巻頭言

2024.05.01
巻頭言

ベスト2024年5月号 巻頭言を掲載しました

昇任することの意味
~階級ごとの評価ポイントの違いを理解しよう~

株式会社日本公法 代表取締役社長
麗澤大学名誉教授
元中国管区警察局長
元警察庁教養課長
元警察大学校教官教養部専門講師
大貫 啓行

 現在、警察幹部に求められる重要な任務は何だろうか?と考えると、まず頭に浮かぶのは、採用試験の応募者を増やすことだ。その本質は、警察官としての魅力をいかに伝えることができるかということに他ならない。

 全警察が現在抱える最大の課題。この認識をしっかり持つことが最も重要だ。昇任試験でも当然のことながらこの認識がポイントとなる。今更、言うまでもないが、大学・高校新卒業生の奪い合いが熾烈を極めている。今後ますます激しさを増すことも必至だ。あらゆる部門で労働力不足が問題となっている。警察の将来も安閑としてはいられない。その危機感が欠かせない。幹部昇任試験で応募者をどうしたら増やせるのかという出題も確実に増す。

 抽象論でない具体策が求められる。昇任試験だけが審査の場ではない。むしろ日頃の評価が勝負なのだ。その中で、応募者を増やすという観点からの具体的な提案をすることは、必然的に最も効果的に評価を上げることになる。

 警察官が、警察官としての仕事に高いやりがいを感じている。そうした発信ができること。要するに職場の勤務に関する各種改善がその基礎になるという視点が重要だ。応募者を増やすということを狭く捉えて、テクニックに走ってはならない。仕事の改善の結果として、今いる職場をよりよい職場とすること。そのような捉え方が重要だ。現職の警察官が、周囲にやりがいのある職業として、警察官の仕事を発信する。このことを心掛けるべきだ。

 市民との接し方での改善運動もしてほしい。言葉遣い、態度はもちろん、市民のニーズ・要望に応える仕事を増やすべきだ。市民と共に安全安心を図るという視点が重要。市民と警察はパートナーというスタンスを大切にしたい。

 人間の関係が希薄になっていることにも配意したい。コミュニティが弱くなることは治安の悪化につながるからだ。地域ごとの特性に応じた施策があるだろう。マンション住民の多い地域ではそれにふさわしいアイデアが肝要。過疎地には過疎地の問題がある。地域とともに警察活動はあるという基本認識が肝要。市民と最も接する場は交番と警察署の受付。そこの一層の改革改善を期待したい。インターネット空間などでの警察の担う分野も日々変わるだろう。若い世代の視点からの提案が待たれる。

 採用試験の応募者を増やすためには思い切ったアイデアが必要だ。例えば、高校生・大学生の親を対象としたPR活動ももっとやるべきだ。警察がやりにくければ、協力してくれるところを積極的に作ればいい。警察学校の見学会のやり方でも工夫余地が大きい。OBなどももっと協力できるだろう。何よりも警察もののメディア発信もまだまだ工夫余地があろう。

 要するに、みんなで必死に考えて後継者を確保したいという情熱をたぎらせることが求められる。そうした情熱があるところを見せることが重要ということだ。繰り返しになるが、昇任試験では、「折に触れて、具体的な提案を情熱をもって提案するスタンス」が求められるということを腹に納めてかかってほしい。

巻頭言一覧ページに戻る