巻頭言

2025.12.01
巻頭言

ベスト2025年12月号 巻頭言を掲載しました

2025年治安の回顧
~警察業務に与える影響や課題を考えるという視点~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 警察官として、どういう視点をもって、時事を受けとめているのか?

 幹部を目指す皆さんに求められるのはそういう姿勢の有無。それに応える準備が肝要だ。時事も、視点をちょっと変えると、いずれも警察運営にとって重要な課題の山に転ずる。

 2025年、皆さんは何に注目しただろうか?
 関西万博が話題の中心になることは免れない。兎にも角にも、大きな問題なく成功裏に終了したことは、警備に当たった多くの警察関係者の努力の結果だ。関係者に敬意を表したい。
 この規模のイベントは常に雑踏警備、交通機関の問題など不測の事態での非常対応が生ずる。多くの反省事項を踏まえた教訓を、いつでも言えるようにしておく準備が欠かせない。無難なところでは、関係機関との情報共有、報告連絡の重要性など、基本を強調すべきだ。

 近年、犯罪の変化が激しい。一言でいえば、多くがインターネットを介したものになった。こうした状況の変化にどう対応するか、ということが重要な課題である。ポイントは自分の仕事に引き寄せて考えている、というアピールをできるように準備しておくことだ。
 具体例を挙げれば、闇バイト、オンラインカジノなど犯罪の様相が変化していることについて、どう対応するのかという視点が求められる。
 また、犯罪の国際化がいよいよ本格的になったという認識も、もはや基本としなくてはならない。語学だけでなく、外国、外国人の絡んだ視点で考えることが欠かせない。
 ミャンマーやカンボジアとの国境に絡んだタイ国の情勢が、我が国の治安問題に直結しているという実感。そこに、我が国の闇バイトを介した絡み。多くの国際捜査の事例が目立った。

 地球温暖化と絡んだ様々な事象や問題も、警察の活動に密着している。
 線状降水帯関連の水害などの多発、これまでとは規模の違う災害が内外各地で注目された。気温が1度上がると、降水量が7パーセント増えるという。これからも自然災害は増えるように思われる。
 都市部の集中豪雨による下水管の派手な吹き上げや、マンホールの蓋が飛ぶといった事故も印象に残る。また、山火事や熊の出没も関連しているとみられる。大船渡の山火事など、災害の規模拡大・多発化も注目された。

 国際情勢でいえば、ウクライナ戦争やガザ関連の中東情勢からくる治安への影響も必至である。国際情勢の緊迫化により、テロ・ゲリラへの警戒が欠かせない。

 25年も残り少ない。歳末警戒もたけなわ、皆さんはまだまだお忙しい日々が続くと思われる。そうした中でも、一時、今年の治安を回顧することが肝要だ。

 そして何よりも、皆さんのお家族お揃いで、穏やかな年越しができるよう祈念いたします。

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