにしている。

 警察官採用試験の目的は、警察官としての資質の有無を見ることに尽きる。売り手市場の公務員採用試験において、とにかく1人でも多く採用したいのが本音ではあるものの、絶対的に警察官に向いていない人、これを見抜いて排除しなければならない。

 では、面接では、何を見ているのか?
 第一に、警察官として不適当な人かどうか見ている。
 採用後、警察学校において、警察官としての教育をするということは、大変な労力とお金がかかる。警察学校に入れてから、警察官としては務まらないとなったら、それこそ大変な浪費になってしまう。それは何としても阻止しなくてはならない。面接では、その適性が明確にない者を見極めるのだ。
 警察官になりたいという意志が固いかどうか。意志が固ければ、警察学校でのハードな訓練にも頑張れるから、その見極めは重要である。これは、ペーパーテストの文字面では分からない。直接会って対話することで見極めなければならない。
 第二に、誠実さを見ている。それには、直接顔を見ることが一番だ。話す声、態度姿勢、特に目の動きを見たい。仲間にしたいかしたくないか、という感覚がポイントといっていい。警察官の仕事は、仲間で協力して当たることが多く、そこではそれぞれの人間性が重要となるからだ。

 実は、このことは昇任試験にも通じる。
 昇任試験では、幹部昇任者を選ぶ。好ましくない人を幹部に昇任させることが及ぼす組織全体への影響は大きく、採用試験どころの比ではない。昇任試験の持つ意義を考えれば、面接の重大さが分かるだろう。

 更に言うと、日頃の勤務で勝負は決まっているといっても過言ではない。多くの上司・同僚の見方で選別はできているようなもので、昇任試験はその確認にすぎない。面接は、上司による最後の念押し、確認という位置付けなのだ。案外はっきりしている。
 面接の段階では、意外とマイナスのないことが大切で、会話の受け答えが明瞭で、明るい雰囲気であれば合格だったりする。暗い印象はバツだ。鏡に向かって服装をチェックすることから始まって、笑顔も心掛けよう。そして何よりも、昇任してどういう幹部になりたいか、という決意・想いを伝えることが勝負になる。

 現在の人手不足の状況を打破するため、どうすれば良いか。幹部ともなればその視点も重要なポイントになってくる。将来の夢に燃えていた、採用試験での面接を思い出してみるのも良いだろう。そう、今も夢に燃えている姿を見せて欲しいのだ。

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