ベスト2025年9月号 巻頭言を掲載しました
大谷翔平選手に学ぶ
~目標を高く掲げよう~
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株式会社日本公法 代表取締役社長 麗澤大学名誉教授 元中国管区警察局長 元警察庁教養課長 元警察大学校教官教養部専門講師 大貫 啓行 |
「今日の大谷ショー」と言ったテレビアナウンサーの声にもすっかり慣れた感がある日常だ。二刀流大谷選手の活躍に多くの人が魅了されている。その魅力はどこにあるのか。そこから私たちが学ぶところがあるのではないか。本稿では一ファンの視点で考えてみたい。
こんなにも素敵な彼を育てたのは、何といっても父母の存在が大きいようだ。特に彼が語っているように、少年野球の監督として、小学生の彼に叩き込んだ3つの教えが素晴らしい。
① 大きな声で元気よくプレーする。
② キャッチボールを一生懸命する。
③ 力を抜かず、最後まで、一生懸命走る。
MVP(最優秀選手)としての坤為地のプレーは、まさに、この3つの教えの実践だといっていい。
彼は、小学校3年生になる前の春休みから少年野球チームに参加した。父親は、そのチームの監督だった。彼は、仲間の何倍も、何十倍も練習した。父親が監督をしているチームでレギュラーになるには、誰しも納得する技量でなくてはならないと思っていた。彼はそういう覚悟で自分を鼓舞した。一切の甘えを排した自らに対する厳しい姿勢は、何とも素晴らしいではないか。
高校生となると、将来の目標を問われた際に、「ドラフトでの8球団から一位指名」と答えた。これは野茂英雄らと並ぶ、スターとなるとの意味だった。しかも彼はきっぱりと公言したのだった。高校生としては、甲子園出場などを目標として応えるのが相場の中で、彼の目線の高さが際立った。
未来を大きく描ける心の持ち方を「自己効力感」という。大きな未来の夢を描けるほど進歩できるというが、まさに彼はその実例と言えよう。実現したい自分の未来への想いを大きく膨らませて公言することで、自分を鼓舞する。彼はそうして、目標を達成する能力を身につけたのだろう。
毎日の気付きを日記に書いて、反省の材料としていた。これなどは、天才でなくても応用できるのではないか。日々反省し、それを記すことで、ちりも積もって大きな栄養分となる。それぞれのやり方で参考にしていいと思われる。「自慢は恥」という祖父の教えも坤為地の彼の骨肉となっている。
アメリカに渡る際の球団選びも独特のものがあった。契約金より夢を大事にした。
二刀流という挑戦を優先したのである。結果が、その選択の正しさを証明している。鍛錬や練習でも、目標としているのは「現在」ではないという。5年後10年後を見つめてトレーニングするのだそうだ。思い描く目標の遠大さに驚かされる。
なりたい自分の姿を思い描くことの意義も、誰しも拝借できるのではないか。夢のある人は頑張れる。皆さんの夢は何だろうか。
また、彼の謙虚な姿、マナーの良さに、多くの人が心を揺さぶられている。子供に腰を低くして笑顔で接する。グラウンドでごみを拾いポケットに入れる自然な何気ない姿。日本人の好感度を高める最高の貢献だ。生活は野球一筋、文字どおり全力投球しているようだ。遠征先では球場とホテルの往復だけ。そこまで律してプロとして打ち込む姿に、驚きさえ覚える。警察官の誰しもが彼のようにするというのは不可能だろう。しかし、我々の職業も、彼の姿に学ぶべきことは少なくないのではないか。